Interview

映画監督 神山健治さん Vol.8

自分だけの表現欲求を貫くのではなく、たくさんのスタッフのアイデアが加わること。それが映画をつくる楽しさです。
プロフィール

神山 健治(かみやま けんじ)

映画監督。背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。TVアニメ「攻殻機動隊 S.A.C.」で監督とシリーズ構成を兼任した。「精霊の守り人」でも再び監督とシリーズ構成を担当。オリジナルTVシリーズ「東のエデン」では原作も務め、映画『009 RE:CYBORG』においては初のフル3D劇場作品を監督した。

始まりは「自分の娘に見せたい映画」でした

――『ひるね姫』は、2020年・東京オリンピックの3日前という近未来が舞台で、主人公は平凡な女子高生という、今までのSFアクションや社会派のテーマを扱った作品とは違うタイプの映画ですね。

今回はプロデューサーの、「自分の娘に見せたい映画を作ったらどうだろう」という提案をきっかけに企画がスタートしました。これまでの作品では、現実の社会で起きている現象から個人の話にしていくという形でストーリーを作り上げていましたが、『ひるね姫』では、逆に個人から話を構築していき、その中から何が見えてくるかという形でストーリーを展開させていきました。

――主人公のココネは父のモモタローとは、直接話す代わりにメールでコミュニケーションをとっています。神山監督は普段、娘さんとはどのようにコミュニケーションを取られていますか?

実はうちもメールでやり取りしています。娘からメールが来て、それについてこちらから質問を返したりするのですが、“用件は伝えた”と言わんばかりに返信が来ないこともあります(笑)。「今、○○に着きました」と押さえるべきところはキチンと伝えてくれるので、なかなか顔を合わせる時間が取れなくても、大事なことは共有できているといいな、とは思っています。

アニメーション作品をつくる楽しさは、たくさんの人の力を借りること

――アニメーション制作の魅力はどこにあると感じていらっしゃいますか?

自分が表現したいと思うことだけで突き進むのではなく、いろいろな人の手を借りて、どれが一番いいのかというアイデアを出し合い、作り上げていくところでしょうか。全部一人でやるというのが究極のスタイルなんだと思いますし、もしかしたらマンガ家さんはそれに近いのかもしれません。でもアニメは、ある種、スタッフの力を借りながら作っていく表現方法だと思っています。

――外国人スタッフも参加していたそうですが、さまざまな人と仕事をしていく上で心がけていることは何かありますか?
大勢で仕事をするというのは、よさもありますが、それと同時に難しさもあります。すべての人が「よし、任せとけ! 望み通りのものを作ってやろう」となればいいのですが、残念ながらそうはなりません。それができれば簡単ですし、誰でも映画を作ることができます。
それぞれがクリエイターとしてプライドを持って取り組んでいますので、こちらがお願いした通りではなく、「別の方法でやりたい」と思う場合もあったりします。そんな時に相手を説得し、納得させて、最良の力を発揮してもらうのが監督の仕事だと思っています。監督業だけでなく、ほかの仕事でもスタッフをまとめるポジションにある人は、そういう意識を持つことが大事なんでしょうね。

若い人にも大人にも楽しんでほしい作品

――『ひるね姫』の見どころを教えてください。

『ひるね姫』は、話が進むにしたがって徐々にストーリーに散りばめられた“仕掛け”が見えてきます。そして、最後には観ていただいた皆さんが「そういうことだったのか!」と、腑に落ちるというつくりになっています。最後まで目を離さずご覧ください。

――どんな人たちに見てほしいですか?

ココネと近い年齢の人にはもちろん、ココネの父親・モモタローぐらいの世代の人にも楽しんでほしいと思っています。家族の心の中にいる自分や、逆に自分の心の中にある家族といった「自分の中の他人」を意識し、そこに大事なものが眠っているということに気付いていただけたらうれしいですね。

『ひるね姫~知らないワタシの物語~』

岡山県倉敷市で父親と二人暮らしをしている森川ココネ(声:高畑充希)。何の取り得もない平凡な女子高生の彼女の特技といえばどこでも眠れることくらい。彼女は最近、寝る度に同じ夢を見る。それは、彼女が小さい頃に父親(声:江口洋介)から語り聞かされた自作のおとぎ話。父親の逮捕をきっかけに謎を追う彼女。それは彼女にとって思いがけず、自分を見つける旅でもあった。
『東のエデン』『精霊の守り人』『攻殻機動隊S.A.C.』など、重厚な世界設定の中で人間ドラマを描いてきた神山健治が、原作・脚本・監督を務める本作。監督初となる劇場オリジナルアニメーションのモチーフは「夢」で、夢と現実が交錯する世界を描いた。
 
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2017 ひるね姫製作委員会

PAGE TOP