Interview

株式会社サマンサネット代表 杉之原冨士子さん Vol.1

自分の荷物を見直すことで、 家も、暮らしも、充実していく。

だれしもが思い描く、モデルルームのような”理想の家”にするには

お片づけサービスなどを手掛ける株式会社サマンサネット代表の杉之原冨士子さんに、”お片づけ”を通じて暮らしを豊かにするコツをお伺いしました。
住まいを快適な空間にするためのヒントがいっぱいです。
プロフィール

杉之原冨士子さん

株式会社サマンサネット代表取締役。
一般社団法人ホームステージング協会理事。専業主婦として12年を過ごした後、運送会社に勤務。事務パートから営業職を経て、引越現場での梱包開梱サービス業を担当。2011年に株式会社サマンサネットを設立した。
現在は引越梱包開梱やお片づけサービスのほかにも、お片づけセミナーを開いている。著書に『片付かない!どうする我が家、親の家』(クラブハウス刊)、『片づけなきゃ親の家 片づけたい自分の家』(講談社刊)。

”いま必要なものを見分ける”がポイント

― “美しい家・空間”という理想を持つ一方で「うまく片付けられない」
「物があふれてしまう」と悩んでいる人が少なくありません。
どのような理由があるのでしょうか。
 
現代は“家のなかに物が留まりやすい時代”です。コンビニエンスストアの増加やインターネット通販の普及など、家のなかに物が入ってきやすくなりました。一方で、物を外に出すのは大変です。粗大ごみなど大きい物を出すには手続きが必要ですし、運び出すのも一苦労ですよね。小さい物でも、細かいごみの分別は地域ごとにルールが定められています。
 
― うまく整理・収納をするには、どのようにすればいいでしょうか。
家の中に物がたまってくると、どこに何があるかを把握できていれば問題ありませんが、必要な物がすぐに出てこなくなってしまうと不便ですよね。収納をする前に、“いま使っている物”と“いま使っていない物”を仕分けするのがポイントです。“使っていない物”のなかには、もういらない物もあるはずです。そういう物をしっかり処分して、収納する物の量を減らしていきましょう。

― 処分に迷う物は、どう判断していけばいいですか?
使っていない場合でも、思い出の品などは迷ってしまいますよね。手放したことを後悔しそうな物を無理に処分する必要はないので、“いま使っている物”とは別の場所に置くことをおすすめします。そうするだけでも、ずいぶんスッキリした印象になりますよ。
 
― 収納よりも、まず仕分けすることが大事なんですね。
収納用品を先に買ってしまう人もいますが、結局は物の絶対量が多いからあふれてしまうんです。順序としては仕分けをしてみて、どうしても物が収まりきらない場合は、収納用品を購入していただくのがスマートだと思います。物が少なくなれば、片付けに掛かる時間も減りますし。

必要な物は”6年”で変わっていく

― 仕分けをするのに適したタイミングはあるのでしょうか。
仕分けは小規模でも日常的に行うのが理想ですが、大規模な仕分けはお子さんがいるご家庭では“6年”が目安になります。子供が生まれてから小学校に入るまで、小学校入学から中学校入学まで、中学校入学から高校卒業までがそれぞれ6年ですよね。子供の成長とともに、衣服・勉強道具・おもちゃなど、必要な物が入れ替わるタイミングで親も一緒に仕分けをするのが理想です。夫婦2人で住んでいる場合などは、転職や部署の変更、リタイア時など、生活が変化するタイミングがいいと思います。
 
― 家族と一緒に仕分けをするときに、気を付けたほうがいいことはありますか?
“自分の物は、自分で仕分けする”ということです。たとえ家族だとしても、価値観は人それぞれ。相手にとっては大切な物でも、自分にはその判断がつきません。それは、子供が相手でも同じ。親はついつい「それ、高かったのにいらないの?」なんて思いがちですが(笑)、所有者の判断基準を尊重してください。幼い子ほど自分で判断をするのは難しいですが、迷ったときに初めて親が手を差し伸べてあげれば大丈夫です。

「30分掃除すれば、理想の美しさになる」くらいでちょうどいい

― “理想の部屋”にするためには、段階があるのですね。
そうなんです。物が少なく片付いていれば、部屋は自然ときれいに見えるもの。整然とした部屋なら、お気に入りのインテリアや植物を飾ったときに一層映えることでしょう。仕分けという段階を踏まないと、パッと見はきれいでも中はぐちゃぐちゃ。どこに何があるかわからないような状態では暮らしていてストレスが溜まりますよね。でも、美しさを求めるあまりに「きれいにしているんだから散らかさないで!」と家族に求めてしまうようになると、家の中で緊張しながら暮らすようになり、家族みんながホッとできる家とは言えませんよね。
 
― 暮らしやすくて、美しい部屋というのが理想なんですね。
帰宅して、「ほっ」と一息つけるような家が“暮らしやすい”状態なのだと考えます。そのためにも、毎日10分でも20分でもいいので、ほんの少しずつでも整理や片付けができるといいですね。気合いを入れて1日掛けてしまうと、「片付けは大変」というイメージが自分の中にできてしまうので。いつも完璧である必要はなくて、「30分掃除すれば、理想の美しさになる」くらいでちょうどいいんです。自分の荷物を見直すことで身軽にもなりますし、必要なものがわかっていく。そうすることで、家だけではなく生活そのものが充実していくのだと思います。

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