「こんなとき、どうする?」~知って得する不動産コラム~

マンションの買取とは?買取までの流れと抑えておきたいポイント Vol.08

自己所有のマンションを売却する機会はそれほど多くはないため、いざ売却しようと思っても、不安が大きい方も多いでしょう。査定から決済までを比較的スピーディーに行える住み替えをスムーズに行えるよう、売却手続きにおける負担は少しでも軽減したいものです。そこで検討したいのが、マンションの買取です。この記事では、マンションの買取について、その概要や手続きについてまとめました。これからマンションの売却を検討している人は、ぜひ買取についても選択肢の中に加えてみてください。

マンションの買取とは?買取を検討したいケース

不動産会社のサービスを見てみると、「買取サービス」を行っている会社があることに気づくと思います。まずは、買取の概要とそのメリットを見ていきましょう。

●マンションの買取とは

マンションの買取とは、不動産会社が買主となってマンションの所有者である売主と直接売買契約を結び、マンションを買い取ることをいいます。買取を依頼すると、買主を探す必要がないためスピーディーに売買が成立します。
 
資料が揃っており売買条件に納得できれば、3週間から1か月ほどで契約・決済、引渡の手続きまでが完了。その後、マンションを買い取った不動産会社は、新しい買主を探して再販します。このとき、不動産会社は利益を上乗せして販売するので、買取価格は相場より低くなる場合が多いようです。

●仲介との違いとは

一般的な仲介は、不動産会社が売主の代わりに買主を探します。買主を探すためには、インターネットに物件情報を載せたり、チラシを配布したり、また内覧をしたりする必要があるため、時間と手間がかかります。
 
また、仲介した不動産会社にも業務負担が発生することから、成約した際には仲介手数料を支払わなければなりません。一方で、売り出し価格は一般の相場価格となるため、相場とそれほど差がない価格で売却できる可能性が高いです。

仲介と買取で迷ったら?

マンションを売却する場合、仲介と買取で迷う方も多いと思います。両者にメリット・デメリットがありますので、自分に合ったサービスを選択しましょう。

●買取のメリット・デメリット

マンションの買取には以下のようなメリット・デメリットがあります。

【メリット】
・売買の手続きが迅速に行われ、マンションを早期に現金化できる。
・一般的に売却が難しい物件も買い取ってもらえることがある。
・秘密保持されやすい。
・売買の仲介手数料を支払う必要がない。
・売買契約における、契約不適合責任が免責されていることが多い。

【デメリット】
・買取価格が相場価格よりも低くなる場合が多い。
・築年数が浅い物件でも相応の中古物件として評価され、買取価格が下がることがある。

メリットのうち、契約不適合責任が免責されている場合が多い点については注目すべきです。一般の仲介の場合には、建物に不具合があった場合には、売主としての責任(修補責任、損害賠償責任など)を追わなければなりません。一方、買取の場合には不動産のプロが買主となるため、そのようなリスクは価格に反映されているとみなされ、免責されることが多いです。

●仲介のメリット・デメリット

一般的な仲介による売買にもメリット・デメリットがあります。

【メリット】
・相場価格で売却できることが多く、高値売却にチャレンジできる。
・物件の長所(アピールポイント)を考慮してもらいやすい。
・築年数が浅く新築同様ならば、買主が評価して高値での売却できることがある。
・次にどのような人が住むのかがわかる。
 
【デメリット】
・買主探しや内覧の対応、買主との契約交渉など煩雑な手続きが多く、時間がかかる。
・いつ売却できるかわからないため、住み替えのスケジュールや資金繰りの予測が立てづらい。
・仲介手数料がかかる。

仲介の場合、買主が主に個人となるため、物件の長所やアピールポイントが認められやすくなります。マンションのブランド・立地・間取りなどは、人によって評価が違うものです。手間と時間がかかる分、希望価格で売却できる可能性も高くなります。

●売却の目的と物件の条件によって判断

買取か一般の仲介にするかは、売買の目的や物件の条件、スケジュールなどによっても異なります。売買の目的でいうと、住み替えや相続税の納付、離婚の財産分与など売買のスケジュールが迫っている場合には、買取を選択したほうが手続きはムーズです。
 
そして、スケジュールや資金に余裕があるようであれば、仲介のほうが向いています。また、物件の特徴に着目すると、人気エリアの物件や築浅の物件なら相場価格で売り出しをしても買い手が付きやすいため、一般の仲介で売却してもそれほどストレスを感じることはないでしょう。
 
反対に、築年数が30年以上たっていたり、状態が悪くリフォームが必要な物件だったりすると、買主を見つけるまでに時間がかかります。場合によってはいつまでたっても買主が見つからないこともあるため、早めに買取を行っている不動産会社に相談するのが得策です。以下では、買取・仲介が向いている売買の目的や条件を表にまとめました。参考にしてみてください。

【 買取が向いている目的や条件 】
・なるべく早く売りたい
・築年数が30年以上経っている
・状態が悪く、リフォームが必要
・いわゆるいわくつき物件である
・内見対応ができない、したくない
・売り出していることを周りに知られたくない
・契約不適合責任を負いたくない

【 仲介が向いている目的や条件 】
・なるべく高値で売りたい
・駅近・人気のエリアにあるマンションである
・住宅ローンの残高が物件の相場価格に近い金額である
・個性的なデザインや立地(海が見える、自然が多いなど)の物件である
・ワンルーム・1DKなど投資用の物件である
・次に住む人が誰か気になる
・築浅の物件かすでにリフォーム済みの物件

マンションの買取の査定依頼から成立までの流れ

マンションの買取は、一般の仲介よりも手続きが簡単で売買契約・引渡しについても不動産会社に任せておけば安心です。ここでは、買取の手続きの流れを紹介します。

●マンション買取の流れ

マンション買取は、査定依頼・業者選定・契約手続き・決済・引渡しの5つの手続きで完了します。順に見ていきましょう。
 
・査定依頼
まず、買取を行っている不動産会社にマンション価格の査定依頼を行います。インターネットで検索し、複数の不動産会社に査定依頼をしたほうが良いでしょう。不動産の査定には、取引データや不動産相場を参考にして査定する簡易査定(机上査定)と、実際に現地調査をして査定する訪問査定があります。
 
・買取してもらう業者の選定
査定結果や不動産会社の規模やエリア、担当者の印象などを総合的に判断して買取業者を選定します。買取業者には全国規模で対応する大企業もあれば、地域密着で営業する会社もあります。それぞれに良さがありますので、特徴をおさえて自分に合った業者を選びましょう。
 
査定結果は、物件によっては大きく異なる結果が出ることがあります。注意したいのは、やみくもに高い査定結果を出した買取業者を選ばないことです。わざと高い査定を出しておいて競合会社と交渉をあきらめさせ、後になってさまざまな条件を言ってくる悪質な業者もあると聞きます。高い査定価格が出た場合には、なぜ高い査定価格なのかの理由をしっかり確認しておくと、後々のトラブルを避けることができます。
 
・契約
査定価格や契約条件に納得できたら、契約手続きに進みます。売主側で用意が必要な住民票や印鑑証明などの必要書類のほかは、買取業者が用意してくれます。契約条件については、金額や決済・引渡日のほか、建物に不具合があったときの対応方法、住み替えが遅れた場合の対応方法なども最低限確認しておきましょう。
 
・決済(支払い)
契約後は、決済期日に売却金額が指定の口座に振り込まれます。一般的には物件の引渡しと同日です。実際に口座に振り込まれたかどうかについてはすぐに確認できるように、金融機関の担当者に事前に連絡を取っておくとスムーズです。
 
・物件の引渡し
決済期日に物件の引渡しを行います。具体的にはマンションの鍵と関連書類の引渡しになりますが、基本的には引渡日までに物件のすべての家財道具や荷物の引越しを済ませておかなければなりません。

●査定の依頼方法

買取査定を依頼するには、インターネットで検索して買取業者を探すのが便利です。全国展開している買取業者も多くあるので、近くに店舗があるならば訪問して相談し、情報を得ることも大切です。
 
また、複数の買取業者に依頼できる一括査定サイトもありますので、活用してみるのもひとつの方法です。
 
ネット検索していると大企業にばかり目が行きがちですが、地元の不動産会社にも相談してみると、また違った視点からの査定結果がでて比較検討しやすいことがあります。地元の不動産会社のほうが、エリアでの取扱い経験が豊富で、取引相場に詳しいこともあるので、あわせて査定依頼してみるとよいでしょう。

●査定依頼時に注意したいこと

査定依頼は、多くても3社の買取業者にとどめておくべきです。多くの業者に査定してしまうと、営業を受けてしまい疲弊してしまうこともあります。
 
少しでも高額な査定を期待してしまう気持ちは理解できますが、多くの買取業者に依頼を出したり、一括査定サイトで多数の業者に一括査定を依頼したりすると、情報を整理できず結局どこにも決められなくなってしまう可能性があります。各社のホームページを丹念に見て特徴を把握し、信頼できる業者に依頼することが大切です。

マンションの買取を依頼する前に知っておきたいポイント

マンションの買取は、売却の手間を軽減する便利なサービスです。もっとも、諸費用や税金、買取条件など、事前に押さえておきたいポイントがありますので、整理してみましょう。

●買取でも諸費用や税金が発生する

買取を依頼したときも、印紙代や登記費用などの諸費用や譲渡所得税などの税金が発生します。仲介を依頼したときにかかる仲介手数料は必要ありません。印紙代は売買金額によって変わります。例えば、1000万円を超え5000万円以下の場合には10,000円です。
 
登記費用で売主負担となるのは、住宅ローンの抵当権抹消費用です。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。マンションは土地1筆・建物1戸のことが多いことから、登録免許税は2,000円となります。また、登記を司法書士に依頼した場合、司法書士報酬もかかってきます。
 
また、住宅ローンが残っている場合には、ローンの繰上返済手数料も発生します。相場は保証会社の手数料も含め2万円~5万円程度です。さらに、不動産を売却したときには譲渡所得税がかかってくることも忘れてはいけません。自宅を売却するときには軽減税制がありますので、不動産会社の担当者や税理士などの専門家に相談してみましょう。
 
例として、2,000万円のマンションの買取を依頼したときにかかる諸費用は以下のようになります。
 
売買金額:2000万円
印紙税:1万円
抵当権抹消登記登録免許税:2,000円
司法書士報酬:1万5000円
住宅ローン繰上返済手数料:4万円
諸費用合計:6万7000円
 
※譲渡所得税は所有期間、取得時の費用、所有形態(自宅か投資用か)などによって異なりますが、自宅の場合で諸条件を満たす場合には、3,000万円の特別控除が適用でき無税となります。

●条件によって買取が選択できないケースがある

買取を依頼したとしても、住宅ローン残高が多く、買取価格に自己資金を加えても完済できない場合もあります。その場合には、住み替えローンを検討するのも一策です。
 
住み替えローンとは、売却したマンションの残債と新居の購入資金を合わせて借り入れることができるローンです。一般の住宅ローンよりも借入額が大きくなるために、審査も厳しくなりますが、年収や他の借り入れ状況などの条件を満たせば、利用することが可能です。
 
住み替えローンを利用できなかった場合には、任意売却することも考えなければなりません。任意売却とは、金融機関との合意により抵当権を抹消して売却する方法です。任意売却後は、抵当権の設定されていない借入債務が残ることになります。
任意売却の場合には金融機関とのさまざまな手続きが必要になってくるため、買取を引き受けてもらえないことが多くなります。このように、条件によっては買取できないこともありますので、事前に買取業者に状況を説明して相談しましょう。

●より正確な査定額を試算してもらうために資料が必要

買取を依頼する前に査定を行う必要がありますが、正確な査定には相場情報のほかに、さまざまな資料が必要になります。具体的には、登記簿や図面、契約当時のパンフレットや重要事項説明書、固定資産税評価証明書を用意しておく必要があります。
 
固定資産税評価証明書は市役所の固定資産税課で発行してもらえますが、委任状を用意すれば第三者に取得を依頼することもできます。スムーズな手続きのために、必要資料を事前に確認しておくことが重要です。

●引き渡しの条件を確認する

契約条件によっては、引渡時の物件の状態を指定されていることがあります。契約前に引渡しの条件を確認しておけばトラブルを防げるでしょう。たとえば、エアコンやカーテンなどの残置物を残して退去すると、処分費用を請求されることもあります。もっとも、買取業者によってはエアコンや照明器具などを残しても費用負担無しで撤去してくれる業者もあるので、相談しておくとよいでしょう。

買取業者の選び方

買取をスムーズに依頼するためには、信頼できる買取業者を選ぶことが大切です。ここでは買取業者の選び方についてのポイントをチェックしておきましょう。

●買取業者を選ぶにあたって考慮しておきたいこと

・経験と実績が豊富な買取業者を選択する
買取は通常の仲介業務と異なる査定判断が求められます。売主にとって納得できる査定結果を出し、その後の契約・引渡しまで円滑に行うためには、実績と経験が必要です。
 
大手企業だと安心できる面もありますが、査定価格やその後の手続きは担当者の力量によって左右される部分も多くなります。地元の不動産会社にもあわせて相談し、信頼できる会社を選択しましょう。
 
・買取業者の得意分野を把握する
不動産には、一戸建て・区分マンション・マンション一棟・商業ビル・オフィスビル・ホテルなどいろいろな種類があり、買取業者にも得意分野があります。区分マンションを売却するときには、特に区分マンションの買取実績が豊富かについてもチェックしておきましょう。
 
・査定結果について納得のできる説明をしてくれる業者を選ぶ
買取の査定結果についてばらつきが出るときには、査定担当者が何かのポイントに着目して価格を上下させていることになります。査定のベースとなっている取引相場は、各社それぞれ大差はありません。
 
それでも、極端に高い査定が出ているのであれば、その理由についてきちんと説明を求めることが大切です。根拠があって高い査定を出しているのであれば、誠実でレベルの高い業者であるといえるでしょう。

●買取業者ごとに独自のサービスがある

査定依頼の際には、買取価格が大きな判断要素になることは間違いありませんが、買取業者ごとに独自のサービスを用意していることもありますので、これも買取業者を選ぶときの参考になります。
 
中には、引っ越し費用を負担してくれたり、家具などの不用品の撤去を請け負ったりするところもあるようです。
 
また、建物の不具合について売主が責任を負うかどうかは重要なポイントです。買取業者はプロの不動産会社であるため、売主の責任を免除している場合が多くなっています。

●買取以外の手段も検討できる業者を選ぶ

買取と仲介にはどちらもメリット・デメリットがあり、中には買取が相応しくないケースがあります。買取の相談をするときには、売買仲介やリースバックなど幅広い選択肢が用意できる業者だと安心です。たとえば、当初3か月だけ仲介で売り出し、買主が現れなければ買取サービスに切り替えるなど、柔軟な対応を取ってもらえるところもあります。

スピーディーな現金化が買取の魅力

不動産会社にマンションの買取を依頼すると、査定から決済・引渡までの手続きがスムーズに行われ、早期にマンションを現金化できます。もっとも、売買の目的や物件の状態によっては、売買の仲介を依頼したほうが良い場合もあります。買取と仲介のメリット・デメリットを見極めて、自分にあった方法を選択しましょう。

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プロフィール

徳田 倫朗
 
宅地建物取引士
株式会社イーアライアンス代表取締役社長。中央大学法学部を卒業後、戸建・アパート・マンション・投資用不動産の売買や、不動産ファンドの販売・運用を手掛ける。アメリカやフランスの海外不動産についても販売仲介業務の経験を持ち、現在は投資ファンドのマネジメントなども行っている。

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