Interview

クリエイティブユニット tupera tuperaさん Vol.3

”子供の目線”をもつことで、大人が楽しむアートの世界

目線を変えるだけで、日々の暮らしはぐっと面白くなる。

絵本やイラストの制作をはじめ、ワークショップを行ったり、
テレビ番組のアートディレクションを担当するなど幅広く活躍されている
「tupera tupera」の亀山達矢さんと中川敦子さん。ご夫婦である2人のアトリエで、
アーティストならではの暮らしの視点についてお話を伺いました。
そこには日常や子育てを楽しむヒントがたくさん散りばめられています。
プロフィール

tupera tupera(ツペラ ツペラ)

亀山達矢さん、中川敦子さんご夫婦によるユニット。2002年より活動を開始し、絵本、イラスト、工作、ワークショップ、舞台美術、アニメーションなど、さまざまな分野で活躍中。『しろくまのパンツ』(発行:ブロンズ新社)で第18回日本絵本賞読者賞を受賞したほか、『パンダ銭湯』(発行:絵本館)では第2回静岡書店大賞を受賞するなど、数々の受賞歴を持ち、海外のさまざまな国で翻訳出版されている。NHK Eテレの工作番組『ノージーのひらめき工房』ではアートディレクションを担当。

公式サイト:http://www.tupera-tupera.com/

絵本や工作を楽しむのに年齢は関係ない

――色合いはもちろん、仕掛けやストーリーも人気の絵本ですが、そのアイデアはどのように生まれているのですか?
 
亀山達矢さん(以下、亀山):夫婦でやっているのでお互いの掛け合いももちろんありますけど、編集者やデザイナーなど、携わったすべての人との化学反応で生まれてくる感じですね。会話やその場のテンションがきっかけになったり、提案されたことを自分なりに面白くひねったり、人とのさまざまな関わりを楽しみながらものづくりをしています。
 
中川敦子さん(以下、中川):そんな過程があるからか、コミュニケーションツールとして使っていただけることも多いです。例えば『かおノート』(発行:コクヨ)なんかは大人も楽しんでくれていて、出来上がったものを見せにきてくれる方も多いですよ。
 
亀山:ワークショップに持ってきて、「すごいでしょ」って自信満々に見せてくれるんです(笑)。「『かおノート』は私が先に考案した」って言いながら、続編を楽しみにしてくれているおじいちゃん。ワークショップで絵本の読み聞かせをした僕にダメだしするおばちゃんとかもいて、僕らの作品が彼らのものになっているなって。嬉しいですよね。『かおノート』に限らず、絵本でもなんでも10人いれば10通りの楽しみ方があると思うので、「子供のもの」とくくらずに、大人にも楽しんでほしいです。

――では、特に子供を意識して作られているわけではないのですね。

中川:はい。絵やストーリーを楽しむのに年齢は関係ないと思うので、子供向けという感覚でものづくりはしていないですね。
 
亀山:絵本セラピーといって大人が大人に使うこともあるし、感じ方も人によると思うし、対象を決めちゃうのはつまらないじゃないですか。だからワークショップも参加者の年齢制限を設けていません。大人も子供も関係なく、やりたい人全員でやる。子供は「楽しそう! やってみたい!」と思ったら勝手に取り組むから、無理にやらせなくてもいいんです。それよりも、大人が楽しまなきゃダメ。保護者として傍観せずに、全力で取り組む姿を見せなきゃダメなんです。
 
中川:子供がなにかを「作りたい」って言いだしても、はさみや色鉛筆を準備するのは大人ですよね。子供のために絵本を買うときも選ぶのは大人なので、大人が“子供の目線”を持つことって大事だと思います。
 
亀山:その目線を持てれば子供の個性を引き出すことだってできるし、大人も一緒に楽しむことができる。家が汚れることを気にする生活よりずっと面白いですよ。

書籍情報
タイトル:『かおノート』
発売中
作:tupera tupera
発行:コクヨ
定価:1,000円(税別)

子供の”創造力”と”やりたい気持ち”を伸ばせる環境が大事

――そんなおふたりの子育てにすごく興味を抱くのですが、何か心掛けていることはありますか。

亀山:普通です(笑)。よく勘違いされるんですよ、「服もおもちゃも手づくりなんでしょ」とか。でも、全然そんなことない。
 
中川:ごくごく普通です(笑)。子育てをはじめたばかりの頃は、与えるおもちゃのこだわりとかもあったんですが、いろんなものを見てたくさんの選択肢を持てたほうがいいと思って、今は子供が興味を持ったものを大事にしています。
 
亀山:自分がここまでやってきたのもいろいろなものを見てきたからだと思うので、親の選別でシャットアウトしちゃうのもどうかなって。だからね、おもちゃ箱とかぐちゃぐちゃなんですよ。人形の手にほかの人形の首がついてたり、いろんなおもちゃを組み合わせて遊んでいたり(笑)。でも、その創造力がいいなぁ、すごいなぁって思いますね。
 
中川:下の子は最近『ノージーのひらめき工房』にハマっていて、見ながら「作りたい」って言うようになりました。そんなとき、家でワークショップ用にストックしている空き箱とかちょっとした材料をすぐに出してあげられるので、子供がやりたい気持ちになったときにそれができる環境を整えておくことは親の仕事として大事だなと改めて実感しました。
 
亀山:そうだね。大人は準備だけしてあげたら、あとは見てればいいと思う。面白いから(笑)。

子供の絵は個性豊かなインテリア

――こちらのアトリエにはステキな作品がたくさん置かれていますが、ご自宅はいかがですか?

亀山:子供の絵はたくさん飾っていますけど、自分たちの作品はないですね。子供って作る過程を楽しんでいるから、出来上がったものにあまり思い入れはないじゃないですか。だから、ぐちゃぐちゃにしちゃう前に飾ってあげて、あとは大人が目で楽しむのがいいと思います。
 
中川:子供の絵は傑作なので、インテリアにもなりますよね。マスキングテープを使うと壁も絵も傷つかないので、気にせずに飾ることができて便利ですよ。

――ご自宅はお子さんの展示場なんですね。

中川:私たちはごくごく普通に子育てをしていますが、仕事の関係でイベントや展覧会に親子で行く機会も多いからか、うちの子供たちは自分の作ったものを「作品」と呼んで、気に入ったものは飾ってほしがるんです。インテリアどころじゃない勢いで壁をどんどん埋めていますよ(笑)。
 
亀山:子供の絵は「なんだこれ!」っていうのもあって、すごく面白い。あと、子供が絵を描いている横で一緒に描いていたらいいものができたり、子供の様子を見ながらアイデアを思いついたりすることもあるので、子供と過ごすプライベートの時間はひとつのきっかけとして愉快だなって思います。
 
中川:子供が「やりたい!」という気持ちになるのは突然で、親としては「え! このタイミングで今から工作?」という気持ちになることも多いですが、面倒くさがらずに材料と道具だけでも出してあげると、一生懸命作ってそれなりの作品が出来上がるんですよ。このアトリエにも飾っています。そういう創造力は大切にしていってあげたいからね。
 
亀山:子供の作品と同じで、子供の成長や自分たちの仕事の方向性も、あえてビジョンを描かないで「どうなるかわからない」ほうが面白いよね(笑)。

書籍情報
タイトル:『かおノートモンスター』
発売中
作:tupera tupera
発行:コクヨ
定価:1,000円(税別)

書籍紹介
「アートなシールブック」として大ヒットした絵本『かおノート』シリーズの最新作! 第3弾となる今作は、『かおノートモンスター』。付属の目、鼻、口などのパーツシールを貼ったり、ペンや色鉛筆で描き加えたりして、自分だけのモンスターを完成させてください。友だち同士や親子など、作った顔を見せ合っても楽しいですよ。子供から大人まで楽しめるおもしろ絵本です。

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