Interview

Vol.14 ラグビー・元日本代表 大畑 大介さん

自分の居場所を見つけられる。それがラグビーの魅力のひとつ。

ワールドカップに2度出場しただけでなく、日本代表の主将を務めた経験もある元ラグビー選手の大畑大介さん。現在は、2019年に日本で開催されるワールドカップのアンバサダーとしても活躍中の大畑さんに、ラグビーを始めたきっかけやご自宅でのリフレッシュ方法、そしてご家族との過ごし方など、お話を伺いました。
プロフィール

大畑 大介(おおはただいすけ)

ラグビー・元日本代表

小学校3年生の頃にラグビーを始め、東海大学付属大阪仰星高校時代には、高校日本代表に選抜される。「一番厳しい環境に身を置きたい」という思いから、当時、“日本一練習量の多いラグビー部”として知られていた京都産業大学ラグビー部に入部。卒業後の1998年に神戸製鋼ラグビー部に入部し、俊足を生かしてトライを量産。日本代表として2度のワールドカップに出場。国際試合トライ数世界記録を保持する(69トライ)。引退後の現在は、日本で開催される「ワールドカップ2019」のアンバサダーとしても活躍。13歳と9歳の娘を持つパパとしての一面もあり、2011年には「ベストファーザー in関西」を受賞するなど、イクメンとしても有名。

注目される存在になるために始めたラグビー

まずは、ラグビーを始めたきっかけから、本格的にラグビー選手を目指すことになった経緯を教えてください。
大阪の下町にある公立小学校に通っていたんですが、周りはみんな野球少年で、阪神タイガースファン。僕は野球をやっていなかったからそんな状況がたまらなくて、周りの子たちと溶け込めなかったんですよ。でも、友達は欲しいじゃないですか(笑)。自分から輪の中に入れないなら、注目されるような存在になって、周りから来てもらえるようになればいい。みんなと同じことができない僕は野球以外のスポーツを始めようって。ラグビーは父親が高校時代にしていたのもあって、身近なスポーツだったんです。それで、9歳の頃にラグビースクールに通い始めました。
当時から足が速かったこともあり、始めた当初は周りと比較しても上手だったんです。でも、成長期に伴う足の痛みで小学校の高学年から中学生くらいまで思うように走れなくなって。ずっとしんどい時期が続いたんですが、高校2年生の時にレギュラーの座をつかんだんです。それと同時に、チームがいい状態になって大阪の予選を勝ち切ったことで、自分が思い描いていた可能性がどんどん広がっていきました。この可能性を今後も広げていきたいと思い、もっとも自分自身を成長させてくれる場所に身を置こう。そう思って、当時、日本一練習量の多い大学のラグビー部に入部したんです。
 
― 現役時代に印象に残っていることはなんですか?
たくさんありますが、神戸製鋼に入って2年目に経験した日本一は印象に残っていますね。それまでの高校、大学とずっと日本一を目指していましたが、なかなか手に入れることができなかったんです。とはいえ、日本一はあくまでも通過点。日本代表に選ばれて世界にチャレンジできるプレーヤーを目指すために神戸製鋼に入ったので、日本の代表として2度のワールドカップに出場したのもいい思い出ですね。

子供の頃に作れなかった思い出を、いま家族と

― リフレッシュ方法やご自宅での過ごし方について教えてください。
現役時代からそうですが、僕のリフレッシュ方法はもっぱらお風呂なんです。オンとオフをはっきりさせたいので、自宅ではラグビーのことを考えないようにしています。嫁さんや子供の前ではラグビーの映像も見ませんし、大会などでもらったトロフィーも自宅には一切置いていません。考えごとをしたり本を読んだり、熱くなったら湯船から出て、体を冷ましてはまたお湯に浸かって…。ゆっくり一時間くらいはお風呂にこもっていますね。家族といるとなかなか一人の時間を作れませんが、お風呂とトイレだけは唯一プライベートな時間を作れるじゃないですか。でも、一時間もトイレにこもっていたら嫁さんと子供に怒られちゃうので、お風呂でリフレッシュするようにしています。
 
2011年には「ベストファーザー in関西」を受賞されていますが、家事や子育ても積極的にこなされているなんて素敵ですね。 
家事も子育ても自分がやりたいからやる、ただそれだけなんですよ。海外生活が長かったので、オムライスや餃子なんかの簡単なものなら自分で作ったりもしますし。ただ、洗いものは嫌いなので、嫁さんに任せるんです。相手に自分をよく見せたいがために、最初はいろいろ頑張るじゃないですか(笑)。1回でもそうやって見せるとそれがスタンダードになってしまうので、できないことは一切やらない、それが僕のルールですね。
あと、子供とはできるだけいろいろな思い出を作りたいっていう思いがあります。自分自身、子供の頃はラグビーに夢中だったので、家族との思い出を作れなかったんです。なので、年に一度、子供が春休みの時には、家族で旅行に出掛けるようにしています。ここ何年かは、子供たちの好きな東京ディズニーランドに行くことが多いので、いつか世界中のディズニーランドを制覇してみたいですね。
 
― 普段はどういう所に出掛けられるんですか?
いろいろ行きますよ。テーマパークに行ったり、子供を自転車に乗せてランニングがてら出掛けたり…。今度、次女と2人で映画を見にいく約束をしています。リフレッシュするという意味でも、タイミングが合えばいろいろ出掛けるようにしているんです。でも、あまりにも子供を連れ出してばっかりいると、夏休みの終盤には「パパ、そろそろ宿題やらないと」ってクレームが入ったりもするんですけどね(笑)。それくらい今を大事にしたいんです。その結果としてなんですが、嫁さんも自分の時間が作れているのかな…と。専業主婦なので、四六時中、子供と一緒にいるのは大変だと思うんですよね。なので、僕が子供と出掛ければ自然と一人になれるじゃないですか。とはいえ、自分が子供の時に残せなかった家族との思い出を作るために好き勝手やっているだけなので、それが彼女たちのためになっているかは聞いてみないと分からないですけどね。

ラグビーは“自分の居場所を見つけられるスポーツ”

― 2019年にはワールドカップ、2020年には東京オリンピックが開催され、ラグビーも注目の競技のひとつだと思います。大畑さんが考えるラグビーの魅力を教えてください。
例えば、身長が2メートルの選手もいれば160センチくらいしかない選手もいる。僕みたいに足が速い選手もいれば、スピードはなくてもパワーがある選手もいる。それぞれが適材適所で輝けるスポーツなので、自分にとっての居場所を見つけられるのがラグビーの魅力です。そういった個人が集まってひとつのチームができるので、僕はラグビーを“社会の縮図”だと思っています。
ラグビーは自分よりも後ろにしかパスを出せません。チームにとって不利益な状況を作りながらも、ボールを前に運んで得点しないといけない。しっかりとした信頼関係がなければボールをつなげません。ただのボール、ただのパスではなく、信頼や尊敬、責任などが込められているからこそボールがつながって得点が生まれるので、パス回しなんかにも注目して見ていただければと思います。
ワールドカップは15人制で行い、選手同士の格闘技さながらのぶつかり合いを見ることができ、東京オリンピックでは7人制で行い、人数が少ない分、ボールやパス回しがよく見えて球技としての楽しみ方ができるなど、同じラグビーでもそれぞれ見どころも変わってきます。ルールが分からないからといって難しく考えずに、こういった点に着目してみるのもいいかもしれませんね。
 
― 朝の情報番組にもレギュラー出演されるなど多方面でご活躍中ですが、現在の活動についてや、今後の目標などを教えてください。
2019年に開催されるワールドカップが大きなテーマになっていて、メディアなどを通してラグビーというスポーツを日本の皆さんに知ってもらい、盛り上げていくための活動をしています。というのも、2016年にイギリスで開催された「ワールドラグビーアワーズ2016」で“ラグビー殿堂”として表彰いただいたんです。その時、ラグビーという素晴らしいスポーツを日本、そしてアジアに普及するとともに、ラグビーをグローバルスポーツにする使命を託されたと感じました。そのためにも、まずは日本で開催されるワールドカップをしっかりした形にしないといけない。次の世代にしっかりバトンを託すまでが僕の使命だと思っていますので、今の活動を通してラグビーをもっと盛り上げていきたいですね。

PAGE TOP