野菜をつくろう!

Vol.4 イチゴ

家庭菜園と聞くと、畑やお庭がないとできないものと思っていませんか?
しかし、マンションのバルコニーでも、プランターで野菜を手軽に育てることができるのです!
初心者さんでも大丈夫。ちょっとした簡単な装備で、誰でも気軽に始められるのがプランター菜園のよいところです。
さあ、“おうち野菜づくり”にチャレンジしてみましょう♪
今回は、春に摘み取るのが楽しみなイチゴを育ててみましょう!

必要な道具を準備しましょう

イチゴ栽培に必要な道具

【1】プランター
丸型のプランターなら7号~8号鉢。(鉢皿もあればバルコニーが汚れず便利です)長方形の65cm標準プランター、ブリキ鉢や木製鉢など、どんなプランターでも栽培できます。(写真は8号の丸鉢、土の容量は5.5リットル)
【2】ジョウロ
2~3リットルの容量で、自分が持てる程度の大きさのもの
【3】園芸用スコップ
土をすくう部分の幅が広いものの方が便利
【4】はさみ
自宅にあるものでOK
【5】肥料
緩効性化成肥料、有機肥料、液体肥料など。(「イチゴ用」の肥料も便利です)
【6】
「花と野菜の土」など野菜用と書かれていて、肥料入りですぐに使える土が便利
※標準的な土袋は、14リットルか20リットルで販売されています。
【7】
イチゴは通常は「種」からではなく、「苗」から栽培します。
苗はホームセンターや種苗店で販売されています。”四季なりイチゴ“の苗がおすすめ。翌年以降は子株を苗にすることができます。
※イチゴには一年のうち、春に収穫できる“一季なりイチゴ”と春から秋までの長い期間収穫が楽しめる“四季なりイチゴ”があります。

イチゴの育て方

イチゴは果物と思われがちですが、スイカやメロンと同じく“果実的野菜”に分類される立派な野菜です。イチゴは冬を越すために栽培期間が長めですが、バルコニーでも十分に育てることができます。小さい緑色の実がだんだんと大きく赤くなっていく様子を見られるのはバルコニー菜園ならではの楽しみでしょう。では、かわいいイチゴ栽培を始めてみましょう。

1.苗の植え付け

植え付けの時期は、9月中旬ごろ~11月上旬ごろ。苗はホームセンターや種苗店で購入します。
7~8号の丸鉢なら1株、65cm標準プランターなら3株が目安です。プランターに土を入れ、植え穴をあけ、苗をそっとポットから取り出して植え付けます。“クラウン”とよばれる根元の中心部分が土に埋まらないように、浅植えにすることがポイントです。台や室外機の上などの日当たりのよい場所に配置し、水やりをします。

2.水やり、追肥

(イチゴ専用の肥料もあります)
毎朝一回、水やりをします。冬場は土の表面が乾いたら2、3日に一度のペースで水やりをします。植え付けから1カ月が経過した頃に、一度だけ肥料を追肥します。
冬場は追肥を控えて、3月ごろから追肥を再開します。
(固形の肥料なら3週に一度、液肥なら週に一度)
※肥料については、第2回を参照ください

3.開花・摘花・摘果

3月ごろになると白色のかわいい花が咲きます。中にはピンク色の花が咲く品種もあります。1~2月ごろに花が咲いてしまった際は、摘み取った方が春以降に収穫量が増えます。また、3月以降も1房が3~4個くらいになるように摘果(果実の間引き)することで、大きな実がなります。寒冷地では受粉がうまくいかない場合があるので、毛先のやわらかい筆などで花の中心をそっと撫でて、人工受粉をすると確実です。

4.収穫

バルコニー菜園のイチゴの収穫時期は、暖かくなってからの5月ごろです。実が赤く色づいたものから、ヘタの少し上をはさみで切り取って収穫します。実が色づき始めたら、鳥に狙われないように台所の水切りネットなどで覆っておくとよいでしょう。“一季なりイチゴ”の場合、収穫終了後は2~3週に一度のペースで薄めの液肥を追肥します。“四季なりイチゴ”は、秋まで収穫が続くので、通常どおりの追肥を秋まで続けます。

5.来年の苗作り

収穫後に出てきたランナー(子株)を育てて、来年の苗とします。ランナーは親株から切り離さずに、新しいポットに根元を埋め込みます。その後、根付いたら切り離して秋まで育苗します。ランナーからさらに出てくる孫ランナーの方が親株の病気などを受け継いでいないので、孫ランナーが取れればそちらを使用してください。

注:野菜の育て方は地域の気候により異なります。
このページでは、関東の気候を基準にしています。おおむね関東~九州の太平洋側では、同じような育て方をします。日本海側や東北地方の寒冷地では、9月中旬~10月中旬ごろには植え付けをすませてください。北海道は9月に植え付けしてください。

同じ時期に植え付ける野菜

エンドウ

エンドウは10月に種をまいて育てる春野菜です。サヤごといただく絹サヤエンドウやスナップエンドウ、サヤの中の豆をいただくグリンピースなど、育て方はどれも同じ。うま味が抜群で市販品との味の違いがよくわかるとてもおいしい野菜です。
育て方は、大きめのプランターや袋栽培(※)で3~4粒の点まきにし、本葉が3~4枚の頃に間引きをして1カ所2本にします。草丈が15cmくらいになったら支柱を立て、誘引しながら育てます。
冬場は追肥はせずに土の表面が乾いたら水やりだけで越冬させて、3月から追肥を開始します。4月ごろに開花し、その後、2週間程度で収穫ができます。
※袋栽培とは・・・プランターや鉢の代わりに培養土が入っている袋をそのまま使い、野菜を育てる方法です。あらかじめ、釘などで7~8箇所ほど水抜き穴を開けてから使いましょう。

 

ここがPOINT! 土のリサイクルについて

<日影で育つ野菜>

野菜の栽培が終了した後の古い土は、リサイクルすれば次のシーズンでまた使用することができます。秋~冬の間に、古い土をリサイクルしておいて、来春からの栽培に備えておきましょう。
まずは、古い土に熱湯をかけ殺菌処理をします。 分量は14~20リットルの土に対して、熱湯3~4リットルくらいです。
2、3日して土が乾燥したら、粉末状の苦土石灰を一握り混ぜ込みます。 苦土石灰には野菜を育てるうちに酸性になってくる土を中和する働きや、連作障害(同じ植物を何度も続けて育てるとうまく育ちにくくなる障害)を防止する働き、土壌を改良する働きがあります。苦土石灰を混ぜ込んだ土を1週間ほど休ませてから、市販のリサイクル材、土壌改良材か腐葉土などを混ぜ込みます。
その後、1カ月以上、長く寝かせるほど土の中の微生物の働きで土壌改良効果が高まります。
※土をリサイクルせず処分する場合は、お住いの自治体により処分方法が異なります。ご注意ください。
プロフィール

ベランダ菜園セラピスト/宮田範子

ベランダ菜園歴20年以上。普通のマンションのベランダで、幅広く野菜作りを楽しんでいる。野菜の栽培記録をつづったブログ「大好き☆ベランダ菜園」が人気で、現在は、ネットショップ「Nicoco プランター菜園EnjoyShop」を運営。著書「ベランダ菜園セラピー」など。

野菜づくりの達人! 藤田 智 先生からのアドバイス

イチゴ栽培は、7カ月程度の長い期間を必要としますが、コツを押さえればうまく育てられると思います。ぜひイチゴ栽培にチャレンジしてみましょう。また、秋はイチゴだけでなく、ホウレンソウ、コマツナ、ラディッシュなどたくさんの野菜の栽培を始めるのにも適していますので、これまでにご紹介したバルコニー菜園の知識を生かしてみるのもよいかもしれませんね。
 
イチゴの苗を植える際、ランナーの出ている反対側に実ができますので、長方形プランターに2~3株植えるなら、向きを揃えたほうが管理も収穫もしやすいです。実ができたら、最低温度を6℃以上にするように心がけてください。果実が真っ赤になってきたら収穫です。収穫の最中に新しいランナーが出てきたら、これらは順次切り取ります。収穫を終えたら、今度はランナーで来年の苗を育てます。1株あたり15個ほど作れます。次年度の苗を作るまでがイチゴの栽培といってもよいので、ぜひ頑張りましょう。
プロフィール 

藤田 智(ふじた さとし)

1959年秋田県生まれ。岩手大学農学部、同大学院修了後、向中野学園高校の教諭、恵泉女学園園芸短期大学助教授を経て、現在は恵泉女学園大学人間社会学部人間環境学科の教授として教鞭をとる。その傍ら、家庭菜園や市民農園の指導、普及活動にも積極的に取り組む。「趣味の園芸やさいの時間」(NHK)や「世界一受けたい授業」(日本テレビ)などメディアにも多数出演し、野菜栽培に関する著書などは110冊を超える。
明和地所グループ ライフスタイルクラブインタビュー記事はこちら
《ご注意ください》

・バルコニーは非常時の避難通路としての役割があります。
 プランターで避難パネルや避難ハッチを塞ぐことのないよう、避難経路を確保しましょう。
・落下の危険のある場所にプランターを設置するのはやめましょう。
・枯葉や土を排水口に流すと、排水管詰まりの原因となります。こまめに掃除しましょう。
・水やりの際は階下に水が落ちないよう配慮しましょう。
・マンションの管理規約、使用規則を遵守して野菜づくりを楽しみましょう。

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