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家を売却する流れをわかりやすく解説!注意点や高く売るためのコツも紹介 Vol.17
家を売却する際は事前準備が特に重要になってきます。何もわからない状態で不動産会社に売却を依頼してもスムーズな取引は望めません。あらかじめ家を売却する流れを把握しておき、戦略を立てておくことが大切です。
この記事では、家を売却する流れをわかりやすく解説します。高く売るためのコツもわかるようになるでしょう。
目次
家を売却する方法は3つある
家を売却する方法は、「仲介」「買取」「リースバック」の3種類があります。それぞれの方法には特有のメリットとデメリットがあり、売却の目的や事情などに応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
仲介売却
仲介売却は不動産会社と媒介契約を締結し、家の買い手を探してもらう売却方法です。仲介で家を売却するのが一般的な方法のひとつで、あらゆる不動産の売却に適します。
家を売るには買い手を探す必要がありますが、一般の方が独力で家の買い手を探すのは容易ではありません。不動産会社に依頼することで、不動産会社独自のネットワークやサービスを駆使して買い手を探してもらえます。
仲介による売却は適正な市場価格(相場)で取引されることが多く、買取やリースバックよりも高値で売れる可能性があります。これが仲介の大きなメリットであり、少しでも高く家を売りたい方に向いています。
ただし、家の状態や時期によっては買い手を見つけるのに時間がかかることもあり、すぐに売却できる保証はありません。仲介による売却は、時間はかかってもいいので、なるべく高く家を売りたい方に適しています。
不動産買取
不動産買取は、不動産会社に家を直接買い取ってもらう売却方法です。仲介による売却は家の買い手を探してもらう必要がありますが、買取では不動産会社が買主となるため、買い手を探す必要がありません。
買い手を探すための販売活動が不要になるため、早ければ1ヵ月程度で現金化できることもあります。何らかの事情ですぐに現金が必要になり、短期間で家を売却したい方に不動産買取は向いています。
ただし、買取価格は相場よりも低くなる傾向があり、仲介のように市場価格で売却できる可能性は低いです。買取価格は不動産会社によって異なりますが、一般的には市場価格の7~8割程度になるといわれています。
仲介で売却するよりも買取価格は低くなりますが、不動産会社が買主のため仲介手数料はかからず、売買契約内容と引き渡した不動産が合っていない場合、売主が負う契約不適合責任も免除されるケースが一般的です。
不動産買取は市場価格よりも、とにかく早く家を売って現金化を図りたい方に適します。
リースバック
リースバックとは、リースバックを扱う不動産会社に家を売却して現金を受け取り、その後、不動産会社と賃貸借契約を締結し、賃借人として売却した家に住む仕組みです。
この方法を利用すると仲介での売却活動時のように、不動産ポータルサイト等への掲載はされないため内密に売却できるうえ、売却後もこれまでと同じように住み続けることができます。まとまった現金が必要なときや、引越しを避けたい場合などに最適です。
リースバックは遺産分割が難しい不動産を現金化できるため、一定の条件下では相続対策に適します。また、売却によりまとまった資金を手に入れることができるため、生活資金を確保しつつ、住み慣れた家に住み続けたい高齢の方が利用するケースが多いようです。なお、不動産会社が所有者になるため、固定資産税や建物の火災保険料などの負担はなくなります。
ただし、不動産買取と同様に売却価格は相場よりも低く、少しでも高く家を売りたい方には向きません。毎月家賃(リース料)が発生することも考慮する必要があります
リースバックを検討する際は、賃貸借契約期間や買い戻しの可否、家賃の金額なども確認し、目的や状況に応じた選択をすることが大切です。
仲介で家を売却する流れ
ここでは、最も一般的な売却方法である仲介で家を売却する流れを解説します。大まかな流れを頭に入れておくと、家を売るときに役立つかもしれません。
家の売却に必要な書類を準備する
仲介に限ったことではありませんが、家を売却する際は、登記識別情報(権利証)や本人確認書類など、数多くの書類が必要になります。早めに準備しておくとスムーズですが、必要書類は仲介を依頼する不動産会社が教えてくれるため、不動産会社へ問い合わせ後でも問題ありません。
仲介で家を売却する際に必要な主な書類等は以下のとおりです。
~必須書類~
・登記事項証明書(登記簿謄本)
・登記識別情報(権利証)
・公図(戸建て・土地の場合)
・土地測量図・境界確認書(戸建て・土地の場合)
・建物図面・各階平面図(戸建て・マンションの場合)
・間取り図(戸建て・マンションの場合)
・本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)
・印鑑証明書(実印も必要)
・住民票(購入時と住所が変わっている場合)
・建築確認済証・検査済証
・固定資産税・都市計画税納税通知書(直近1年分)
・固定資産評価証明書
・抵当権抹消書類(住宅ローン利用の場合)
・マンションの管理規約・長期修繕計画・総会議事録(マンションの場合)
・売買契約書
~必要なもの~
・預金通帳・キャッシュカード(売買代金の受け取り時に必要)
・家の鍵(物件の引渡し時に必要)
~任意書類(手元にあれば用意する)~
・物件購入時のパンフレット
・物件購入時のパンフレット
・耐震診断報告書
・アスベスト使用調査報告書
・物件購入時の売買契約書
・ローン残高証明書
・建築工事請負契約書
・確定申告書
これらの書類等を揃えておくことで、家の売却手続きがスムーズに進みます。不動産会社と相談しながら、必要書類を早めに準備しておくとよいでしょう。
家の売却価格の相場を調べる
不動産会社に相談する前に、自分自身で家がどの程度の金額で売却できるかを調べておくことは非常に大切です。
自分で市場価格(相場)を調べることで、不動産会社から提示される査定額が適正かどうかを判断できます。市場価格を理解しておくと、不動産会社が提示する価格が高すぎる、または低すぎると感じた際に適切に対応できます。
不動産は一般的な商品とは異なり、定価という概念は存在しません。不動産の価格は基本的に需要と供給のバランスによる影響が大きく、売り手と買い手が合意した金額が売却価格になります。納得のいく金額で家を売るためには、自分自身で相場を調べ、把握しておくことが必要です。
各不動産ポータルサイトや国土交通省の不動産情報ライブラリなどを利用すると、自分自身で相場を調べることができます。
売却する家と同じエリアで同じくらいの広さと間取りの物件の成約事例を検索すると、おおよその相場価格がわかります。なお、販売価格と成約価格は異なり、成約価格は実際に売れた金額です。また、時期によって価格に差が出ることがあります。
不動産会社を選ぶ
次は仲介を依頼する不動産会社を選びます。仲介を依頼する際は物件の査定を受けることになりますが、信頼できそうな不動産会社をあらかじめ選んでおいてから査定を依頼するのがおすすめです。
不動産一括査定サイトを利用すると複数の不動産会社に一括で査定を依頼できますが、どのような不動産会社が査定をするのかがわかりません。望んでいない不動産会社からしつこく営業をかけられることもあるため注意しましょう。
不動産会社を選ぶポイントは、物件が所在するエリアに精通していることや、これまでの実績、利用者からの評判、宅地建物取引業の免許の更新回数などです。
なお、不動産会社は無理に1社を選ぶ必要はなく、査定依頼・問い合わせの段階であれば同時に2社以上に依頼できるため、信頼できそうな会社を2~3社選んでおきましょう。
不動産会社に査定を依頼する
仲介を依頼する候補の不動産会社が見つかれば、不動産会社に査定を依頼します。査定方法は、簡易査定(机上査定)、訪問査定の2種類があり、まずは簡易査定で大まかな売却価格を把握してから訪問査定を受けるのが一般的な流れです。
簡易査定とは、不動産会社の担当者が現地に赴かずに物件の築年数や面積、周辺の取引事例などのデータに基づいて机上で査定をする方法です。現地調査を行わないため数日で査定できますが、物件の詳細な状態を反映しないため、査定の精度は訪問に比べるとあまり高くありません。
訪問査定とは、不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、物件の状態を確認したうえで査定を行う方法です。詳細に調査するため、査定価格は実際の売却価格に近くなります。また、売却に関する具体的なアドバイスも受けることができます。
最終的には、市場調査や訪問査定の結果に基づいて、最初の売り出し価格を決定します。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定を受けてみて、仲介を依頼する不動産会社が決まれば、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは不動産会社に仲介を依頼する際に締結する契約のことで、以下の3種類があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
①一般媒介契約
②専任媒介契約
③専属専任媒介契約
一般媒介契約では複数の不動産会社に依頼できるのに対し、専任媒介契約・専属専任媒介契約では1社しか依頼できないことが最も大きな違いです。
一般媒介契約では、複数の不動産会社が同時に販売活動を行うため競争が起こり、物件によっては早く買い手が見つかる可能性があります。しかし、自社で成約できる確証がないためコストをかけづらく、販売活動が消極的になってしまう可能性があります。
一方、専任媒介契約や専属専任媒介契約では、依頼された不動産会社は自社の独占物件となるため、 積極的に販売活動を行います。
依頼者への連絡の頻度は、一般媒介契約は任意であるのに対し、専任媒介契約は2週間に1回以上、専属専任媒介契約は1週間に1回以上の頻度で連絡しなければならないため、より積極的な販売活動が期待できるでしょう。
また、一般媒介契約と専任媒介契約は売主自身で買主を見つけることができますが、専属専任媒介契約は売主自身で買主を見つけることはできません。
以上のことから、積極的な広告宣伝や販売促進が期待できるため、専任媒介か専属専任媒介で契約を結ぶことをおすすめします。
販売活動を開始する
不動産会社と媒介契約を締結すると販売活動が開始されますが、販売戦略が明確でないと効率的に売却が進まず、買い手が見つかるまでに時間がかかってしまう場合があります。
販売戦略を立てる際は、物件のアピールポイントを見つけ、ターゲット層を明確にするのがポイントです。実際に住んでいる人にしかわからない物件の魅力もあるため、気づいたことがあれば不動産会社に伝えましょう。
市場調査や査定価格を参考に売り出し価格が決まれば、不動産会社は効果的な広告宣伝や独自のネットワークを駆使して販売活動を開始します。物件の魅力が伝わり、売り出し価格が市場価格に合致していれば、買い手は早く見つかるでしょう。
専任媒介契約や専属専任媒介契約を締結していると、定期的に進捗状況が報告されます。
内覧者を迎える準備をして対応する
購入希望者が見つかれば、不動産会社の担当者と一緒に家を見学に訪れます。これを内覧や内見といい、売主は内覧者を迎える準備をして対応する必要があります。
売却活動において内覧は非常に重要です。内覧での家の印象がよければ、早く家が売れる可能性が高まります。売主は内覧に備え、家を掃除して清潔な状態にしておくことが大切です。
特に水まわりとリビングは入念にチェックされるため、必要であればハウスクリーニングなども行っておきましょう。不動産会社によっては、ハウスクリーニングを売主向けの売却サポートサービスの一環として用意している場合がありますので、有効活用しましょう。玄関も家の第一印象を決めるため、きれいに片付けておきます。
内覧には可能であれば売主も立ち会った方がよく、その際は売主の態度も重要です。売主は購入希望者に必要な情報を説明する義務があり、内覧者から質問されたら誠実に回答し、よい印象を与えることが早期売却につながります。
買主と売買契約を締結する
販売活動の結果、買主が決まれば、売主と買主の間で売買契約を締結します。売買契約時には、売主は買主から売却金額の10〜20%程度の手付金を受け取るのが一般的です。
不動産取引において手付金は「解約手付」の性格を持ち、売主は受け取った手付金の倍額を買主に返還すると売買契約を解除できます。また、買主は支払った手付金を放棄すると売買契約の解除が可能です。
なお、買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合に契約を無条件で解約できる「ローン特約」が契約条項に入っていれば、買主は住宅ローンの審査に通らず、住宅ローンの利用ができなくなった場合に契約を白紙解約できます。
また、売買契約締結後、引渡し前に物件が損傷・滅失した場合や、引き渡した物件が契約内容に適合しない場合も契約を解除されることがあります。
売買契約が締結できれば、売主は不動産会社に仲介手数料の50%を支払うのが一般的です。残り50%は、物件を買主に引渡す際に支払います。
決済・引渡しを行う
売買契約から1〜2ヵ月程度経過すると、売買代金の残金を受領し、売主は買主に家を引渡します。売買代金の支払い(決済)を行う場所は、買主が住宅ローンを利用する場合は、借り入れをする金融機関の店舗で行うのが一般的です。買主が住宅ローンを利用しない場合は、売買代金の出金先の金融機関や不動産会社、司法書士の事務所で行われることがあります。
なお、所有権移転登記や抵当権の抹消手続きが必要となるため、決済の場には司法書士が立ち会います。
売主に残代金と税金の清算金などが支払われると、売主は買主に物件の引渡しを行います。物件の引渡しは、家の鍵や管理規約(マンションの場合)などを手渡し、売買物件引渡確認書に証明捺印するなどの手続きを行うと完了です。
物件の引渡しが終わった後は、不動産会社に仲介手数料の残り50%、司法書士に規定の報酬を支払います。
金融機関の店舗での手続きが終わると、司法書士は法務局に赴いて、所有権移転登記や抵当権の抹消手続きを行います。登記手続きが完了するまでには1~2週間程度かかり、登記手続きが完了後、登記完了書類を受け取ると一連の不動産売却は完了です。
確定申告をする
家を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、原則として確定申告が必要です。家を売却して利益が発生するケースとして、購入時よりも地価が上昇し、売却価格が購入価格を上回る場合などが該当します。
譲渡所得の計算式は次のとおりです。
譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用
譲渡価額:家を売却した価格
取得費:家を購入したときの費用(購入価格、購入時の諸費用)
譲渡費用:家を売却するためにかかった費用(仲介手数料、登記費用など)
譲渡所得には物件の所有期間に応じて所得税(所有期間が5年超の長期譲渡所得は15%、所有期間が5年以下の短期譲渡所得は30%)と住民税(長期譲渡所得は5%、短期譲渡所得は9%)、復興特別所得税(所有期間に関係なく2.1%)がかかり、確定申告の手続きが必要です。
確定申告とは、1年間の所得に対する税額を計算し、納付すべき税額を国に申告する手続きです。家を売却して譲渡所得が発生した場合、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。
なお、居住用財産(マイホームなど)を売却した場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用を受けると、譲渡所得から最高3,000万円まで控除されるため、譲渡所得が3,000万円以下の場合、実質的に税金はかかりません。
3,000万円特別控除を適用するためには、確定申告が必要です。
買取で家を売却する流れ
仲介ではなく、買取で家を売却する流れは次のとおりです。
①家の売却に必要な書類を準備する
②家の売却価格の相場を調べる
③不動産会社を選ぶ
④不動産会社に査定を依頼する
⑤不動産会社と売買契約を締結する
⑥決済・引渡しを行う
⑦必要があれば確定申告をする
仲介による売却との大きな違いは、不動産会社が買主になるため、販売活動のプロセスが不要なことです。内覧者を迎える準備をして対応する必要もなく、不動産会社の担当者が訪問査定や現況確認をする際の対応だけで済みます。
販売活動が不要なため、仲介よりも早く家を売却し、現金を受け取ることができます。また、仲介ではなく不動産会社が買主となるため、仲介手数料も不要です。
仲介の場合、必ずしも査定価格で売れるとは限りませんが、買取では査定価格での売却になります。したがって、複数の不動産会社に買取を依頼して、最も高値を提示した会社に売却するのが有効です。
ただし、査定価格=市場価格にはならず、一般的には市場価格の7~8割程度になります。
リースバックで家を売却する流れ
リースバックで家を売却する流れは次のとおりです。
①リースバックを扱う不動産会社に相談する
②査定を依頼する
③契約条件が提示される
④リースバックを扱う不動産会社と売買契約・賃貸借契約を結ぶ
⑤リースバックを扱う不動産会社から売却代金を受け取る
⑥リースバックを扱う不動産会社に賃貸借契約期間開始月より家賃(リース料)を支払う
リースバックは、正確には「セール・アンド・リースバック」であり、家を売ってから再び借りるという流れになります。
リースバック事業者に家を売る流れは買取と同じで、家の売却に必要な書類を準備することが必要です。また、買取と同じく、仲介よりも早く売って現金を受け取れますが、売却価格は市場価格よりも低めになります。
リースバック事業者に家を売却した後は、リースバック事業者と賃貸借契約を締結し、家賃(リース料)を毎月支払うという流れになります。
注意点として、賃貸借契約には普通借家契約と定期借家契約の2種類があり、定期借家契約だと契約が終了すると退去しなければなりません。定期借家契約を採用している事業者が多く、契約期間が満了になると再契約できないケースがあることに注意が必要です。
家を売却する際に必要となる諸費用
家を売却する際は、仲介手数料や印紙税など、さまざまな費用がかかります。諸費用の額は売却価格の4~6%程度になり、売却価格から諸費用を差し引いた金額が売主の手取りになります。家を売却する際に必要となる諸費用は以下のとおりです。
仲介手数料
仲介手数料は、不動産の売買を仲介してくれた不動産会社に対して支払う成功報酬です。仲介手数料は不動産会社が買主を見つけ、契約が成立した場合に支払うものであり、売買契約が成立するまでは発生しません。なお、不動産売却における査定や媒介契約は基本的に無料です。
仲介手数料は上限が宅地建物取引業法で定められており、法外な手数料を請求される心配はありません。上限を超える手数料を請求することは法律違反となり、不動産会社には厳しい罰則が科されます。不動産売買における仲介手数料の上限額は次のとおりです。
例えば、家を2,000万円(税抜)で売却したときの仲介手数料の上限は、2,000万円×3%+6万円+消費税で72万6,000円(税込)、3,000万円(税抜)なら3,000万円×3%+6万円+消費税で、105万6,000円(税込)が上限です。
印紙税
売買契約書を作成する際には、収入印紙を貼って印紙税を納付する必要があります。印紙税とは、法律で定められた特定の文書に課税される税金です。不動産売買契約書は「課税文書」に該当するため、紙で作成した場合には収入印紙を貼って印紙税を納付しなければなりません。
ただし、電子契約書で不動産売買契約書を作成する場合は、印紙税はかかりません。印紙税が課税されるのは紙の契約書だけです。紙の契約書を1通作成するごとに、印紙税を納付する必要があります。
不動産売買契約書に対する印紙税の税額は、契約金額によって異なります。例えば、契約金額が3,000万円(税抜)の場合、印紙税は1万円(軽減税率適用後)であり、契約金額が6,000万円(税抜)の場合、印紙税は3万円(軽減税率適用後)です。
2027年(令和9年)3月31日までは軽減税率が適用されており、印紙税が本来の税額の約半分に軽減されています。軽減後の税額は以下のとおりです。
登記・抵当権抹消費用
家を売却する際には、登記関連費用がかかります。所有権移転登記に関しては、登記手続きにかかる費用は原則として買主が負担するため、売主は司法書士の報酬や登録免許税を負担する必要はありません。
ただし、住宅ローンの残債がある場合、抵当権抹消の手続きが必要で、登録免許税と司法書士の報酬が発生します。登録免許税は不動産1件につき1,000円で、土地と建物を合わせて2,000円です。
住宅ローンの返済事務手数料
住宅ローンの返済事務手数料とは、住宅ローンの残債を一括返済する際にかかる事務手数料を指します。家を売却する際は住宅ローンの残債を一括で支払う必要があり、売却代金の一部を充当することで一括返済をするのが一般的です。
住宅ローンの返済事務手数料は金融機関によって異なり、メガバンクは3万3,000円(税込)
程度に設定していることが多く、ネット銀行だと無料になるケースもあります。なお、残債に未払利息が発生している場合は、未払利息の支払いも必要です。
住宅ローンを借りる際に保証料を一括で支払った場合、保証料の一部は返金されますが、その際も事務手数料が発生することがあります。
譲渡所得税
譲渡所得税に関しては確定申告の解説の際に触れましたが、家を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税がかかる場合、保有期間や適用できる控除、売却額などによって税額は異なります。
譲渡所得税の計算式は次のとおりです。
譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)
課税譲渡所得=譲渡所得−特別控除
税額=課税譲渡所得×税率(所得税・住民税)
税率は所有期間によって異なり、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下だと短期譲渡所得、5年を超えると長期譲渡所得になります。
短期譲渡所得の場合の税率は、所得税は30%、住民税は9%で、長期譲渡所得の場合の税率は、所得税は15%、住民税は5%です。これに加えて、所有期間に関係なく復興特別所得税が2.1%かかります。
引越し費用
マイホームを売却する際には、通常、引越し費用が発生します。リースバックでマイホームを売却する際は引越しは不要ですが、仲介や買取だと新居への引越しが必要です。
なお、先に現在の家を売却し、その資金で新居を購入する「売り先行」の場合、売却後に新居が決まるまでの間に仮住まいが必要になることがあります。
仮住まいする場合は、現在の家から仮住まいに移るときと、仮住まいから新居に移るときの2回分の引越し代が必要です。
引越し代は、荷物の量と移動する距離、引越しの時期によって決まります。引越し代がどの程度かかるかは一概にはいえませんが、繁忙期(2~4月)に4人家族が同じ都道府県(移動距離50Km未満)に引越しする際は、15万円程度前後かかるでしょう。
家を売却する際の注意点
家を売却する際には、さまざまな注意点があります。事前に注意すべき事項を把握しておくことでトラブルを回避し、売却をスムーズに進めることができます。
家を売却する流れと期間を把握しておく
家を売却する際は、家を売却する流れと期間を把握しておき、余裕を持ってスケジュールを立てることが大切です。仲介で家を売却する際は、準備期間も含めると平均的には3~6ヵ月程度かかります。媒介契約を締結後は平均2~3ヵ月程度かかるといわれており、物件によってはなかなか売れない場合があります。
何らかの事情で急いで売りたい場合、1週間から1ヵ月程度で現金化できる買取のほうが適しているでしょう。
なお、現金化に3ヵ月程度の余裕がある場合は、「買取保証付き仲介」という選択肢も検討できます。買取保証付き仲介では、まず仲介によって市場価格での売却を試みますが、一定期間内(通常は3ヵ月程度)に売れなかった場合、不動産会社が物件を買い取ることを保証します。
それぞれの売却方法の流れや期間を把握しておき、売却の目的や事情に合わせてご自身にとって最適な売却方法を選択することが大切です。
住宅ローンの残債を確認する
家を売却するには、住宅ローンの残債を完済しなければならないため、住宅ローンの残債を確認しておくことが大切です。住宅ローンの残債は、返済予定表や残高証明書、インターネットバンキングのサイトなどで確認できます。
住宅ローンの残債を確認できたら、家の査定価格を調べ、どの程度の金額で売れるのかを把握します。住宅ローンの残債よりも査定価格のほうが高ければ、売却代金で住宅ローンを完済できる可能性が高いです。
一方、査定価格よりも住宅ローンの残債のほうが多い場合、つまり、家を売却しても住宅ローンの残債が出る場合は、貯金を使って不足分を補填するなど、何らかの方法で完済できないかを検討しましょう。
瑕疵のある物件の売却では告知義務がある
物件に瑕疵(かし)がある場合、売却する際に必ず買主に伝えることが必要です。瑕疵とは傷や欠陥のことで、例えば、家の天井から雨漏りがしている場合などは、その事実を買主に伝え、契約書にも明記しなければなりません。
例えば、雨漏りが発生していることを隠して売却した場合、売主は契約不適合責任に問われ、契約を解除されたり、損害賠償を請求されたりすることがあります。
物件の瑕疵としては、雨漏りのほかに、シロアリ被害や基礎のひび割れ、外壁の劣化、事故物件などが該当します。これらの瑕疵がある場合、査定時に不動産会社に伝えなければなりません。物件の瑕疵は減価要因になりますが、売主には告知義務があります。
売却時にリフォームすると費用の回収が難しい
売却時にリフォームをしておくと、高く売れる可能性があります。しかし、リフォーム費用の回収が難しく、結果的にそのまま売却したほうが得になる場合が多いといわれています。
リフォームすることで見栄えがよくなり、物件の価値が上がることはあります。しかし、すべてのリフォームが有効であるとは限りません。全面的なリフォームを行っても、かかった費用を売却価格に全て上乗せするのは難しいことが多いです。
また、購入後に自分好みにリフォームすることを前提に、中古の家を探している買主も存在します。リフォームを行わなくても売却できることは多く、費用対効果を考慮したうえで、不動産会社と相談しながら、最適な売却戦略を立てるべきです。
家を高く売却するためのコツ
家を高く売却するためには、いくつかのコツがあります。ここでは、家を高く売却するためのコツを解説します。
家が高く売れる時期を知っておく
家を少しでも高値で売却するためには、家が高く売れる時期を狙って販売活動を行うことが大切です。不動産の価格は需要と供給のバランスによって決まるため、不動産の需要が高まる時期に売ると高値で売れる可能性があります。
不動産の需要が高まる時期は2~3月です。この時期は4月の新年度に合わせて住宅を購入する人が増えるため、高値で売れる傾向があります。また、6~7月や9~10月も売却しやすい時期です。
仲介で家を売却する場合、準備からだと3~6ヵ月はかかります。2~3月に売れるようにするには、前年の10月頃から年末までに売却の準備を始めておかなければなりません。売りたい時期に合わせて準備を始めることが大切です。
内覧者に家の第一印象を良く見せる
家を高値で売却するには、内覧時によい印象を与えなければなりません。内覧者が最終的に家の購入を決めるのは内覧時であり、売主は内覧の準備や当日の対応に注意を払う必要があります。
改装やリフォームをした部位、周辺環境の魅力、特にアピールしたいポイントなどを整理しておき、内覧者に物件の魅力をアピールすることも大切です。
内覧時の売主の態度や姿勢も重要です。大事なお客様をもてなす気持ちで誠実な対応を心掛け、内覧者の質問の一つひとつに丁寧に回答することで、好感を持ってもらえます。
売主自身が売却相場を把握する
売主自身が売却相場を把握しておくと、売り出し価格や値下げ幅を決める際の判断材料になります。「相場=市場価格」であり、不動産は一般的に相場に近い金額で売れる可能性が高いです。
また、相場を把握しておくと、不動産会社が提示する査定価格の妥当性を判断する材料にもなります。相場とかけ離れた査定価格を提示する不動産会社は信頼できない可能性が高く、仲介を依頼する不動産会社を選ぶ際の判断材料になります。
不動産売却が初めてでも、調べてみれば大まかな相場はわかります。相場を調べてから不動産会社に相談することが大切です。
その他補足
その他、売却しやすくなるようなサービスを提供している不動産会社も存在します。
例えば、内覧時に物件の魅力を最大限に引き出すために、物件の内装や家具の配置、装飾などを調整して、モデルハウスのように部屋を演出するホームステージングと呼ばれるサービスを提供している不動産会社があります。
空室の写真がインテリア入りになるバーチャルインテリアと呼ばれるサービスを提供している不動産会社もあり、購入希望者は住んでからの生活がイメージしやすいでしょう。
また最近では、長期住宅設備保証が付帯している新築分譲マンションも増えています。保証期間中であれば、その保証を引き継げるため、売却する予定が早い段階でわかっていれば、こうした物件を選ぶのも一つの方法です。
家を売るための流れを把握して最適な売却方法を選びましょう
家を売るための流れは、仲介、買取、リースバックなどの売却方法によって異なります。仲介による売却には販売活動というプロセスがあるため、すぐに売れるとは限りませんが、相場、または相場より高値で売れる可能性があります。
買取とリースバックは販売活動が不要であるため、早期売却が可能ですが、仲介よりも高値で売るのは難しいです。売却方法によってメリットとデメリットが異なるため、目的に応じて最適な売却方法を選ぶことが大切です。
明和地所では、仲介、即時買取、買取保証、リースバック、買取保証付き仲介など、あらゆる売却方法に対応しております。お客様のご要望に合う最適な売却方法をご提案しますので、家の売却を検討されている方はお気軽にご相談ください。
宅地建物取引士 岡﨑渉
国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。
現在はフリーランスのWebライター・Webマーケターとして活動中。
不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターでは主に不動産・投資系の記事を扱う。
さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。宅地建物取引士・FP2級の資格を保有。
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