料理家 栗原心平さん Vol.2
毎日のことだからこそ、大切にしたい。
大切なのは”丁寧に作ること”とありがとう"のキャッチボール
ーーそれは、大切な人への感情表現でもあります。
プロフィール
栗原心平さん
食事という名のコミュニケーション
栗原さんは家族と食事することを大事にしているそうですね。
はい、できる限りそうしています。これはすごく単純な話で、食事のとき以外に家族で座って会話する時間って、まずないんですよね。その時間は、食卓でしかつくれないと思うんです。例えば、午後の3時になると、お茶を飲みに集まるご家庭ってないじゃないですか(笑)。 なので、食事が“家族とのコミュニケーション”そのものになっています。会話といっても、たわいのない話ですけどね。僕はもともと朝ごはんを食べなかったんですけど、朝しか一緒に食事できないときもあるので、子供ができてからは朝食をとるようになりました。
―― 食卓がコミュニケーションの場になっているというのは、栗原さんの子供時代からの習慣によるものなのでしょうか。
高校時代、母(料理家の栗原はるみさん)が仕事でいないときは僕が父のご飯をつくるのが日課になっていたんです。その頃は遊びに来ていた友だちの分もつくって一緒に食事をしていました。父も母もワイワイするのは好きで、家にお客さんを呼ぶ機会がとても多く、食卓は賑やかなことが多かったです。いまは両親とは別の家で暮らしていますが、共通の知人を招いて年に数回パーティーをしています。栗原家はみんなお酒が好きなので、「お酒を飲むなら大人数でワイワイしたほうが楽しいよね」というのが原点にあるのだと思います。
「おいしい」から始まる、幸せの循環
――料理が毎日の作業のようになってしまっている人もいると思いますが、つくることへのモチベーションを保つためのアドバイスがあればお願いします。
ささいなことだと思うんですけどね。例えば、うちでは僕がご飯をつくるときは妻に「今晩、なに食べたい?」って聞くようにしているんです。そうすると、「なんでもいい」って言うんですよ。これがまず大問題で(笑)。偏った考え方かもしれないですけど、いままでたくさんの料理をつくってきたのに、特別これを食べたいというものがないんだって残念になる。 あと、世の旦那さんは、奥さんに料理をつくってもらうことが当たり前になってしまって、「ありがとう」という日々の感謝を言葉にできていないかもしれませんね。そうすると、つくる側も張り合いがなくなってしまうことはあると思います。
―― “つくる人”と“食べる人”の関係性が大切なのですね。
日常のことですから、「おいしい」「ありがとう」と言葉にして表すことは大事ですよ。僕自身は小学生の頃、日曜日に朝ごはんをつくるのが日課になっていたのですが、両親が「おいしい」と言ってくれることで、ご飯をつくることの喜びを知りました。
「おいしい」というのは、丁寧に料理してこそ出る言葉でもあると思うんですよね。例えば、お味噌汁をつくるにしても、自分でだしをとる手間を掛ければ、その分、必ずおいしくなります。忙しくて毎日時間をかけられない人は、週末にまとめてだしをとっておけば2~3日は持ちますし、それ以降は市販のだしにする。そうやって、手間を掛けてつくった料理をおいしいと言ってもらえることで、料理への意欲が上がる。そうして、少しずつ、いいペースができていくといいですよね。
つくる・食べるは、暮らしの大事な一部分
――男性の方で久々に料理をつくろう、という人にオススメの料理はありますか?
男の人って、だいたいは道具をそろえた時点で満足しちゃうんですよね(笑)。 まずは、餃子からトライするといいと思いますよ。なにを入れてもそんなに失敗しませんし、極端な話をすれば皮を上手に包めなくても食べられるし、失敗した理由もわかりやすいんですよね。
――失敗した理由がわかれば着実にステップアップできますし、成功する喜びを感じられますね。
男の人は、そういうことに対して純粋だと思います。家族においしいと言われれば、それだけで自分で得意料理だと言えますし、「何曜日は僕が餃子をつくるよ」となれば理想的ですよね。奥さんも喜ぶし、家族の関係性もよくなると思います。
書籍紹介
タイトル:『お腹がすいたら 「すぐ麺」レシピ』
電子書籍にて好評発売中
著者:栗原心平
出版社:(株)コルク
定価:800円(税別)
書籍情報
うどんで、そばで、中華麺で、 そうめんで――
さまざまな調理法で組み合わせ無限大!
家にあるもので、簡単&手早くできる「すぐ麺」のレシピ本です。
手軽に食べたいとき、人が来たとき、冷蔵庫の食材をうまく使い切りたいときなど、さまざまなシチュエーションで大活躍の20品を掲載。
麺の上手なゆで方や、おいしく食べる工夫など、知っておきたい情報が盛りだくさん!
今日から取り入れたくなるような、暮らしを素敵に彩るアイデアをご紹介。いつもの毎日にちょっとしたワクワクを。