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不動産の売却を考えている人が知っておきたい注意点と成功のポイントとは? Vol.7
不動産の売却は人生において、そう何度も経験することではありません。ほとんどの方は初めてですから、不動産会社への相談や売却を依頼するにあたり、不安を感じている方も多いでしょう。不動産の売却を成功させるためには、目的に沿った方法を見いだし、売れるまでの手順をよく理解しておく必要があります。そこでこの記事では、不動産を売却する方法や注意点、あらかじめ知っておくべき不動産売却の流れについてまとめ、売却を成功させるポイントについても解説します。
不動産売却を考えるタイミングやケースとは?
自宅などの不動産の売却を考える動機には、さまざまなケースがあります。ここでは、不動産売却を考えるタイミングや、ケースについてご紹介していきましょう。
●住み替える
自宅の住み替えのために売却をするケースは、少なくありません。理由として多いのは、引っ越しせざるを得ないためです。
・転勤により職場が変わる
・親の介護のため実家の近くに引っ越す
・家族が増えて広い家に住まなくてはならない
・離婚することになり財産分与のため自宅を売却
このほか、積極的に住み替えようとする場合もあります。たとえば「ライフスタイルの変化により、望ましい家に移りたい」や「もっと便利で使いやすい家に買い替えたい」といった理由です。
●資金や生活費を確保するため
生活資金や事業資金を確保するために、不動産を売却するケースもあります。
・住宅ローンの返済が負担になってきたため、一旦自宅を売却する
・1年以内に事業資金の不足が予想され、所有する不動産を売却し資金を準備する
・所有する不動産のエリアでは将来、相場が下落する可能性が高まってきたので、早めに売却する
不動産は換金性の高い資産なので、いざというときに、売却する方法も一般的です。
●相続時の資金整理のため
資産を相続すると、相続税が課される場合があり、相続税の申告と納税は被相続人が亡くなったことを知ってから10か月以内と定められています。手持ちの現金や預金で相続税を支払えない場合、相続した資産を売却するなどして、納税資金を準備しなければなりません。
また、固定資産税などの税金の負担や管理費用がかかることを考えると、売却するほうが望ましいケースもあります。このほか、不動産の相続は遺産分割が難しいため、売却して遺産を分割する「換価分割」を行うケースもあるでしょう。
●管理の手間を省くため
居住予定がなく賃貸物件としても活用できない場合、固定資産税の負担のほか雑草の処理などの維持管理に努めないで放置すると、管理不全空き家や「特定空き家」と認定される可能性もあります。
よく見られるケースとして、相続した実家を放置してしまうということがあります。実家を活用しない場合は売却し、管理負担を軽減することが望ましいでしょう。また2023年12月31日までは、実家の売却についても「3,000万円控除」が適用できるので、もし該当する不動産がある場合には売却を検討してみてください。
不動産売却の流れ
不動産を売却する際には、不動産会社に依頼するのが一般的です。不動産会社を介さず直接当事者間で売買することも可能ですが、高額な取引になることが多く、所有権移転までに第三者の権利を調整しなければならないケースもあり、トラブルを回避するためにも専門の宅地建物取引業者に依頼することが望ましいでしょう。ここでは不動産会社に依頼して売却する流れについて説明します。
●不動産売却には仲介と買取りがある
不動産の売却方法には、不動産会社が買主を探して仲介する方法と、不動産会社が直接買取る方法があります。
「仲介」は、査定額に基づき売り出し価格を検討しますが、売主の希望価格を反映させることもあります。成約にいたる期間はすこし長くなる傾向があるので、ある程度時間がかかっても納得した金額で売却したい方に向いています。
「買取」は、相場価格よりも低い売却価格となるのが一般的ですが、不動産会社が直接購入するため、短期間で取引が完了します。したがって多少価格は低くても、早く売却して現金化したい方に向いています。
●仲介による不動産売却の流れ
まず、依頼する不動産会社を選びます。地域でよく知られている不動産会社や、知人の紹介や口コミで見つけるケースもありますし、最近では「一括査定サイト」に登録されている不動産会社から数社を選ぶ方法もあります。
重要なのは、不動産売買業務に精通しており、対応がしっかりしている会社で、かつ気軽に相談できる会社を選ぶことです。不動産会社によっては、売買よりも賃貸がメインの会社もあるので注意しておきましょう。
不動産会社に相談すると、まず「不動産査定」が行われます。物件の状況や周辺の特性などひと通りの物件調査を行い「査定価格」を算出します。その結果にもとづき初期の「売り出し価格」を検討し、価格に納得できたら不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約には次の3種類があり、売主にとってもっとも望ましい方法を選択します。
1.一般媒介契約
2.専任媒介契約
3.専属専任媒介契約
媒介契約は一般媒介を除いて最長3か月と定められており、契約期間が終了する時点で契約方法を変更することや、仲介する不動産会社を変更することも可能です。媒介契約を締結すると、実際に不動産の売却活動が開始されます。不動産会社は物件情報を不動産会社のネットワークである、レインズに登録し全国の不動産会社に売り出し物件情報を発信します。
現在はインターネットによる販売活動がメインですが、反響があると内覧のため不動産会社の担当者が購入希望者を案内します。居住中の場合は、売主も内覧に対応しなければなりません。
ケースによっては、販売活動を行っても買主が見つからないこともあるので、売り出し価格を見直すなど、売却条件を再検討する必要もでてくるでしょう。
買主が見つかり、売買金額を含めた取引条件が合意にいたったら契約に移ります。売買契約書などの必要書類は、仲介の不動産会社が準備します。買主が住宅ローンを利用する場合には、必要な手続きを進めながら、売買契約で設定した期限までに引渡しをします。
引渡しには司法書士が立会い必要書類の確認を行い、売買代金の授受ののち所有権移転登記手続きを行います。不動産会社への仲介手数料支払いも引渡し時に完了します。
●買取による不動産売却の流れ
買取の場合は、仲介よりも売却までのプロセスが単純になります。最初に不動産査定により査定額を算出するのは仲介と同じです。ただし「買取価格」が提示される点が異なり、買取価格は、相場価格を下回るのが一般的です。
査定を依頼する不動産会社を見つけるのは、仲介の場合とあまり変わりません。ただし不動産会社のなかには、買取に応じられない会社もあるので注意しておきましょう。買取価格に納得したら不動産会社と売買契約を締結し、期限までに引渡しを行います。
買主が不動産会社となるため、引渡しの手続きもすべて任せられ、売主にとってはほとんど手間がかからず簡単です。ただし、売却する物件が居住中の住まいであれば、引っ越しの準備や手続きなどは売主がしなければならないのは言うまでもありません。
●不動産売却にかかる期間
売り出しから引渡しまでの期間は、仲介の場合で、およそ3か月から半年です。条件的に難しい場合は1年に及ぶこともありますが。例は少ないでしょう。
売り出し価格が低いと早く売れ、高いと時間がかかるといった原則的なことはあるものの、タイミングという要素もあり、相場価格でも早く売れたり、逆に相場よりも低めなのになかなか買い手が見つからなかったりします。この点については、ケースバイケースと言えるでしょう。
買取の場合は、前述のとおり不動産会社の資金準備と、売主の引っ越しなどの条件が整うと、早い場合は2~3週間で引渡しを終えることが可能です。
不動産売却で知っておきたい注意点
不動産売却は媒介契約を締結した不動産会社が実際の売却活動を行っていきますが、売主にも準備や注意しなければならないポイントがあります。
●売るために手数料や費用が発生する
売却においては費用がかかります。ほとんどは売却代金から支出しますが、住宅ローンの元金残高を一括返済すると資金が足りなくなることもあるため、あらかじめ必要な費用を把握しておくことが重要です。
上表がおよその目安となり、たとえば3,000万円の売買を行った場合に売主が負担する費用は次のようになります。
仲介手数料:1,056,000円(消費税10%含む)
印紙税:10,000円(売買契約書2通作成の場合は2通にかかる印紙税を売主と買主で分担することが一般的)
譲渡所得税:居住用財産の売却の場合は特別控除によりゼロ(確定申告が必要)
●ローン残高が残っていないか
住宅ローンなどの抵当権が設定されており借入残高がまだある場合は、売却代金から一括返済しなければなりません。
ローンの返済表を保管してあれば権利証(登記識別情報)と一緒にして、いつでも確認できるようにしておきましょう。返済表がない場合は金融機関に確認し、融資額残高証明書を発行してもらうと確実です。
売却代金から融資残高を一括返済し、残った代金で仲介手数料などの諸費用を支払いますが、万一不足する場合は別途資金を用意しなければなりません。
融資残高が売却代金よりも上回る場合は、別の資金を補充して一括返済しなければなりませんが、資金が用意できない場合は「任意売却」による抵当権解除手続きをする必要が生じます。このほか、固定資産税の未納などにより「差押」登記がされていないかも確認が必要です。
●内覧を受け入れる準備をする
不動産の売却では購入を検討する人が物件を訪れ、室内や屋外のチェックなどをするため必ず「内覧」を行います。売主は内覧者の訪問に対し、準備をしておきましょう。
・室内や屋外の清掃や片付けをし、印象をよくするよう努める
・周辺の利便施設や町内の状況について質問されることもあるので、説明できることを整理しておく
また、内覧は土日や休日が多くなるため、売主の旅行外出などが制限される場合があります。居住していない場合は、仲介の不動産会社に鍵を預ける方法がとられることが多いでしょう。
●確定申告することで税金の控除を受けることができる
売却の結果譲渡所得が生じた場合、譲渡所得税が課されます。しかし、居住用財産、つまり自宅として居住していた土地や建物を売却した場合、売買金額から売買に必要となった費用を控除した残りの利益=譲渡所得から3,000万円を控除することができます。つまり、譲渡所得が3,000万円以下であれば譲渡所得税がゼロになります。
この特別控除は、譲渡した翌年の確定申告の期間(2月16日~3月15日)に、税務署で確定申告をしなければなりません。
譲渡所得に対してはこのほか次のような特別控除制度があります。
・公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
・特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
・特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
・平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
・農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
・低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例
特別控除について詳しい内容は国税庁のホームページで確認できます。
●売り出したらどの程度多くの人に見てもらえるか確認する
仲介で売却する場合は、できるだけ早くそして高く売れることが理想です。売り出した情報を見る人が多ければ多いほど、売れる確率が高まるため、仲介する不動産会社はいろいろな方法で物件情報を発信します。
・仲介会社の自社サイト
・不動産ポータルサイト
・近隣へのチラシ配布
情報発信のほとんどはインターネットになり、掲載メディアも費用のかからない方法から、ある程度費用がかかる方法まで様々です。
広告費用にどの程度かけるかは仲介する不動産会社の判断によりますが、一般媒介契約の場合はどちらかというと、かける費用は少なめになります。
そのほか、折込チラシや新聞広告・タウン情報誌といった方法もあるので、仲介会社がおこなうメディア戦略については、事前に確認しておくとよいでしょう。
不動産売却を成功させるためのポイント
不動産の売却はマイホームを手に入れた時と同様、人生において大きなプロジェクトともいえるものです。成功させるために、注意点をしっかり確認しておきましょう。
●達成したい目的を整理する
「何のために不動産を売るのか?」目的をはっきりさせることが重要です。
・資金の確保
・負担の軽減
・新しい環境への住み替え
目的により「仲介」が望ましいのか、「買取」のほうが得策なのか、合理的な判断ができるようになります。また、目的には、必ず「いつまでに」という期限も設定しておきましょう。
仲介を選択したとしても、高く売りたいという願望が、売り時を逃す原因になることもあります。目的を意識していると、冷静でなおかつ適切な判断が可能になるでしょう。
●査定額だけでなく、自身でも相場を確認する
「不動産査定」においても注意点があります。不動産会社が提示する査定額には、意図的に高い金額を設定するケースがあります。媒介契約の締結を目的に高めの査定を行い、実際に売却活動に入ると売り出し価格を値下げするような方法です。
レインズタワー(http://www.reins.or.jp/)では、周辺の売買事例を確認することができ、不動産系のサイトで売買事例の口コミが確認できることもあります。
不動産ポータルサイトにはたくさんの物件が掲載されていますので、新築の販売価格からある程度の相場感を確認してみてください。査定額が適切なものかは、自身でも確認するようにしたいものです。マンションであれば、ネットで簡単に、マンション内の別の住戸の売買事例を確認できるケースも多いでしょう。
●査定額だけではなく安心、信頼して取引できる不動産会社に依頼する
売却期間が長くなるケースもあるので、その間には売り出し価格の変更や住み替え物件の選択など、さまざまな課題を担当者に相談することになるでしょう。また、買主の立場から見ても頼りになる担当者のほうが相談しやすく、商談がスムーズに進むこともあります。
不動産仲介の担当者は“エージェント”と呼ばれることもあり、コンサルタント的な役割もあります。信頼感があり気軽に相談できる不動産会社や、担当者に依頼することが成功への近道といえるでしょう。
●余裕を持った売却スケジュールを立てる
不動産売却は、売買代金を受け取り買主に引渡しをして完了です。そのため、自宅を売却する場合は、引渡しまでに引っ越しを済ませておく必要があります。
引渡しまでに新しい住まいを確保し引っ越しするまでには、いろいろと準備が必要ですしお子さんがいる場合などは、転校のタイミングも考えなければなりません。
あらかじめ、売却開始から引渡しまでのスケジュールを立てて、もっとも望ましい引渡し時期を目標に進めていきましょう。
スケジュールに余裕を持って検討し、都合がつけば前倒しするのがポイントです。予定が狂って先延ばしを繰り返すと、思わぬ不都合を生むかもしれません。特に、引渡しを急ぐあまり、取引条件を不利な方向に変更するようなことは、できるだけ避けたいものです。
●売却という選択肢に絞らない
目的が資金の確保である場合は、売却にこだわることはありません。自宅を売却してもそのまま賃借で住みつづける「リースバック」という方法があります。
リースバックは、仲介大手のフランチャイズなども事業の柱としており、地域密着の不動産会社でもリースバックによる資金提供が可能になっています。
売却以外に資金を確保する方法としては、ほかに「リバースモーゲージ」という方法もあります。リバースモーゲージは、自宅の土地建物を担保にした融資であり、資金使途は老後の生活資金や自宅のリフォーム、子供への生前贈与など多様な使い方ができ売却と変わらない資金確保の方法です。
売却を相談する不動産会社に幅広い視点があると、もっとも望ましい目的に合った方法を見つけてくれるでしょう。そのためにも、信頼できる不動産会社に相談することが重要です。
目的に合った売却方法
売却を依頼する不動産会社の担当者は、「パートナー」ともいえる存在になります。そこで、よりよいパートナーを見つける方法のひとつが「査定依頼」です。売り出し価格を決定する判断材料として査定するのですが、この過程で、不動産会社や担当者の相性などを確認してみてください。よりよいパートナーを見つけ、目的を明確にした上で、もっとも相応しい方法で売却を進めていきましょう。
売却のご相談はこちら
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プロフィール
弘中 純一
宅地建物取引士/一級建築士
宅地建物取引士・一級建築士として住宅の仕事に関り30年以上になります。
住宅の設計から新築工事・リフォームそして売買まで、あらゆる分野での経験を活かし、現在は住まいのコンサルタントとして活動。
さまざまな情報が多い不動産業界ですので、正しい情報発信に努めています。
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