免疫力がアップする食事術vol.63

免疫力を上げるためには、バランスの取れた食事、適度な運動、質の良い睡眠、ストレスの軽減、腸内環境を整えることが必要です。そうわかっていても、実際はまず何から始めたらいいのかと迷ってしまう方も多いのではないでしょうか?実は、免疫細胞の約7割が腸に存在しており、毎日の食事が腸内環境に大きな影響を与えます。腸は「第2の脳」とも呼ばれるほど重要な役割を担っているため、腸内細菌のバランスを整えることが免疫力アップにつながります。今回は、腸内環境を整えて免疫力がアップする方法をご紹介します。
目次
腸内細菌と免疫力の深い関係
腸内には、約1,000種類、約100兆個もの細菌がいると言われています。これらの腸内細菌は善玉菌と悪玉菌と日和見菌という3つのグループに分類されます。善玉菌とは、ビフィズス菌や乳酸菌などが代表で、免疫力を高めたり、有害物質の産生を抑えたりと身体に良い働きをする細菌です。悪玉菌は病原性大腸菌やウェルシュ菌など身体に有害な物質を作り出す細菌で、増えすぎると免疫力が低下します。日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のどちらにも属さない中間的な細菌で、体調によってどちらの働きも示します。この腸内細菌のバランスが免疫力に影響を与えます。
善玉菌は食物繊維を分解する際に「短鎖脂肪酸」という物質を作り出します。この短鎖脂肪酸は腸のバリア機能を強化し、病原菌の侵入を防ぐと同時に、体内の炎症を抑制する重要な働きをします。さらに、善玉菌は免疫細胞を刺激して感染症に対する抵抗力を高めます。腸の壁に存在する「パイエル板」という免疫組織が、腸内細菌からの情報を基に全身の免疫システムを調整しています。一方で、悪玉菌はタンパク質や脂質を分解する過程でアンモニアなどの有害物質を産生します。これらの毒素は腸の壁を直接傷つけて、腸のバリア機能を低下させる要因となり、バリア機能が弱まると、有害物質や未消化の食べ物が血液中に漏れ出す「リーキーガット症候群」を引き起こす要因となります。悪玉菌の増殖は腸内の慢性的な炎症を引き起こし、免疫システムを常に刺激し続けることで免疫細胞を疲弊させてしまいます。その結果、身体の外に出るはずのウイルスや細菌に対する免疫が低下し、感染症にかかりやすく、アレルギー反応が起こりやすくなります。さらに、慢性炎症は全身に広がり、生活習慣病や癌などの様々な疾患のリスクを高める要因にも繋がります。
腸内環境のバランスは、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割の比率が理想と言われており、腸内環境を整えることは、消化機能の改善だけでなく、全身の免疫力アップにつながります。善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑えることで、健康な腸内環境を維持することができます。
免疫力を低下させてしまう食事習慣とは?

以下の食事習慣に心当たりがある方は、腸内細菌バランスが乱れ、免疫力が低下している可能性があります。
①高脂質食品の過剰摂取
正常な腸内環境は弱酸性に保たれ、善玉菌が多く繁殖しやすい環境とされていますが、天ぷらや唐揚げ、フライドポテトなどの揚げ物、脂身の多い肉類、インスタント食品や冷凍食品などの加工食品、そして市販のお菓子類を過剰に摂取すると、腸内環境がアルカリ性に傾き、悪玉菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。厚生労働省では、総カロリーに占める脂質の割合を20~25%に抑えることを推奨しており、この基準を超えないよう意識することが腸内環境の改善につながります。例えば、ご飯、味噌汁、サラダ、唐揚げ3個、冷奴の定食だと総カロリー710kcal、タンパク質33.3g(p=18%)、脂質32.9g(f=41%)、炭水化物76g(c=42%) と脂質の割合が多くなってしまいます。ここから、唐揚げを蒸し鶏に変更すると脂質21g(f=14%)となります。総カロリー600kcalとなります。調理法を変えるだけでも脂質量を抑えることができます。
②高タンパク質食品に偏った食事
近年、ダイエットや健康志向の高まりにより、極端な糖質制限でタンパク質をたくさん摂取する人が増えています。また、プロテインの過剰摂取や肉類中心の食生活をする方も見られますが、タンパク質を摂りすぎると腸内で分解される際に有害物質が生成され、腸内環境のバランスを崩す原因となる可能性があります。適切なタンパク質摂取量は総カロリーの13〜20%程度とされており、バランスの良い食事を心がけることが重要です。健康のためと考えて行っている食習慣が、かえって腸内環境を悪化させている場合があるため注意が必要です。脂質量で例えにした唐揚げ定食をささみの定食に変更し、炭水化物を減らしてタンパク質量を増やした場合、総カロリー373kcal、タンパク質61.9g(p=65%)、脂質9.3g(f=22%)、炭水化物15.5g(c=16%) と極端にタンパク質の量が多くなってしまいます。このメニューにご飯とフルーツを加えた場合、総カロリー571kcal、タンパク質35g(p=24%)、脂質9.2g(f=14%)、炭水化物86.1g(c=60%) とバランスの取れたメニューとなります。
③食物繊維不足の食生活
現代の食生活は、野菜や果物の摂取量が少なく、コンビニ弁当やインスタント食品などの加工食品に依存しやすいと言われており、善玉菌のエサとなる食物繊維が慢性的な不足に陥ってしまっています。厚生労働省の調査によると、日本人の食物繊維摂取量は全年代で目標値を大きく下回っており、 特に20〜40代では、1日の推奨摂取量20g以上に対し、実際の摂取量は15g程度にとどまっているのが現状です。食物繊維が不足すると、善玉菌が栄養不足で減少して、悪玉菌が優位になってしまい、腸内環境が悪化して、免疫力の低下や健康にも悪影響を及ぼす原因に繋がります。これを防ぐためには、毎日の食事に野菜や果物、玄米やオートミールなどの全粒穀物を意識的に取り入れることが重要です。
免疫力をアップする5つの食事術

これまで免疫力を低下させてしまう食事習慣について見てきましたが、具体的にどのような食事を心がければ免疫力をアップできるのでしょうか。ここでは、腸内環境を改善し免疫力を高める5つのポイントをご紹介します。
①PFCバランスを整える
PFCとは、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の三大栄養素の頭文字を取った略称です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、理想的な栄養バランスは、タンパク質が総エネルギーの13〜20%、脂質が20〜25%、炭水化物が50〜65%とされています。このバランスを意識することで、腸内細菌の多様性が保たれ、免疫システムが正常に機能するようになります。まずは食事記録アプリなどのツールを活用して、1週間程度自分の食事バランスを把握することから始めましょう。
②水溶性食物繊維を積極的に摂取する
善玉菌の栄養源となる水溶性食物繊維を毎日の食事に取り入れることも重要です。
<水溶性食物繊維を含む主な食品>
・穀物類:大麦、もち麦、オートミールなど
・野菜類:玉ねぎ、大根、ごぼう、にんじん、オクラなど
・果物類:キウイフルーツ、りんご、バナナなど
・豆類:納豆、大豆、インゲン豆など
・海藻類:わかめ、昆布、めかぶなど
これらの食品を組み合わせて積極的に摂取することで、善玉菌が活発になる環境を整えることができます。
③発酵食品を毎日取り入れる
発酵食品は、乳酸菌やビフィズス菌が豊富に含まれております。腸内の善玉菌の働きを直接補うことができます。
<主な発酵食品>
・乳製品系:ヨーグルト、チーズ、ケフィアなど
・植物性発酵食品:納豆、キムチ、漬物など
・発酵飲料:甘酒、コンブチャなど
毎日の食事に1つを取り入れることで、継続的に善玉菌を補給することができます。ただし、キムチや漬物は塩分の取り過ぎにならないように、1日小皿1杯分(50g)を目安にしましょう。
④プレバイオティクス食品の活用
プレバイオティクスとは善玉菌の栄養源となり善玉菌を増やす働きを持つ成分を指します。プロバイオティクスが含まれる代表的な成分は、オリゴ糖と食物繊維です。
<プロバイオティクスが含まれる成分と食品>
・玉ねぎ、にんにく、バナナ、はちみつなど(オリゴ糖)
・ごぼう、菊芋、チコリなど(イヌリン:水溶性食物繊維)
・冷ましたご飯、緑バナナなど(レジスタントスターチ:難消化性でんぷん)
これらを取り入れることで、腸内の善玉菌がより活発に働くようになります。
⑤アルコールの摂取は適正量にする
アルコールの適正な量は純アルコール量20gとされています。1日あたりの純アルコール摂取量が40g以上になると、生活習慣病のリスクが高まります。また、女性は男性よりもアルコールの分解能力が遅い傾向があるため、男性の半分もしくは3分の2程度の量である10〜13g程度を目安にしましょう。適度なアルコール摂取は消化を促進する効果がありますが、過剰摂取は腸内細菌バランスを大きく乱してしまいます。2~3日飲酒したら1日肝臓を休ませるなど、週に2回の休肝日をとるようにしましょう。
<20gの純アルコール摂取量の目安>
・日本酒:180ml(度数15%)
・ビール:500ml(度数5%)
・焼酎:110ml(度数25%)
・ワイン:180ml(度数14%)
・ウイスキー:60ml(度数43%)
・缶チューハイ:500ml・350ml(度数5%・7%)
「アルコール度数」は「お酒の強さ」を表し、「純アルコール量」は飲酒することで体内にどれくらいのアルコールが入ったかを表します。総アルコール量を把握し、飲み過ぎを防ぎましょう。
継続のための3つのコツ

まとめ
腸内環境と免疫力には密接な関係があり、食事の選択が健康に影響を与えます。体調を崩しやすい、便秘や軟便など消化器系の調子が悪いといった自覚症状がある方は、現状の食生活をきちんとを見直すことがとても重要です。腸内環境の改善には一定の期間が必要とされていますが、完璧を求めず、小さな変化から始めて継続することが重要です。今日からできることを一つずつ実践し、腸内環境が改善と、免疫力アップを目指しましょう。
あわせて読みたい
今日から取り入れたくなるような、暮らしを素敵に彩るアイデアをご紹介。いつもの毎日にちょっとしたワクワクを。








