くらしに役立つマネーコラム

住宅ローンは物件が決まる前でも申込める?仮審査を受けるタイミングも解説

監修者:新井 智美

 

■物件が決まってなくても住宅ローンの仮審査を受けてもよい?

住宅ローンは、高額な借入金を何十年にわたって返済することになります。貸し倒れとならないように、融資する金融機関は申込者の返済能力や担保となる物件をはかる審査を行います。仮審査と本審査の2つの審査を通過しなければ、住宅ローンを組めません。

金融機関によって異なりますが、住宅ローンの申込条件には「物件を購入する方」とあっても「物件の売買契約が済んだ方」とは書かれていないのが一般的です。つまり、住宅ローンの仮審査は、物件の売買契約を結ぶ前でも受けられるケースが多いです。

 

住宅ローンを申込むとまず仮審査に進みますが、通常はどのタイミングで仮審査を受けるかを解説します。

●住宅ローンの仮審査を受けるタイミング

住宅ローンの仮審査は、具体的に物件が決まってなくても受けられる金融機関が多いです。

しかし、多くの場合、購入したい物件が見つかったタイミングで仮審査を申込みます。

不動産会社やハウスメーカーで物件を見つけると、正式な売買契約を交わす前に「購入申込み」で購入の意思を示します。この「購入申込み」の後に住宅ローンの申込みを行うのが一般的です。

 

物件の売買契約前に住宅ローンを申込むのは、万が一金融機関の仮審査に落ちると、資金不足から物件の購入が難しくなる可能性を想定しているためです。

■物件が決まっていなくても住宅ローンの仮審査を受けるメリット

一般的なタイミングより早く、物件が決まっていない状態で住宅ローンの仮審査を受けるメリットを解説します。

●住宅ローンを組めるかどうかがわかる

住宅ローンの仮審査は簡易的な審査ですが、収入や信用情報、他からの借入れ状況などから、申込者が住宅ローンを組む基準を満たしているかが判断されます。

 

そのため、現時点での借入れ可否を把握してから、物件を選択できます。

●借入額の上限がわかる

いざ住宅ローンを申込んでみたら想定していたよりも借入可能額が少なく、マイホームの購入資金が足りない場合があります。

 

仮審査では、住宅ローンの借入希望額も記入します。金融機関は借入希望額をそのまま承認するか減額するかによって、借入額の上限を判断します。

●借入額の上限から物件を絞れる

仮審査では、収入と借入希望額、他からの借入れ状況などから、借入額の上限がわかります。

 

住宅ローンの借入額の上限がはっきりとわかれば予算が明確になり、物件探しがよりスムーズになるでしょう。

■物件が決まっていない状態で住宅ローンの仮審査を受けるデメリット

特定の物件が決まっていない状態で住宅ローンの仮審査を受けるデメリットも見ていきましょう。

●物件確定後、改めて仮審査をおこなわなければならない場合がある

物件が決まっていない状態では、資金計画もある程度ざっくりとしたもので仮審査をせざるを得ません。物件が決まると、物件価格・購入にかかる諸費用が固まるため、それを元に資金計画を立て直すことになります。物件確定後の資金計画が仮審査で承認を得ていた借入可能額よりも多くなりそうな場合や、自己資金比率が変わる場合は、再審査となることがあります。

 

物件が確定していなくても、ある程度資金計画を固めてから仮審査を申込むようにしましょう。

■住宅ローンの仮審査の概要

住宅ローンの仮審査は、本審査の前に行われる簡易的な審査です。住宅ローンを組むには仮審査、本審査ともに通過する必要がありますが、仮審査は住宅ローン契約の第一歩となる重要な審査です。

 

そこで、住宅ローンの仮審査の概要をお伝えします。

●仮審査の大まかな流れ

仮審査を行うためには、まず住宅ローンの申込みをします。金融機関ごとに少しずつ異なりますが、住宅ローンの申込みは仮審査の申込みを意味しており、申込み内容がそのまま審査されます。

 

最近はほとんどの金融機関がウェブサイトからの仮審査申込みに対応しており、パソコンやスマートフォンで24時間365日申込みが可能です。申込み方法は、ほかに郵送や来店があります。

●仮審査に必要な書類

住宅ローンの仮審査では、書類の提出を求めない金融機関もあります。ただし多くの場合、ネット銀行もしくはウェブサイトからの申込みに限定されており、通常どおり郵送や店頭で申込む場合には、所定の仮審査申込書のほか、次のような書類の提出が求められることもあります。

・本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)
・収入証明書類(源泉徴収票や確定申告書の写しなど)

また、他に借入れ中のローンがある場合には、償還予定表や残高証明書が必要です。

●仮審査で確認されるポイント

住宅ローンは高額なローン契約なので、金融機関は慎重に審査を行います。しかし、申込み直後から本格的な審査を行うと、必要書類の準備や提出などで申込者に負担がかかるほか、金融機関側も多くの項目を確認するのに時間を要します。
そのため、本審査の前に仮審査が行われます。仮審査では住宅ローンを組む基準を満たしているかについて、おおまかに判断されます。

 

審査基準は金融機関ごとに異なり一般に公表はされていませんが、返済負担率(収入に対する借入金の割合)を参考にする金融機関が多いです。

●仮審査の所要日数

仮審査の結果は数日以内、早ければ当日に結果がわかります。結果の通知は登録したEメールアドレス、電話などで行われます。

 

仮審査の結果には通常、「承認された日から180日」など有効期間が設けられています。物件が決まっていないタイミングで仮審査を通過しても、その後本審査への申込みが遅れると審査結果が無効になるので注意しましょう。

■住宅ローンの仮審査に備えるポイント

住宅ローンの仮審査は、本審査につながる大切な手続きです。そこで、仮審査通過に向けて備えておきたい4つのポイントを紹介します。

●無理のない返済計画を立てる

他からの借入状況にもよりますが、仮審査の申込みで高すぎる借入希望金額を記入すると、返済負担率が大きくなります。

返済負担率が大きくなるほど返済の負担は重くなり、金融機関が申込者の返済能力を不安視する可能性があります。

 

したがって、住宅ローンの仮審査では無理のない返済計画のもと、現実的な借入希望額を記入しましょう。

●複数の仮審査を受ける

住宅ローンの審査基準は、金融機関ごとに異なります。そのため、同じ条件で申込みをしてもある金融機関では審査に落ちて、別の金融機関では審査に通ることもあります。

そこで、あらかじめ複数の金融機関で同時に仮審査を受けるのがおすすめです。

仮審査は住宅ローンを組む基準を満たしているかを簡易的に判断するためにあり、正式な契約申込みではありません。そのため、原則として複数の金融機関に同時に申込んでも問題はありません。

 

●書類を早めに用意する

仮審査の時点ではネット銀行の住宅ローンなどを中心に、書類の提出を求められないケースが増えています。しかし、郵送や店頭で手続きをする場合には、本人確認書類や収入証明書類などの準備が必要なので、早めに準備しましょう。

例えば源泉徴収票が見当たらないとき、ご自身が会社員の場合は勤めている会社の担当者などに再発行を依頼しましょう。

 

●他からのローンは完済する

先述の通り、仮審査では返済負担率が重視される傾向がありますが、返済負担率を考える際の借入金にはマイカーローンや教育ローンなど、住宅ローン以外の借入金も含まれます。

返済負担率を下げるためには、できるだけ借入金を少なくすることが大切です。そのためにも、他からの借入れはできるだけ返済しておきましょう。

 

■住宅ローンの仮審査に落ちた時の対処方法

万が一住宅ローンの仮審査に落ちてしまったとしても、申込者が住宅ローンを組む基準を満たしていないとは限りません。

住宅ローンの仮審査には「返済負担率」が関係しており、返済負担率が大きくなるほど審査に落ちる可能性は高まります。

他からの借入金を完済する、自己資金を増やすことを想定して借入希望額を下げるなどの対処で、返済負担率を下げられます。

収入面に不安を感じる場合は、夫婦やパートナーとローンを組む収入合算やペアローンも検討してみましょう。

収入合算とはお互いの連帯保証人になる仕組みで、ペアローンはそれぞれが独立してローン契約する仕組みです。収入合算は2人分の収入で審査されるため、審査に通りやすくなる可能性があります。
また、ペアローンはそれぞれがローン契約をするため借入金額を2人で分け合うこととなるため、審査に通りやすくなる可能性があります。

また先述の通り、金融機関ごとに住宅ローンの審査基準は異なります。都市銀行や地方銀行、ネット銀行など、さまざまな金融機関が多彩な住宅ローンを扱っています。ある金融機関で仮審査に落ちた場合でも、別の金融機関に申込んだら仮審査に通ることもあります。

 

■物件が決まっていなくても、きちんと返済計画を立てたうえで住宅ローンを申込もう

住宅ローンは、購入する物件が決まっていない段階でも仮審査の申込は可能なケースがあります。

ただし、物件が決まる前にしても、きちんと資金計画を検討したうえで申し込みましょう。また、資金計画は住宅ローンの申込みは借入金を完済できるのかを考えたうえで、無理のないものにしてください。

 

監修者:新井 智美

プロフィール:
コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆および監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,000本を超える。

資格情報: CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

https://marron-financial.com/

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