Vol.4 02「週末は田舎暮らし」実践中
Vol.4 馬場未織/南房総リパブリック 地域の魅力発信で、未来に里山つなぐ
02「週末は田舎暮らし」実践中
馬場未織/南房総リパブリック
馬場未織(Miori Baba)
1973年東京生まれ。日本女子大学住居学科修了後、建築設計事務所を経て建築ライターに。2007年から、家族5人とネコ2匹で東京都世田谷区と千葉県南房総市の二地域居住を開始。南房総の農家や、友人と共にNP0法人南房総リパブリックを設立し、地域創生となる活動を展開中。同法人理事長、著書に『週末は田舎暮らし』。
都心から1時間で別世界、緑の深い里山に
——二地域居住を考えた理由を教えて下さい。
馬場 最初のきっかけは、息子が虫や魚、植物など生きものが大好きだったことです。私自身は東京生まれの東京育ちで、大自然と接する生活の経験がありませんでした。でも、息子と一緒に虫探しをしていると面白い。そういうことを30歳くらいまで何も知らずに育ったんですね。
幼い息子のあくなき自然への探究心を、封じ込めてはいけないと、なるべく旅行では自然豊かなところに行くようにしていました。でも、毎回、訪問先を探すのもまどろっこしいなと感じ始めます。夫婦揃って実家は東京で、私たち家族には田舎というものがなかったので、拠点となる田舎の家が欲しいと思うようになりました。
「軽井沢に豪華な別荘を建てるわけではない。古い家が付いている安い土地でいい」。とセカンドハウスを最初に提案したのは、夫でした。そこからよなよなネットで検索したり、週末毎に不動産屋さんと下見にいったり。そのときにはまだ、費用のことなど軽視していたと後に気づきます(笑)。
馬場 意外なことに、対・移動時間効果や対・費用効果がよいことでした!
最初は神奈川方面で探していました。でも、都心から、行けども、行けども住宅地が途切れません。そして坪単価もなかなか10万円を下回らず、苦戦をしていました。そんなとき、神奈川県・秦野にある高台に巡り会いました。眼下に茶畑が広がる500坪で、丹沢山系を望むすばらしいロケーション。ただし土地だけで3000万円とかなりの予算オーバー。悩んだ末に買付証明を出そうと決意した矢先……、なんと他の人の手に渡ってしまったという残念な出来事が……。
それで一度は心が折れかかったのですが、気を取り直して方角を変え、アクアラインを渡って千葉方向に行って見ることにしました。当時はETC割引もなく、距離は短いのに片道3000円と高級高速道路でした。でもまあ1回くらい物見遊山で行ってみようかなと。
すると、自宅から車でたった1時間で、地底トンネルから出た途端にものすごく豊かな風景がありました。都心の喧噪の中から唐突に静かな田舎に来た感じ。この時間と距離で、こんなにも深い緑につつまれることができるとは、「なんという費用対効果のよさ!」と、驚いたのを覚えています。
土地の坪単価が神奈川の半額以下だったのも大きなポイントです。10万円×500坪と5万円×500坪では、差額が2500万円。毎週アクアラインで往復すると6000円×52週=31.2万円もかかります。だけど神奈川との差額を考えると約80年通ってもお釣りがくる……と、夫が試算。一気に房総半島が現実味を帯びてきました。
運命の土地に出会う
——農地を含む広大な土地の中にある、築100年以上の住宅を週末住宅に選んだ決め手は?
——二地域居住の背景には、広大な農地の手入れをする覚悟が必要だったということですね。そこから、里山を未来につなぐ活動「南房総リパブリック」へつながっていく。次回、「環境をつくる住まい」は、空き家や廃校の活用への展開する活動をお伝えします。
Vol.4 馬場未織/南房総リパブリック「地域の魅力発信で、未来に里山つなぐ」全3回
永く大切に住み続けるために、住まいのお悩みを解決するお役立ち情報や快適な住環境のヒントをお届けします。