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長期で株式投資をするメリット・デメリットとは|短期投資との違いも解説

執筆者:馬場愛梨(ファイナンシャル・プランナー)

「投資をするなら長期で」という話を聞いたことがあるかもしれません。たしかに「投資初心者には長期投資がおすすめ」とよくいわれますが、それは一体なぜなのでしょうか。この記事では、そもそも長期投資とはどのようなものを指すのか、短期投資との違いや、長期で株式投資をするメリット・デメリットとあわせて解説します。

 

長期投資を成功させるポイントについても紹介しますので、参考にしてください。

長期投資とは

長期投資とは、その名のとおり長期にわたって運用し続ける投資方法のことです。長期投資では、一度購入した金融商品をすぐに売らず長い間ずっと保有し続けたあとで売却します。では、長期投資の「長期」とは、具体的にどれくらいの期間を指すのでしょうか。実は、明確な基準はありません。ただ一般的には、10年単位での投資を指すことが多い傾向です。

 

運用期間や積立期間が1日~1年程度だと短期、数年~10年未満くらいまでが中期、10~50年だと長期といったイメージです。

短期投資と長期投資の違い

短期投資と長期投資を比較すると、期間以外にもさまざまな違いがあることがわかります

一般的に短期投資は、投資した銘柄が値上がりしたタイミングで売ることを高頻度で繰り返して利益を出していきます。一方、長期投資は毎日変動する値動きを追うのではなく、一度投資した銘柄を保有し続けて成長を見守っていくスタイルです。

 

短期投資と同じように「安く買って高く売る」ことで売却益(キャピタルゲイン)を狙ったり、配当や分配金などで利益(インカムゲイン)を狙ったりすることも期待できます。

「初心者には長期投資が向いている」といわれる理由

前述のとおり、同じ「投資」でも短期投資と長期投資では大きな違いがあります。どちらも一長一短があり、優劣があるわけではありません。では、なぜ投資初心者には長期投資が向いているといわれることが多いのでしょうか。これは、長期投資のほうがリスクやコストを抑えやすく安定的なリターンを狙え、値動きを追い続けなくても取り組めるからです。

なお長期投資のメリットは、のちほど詳しく解説しますが、短期投資で利益を出す場合、短い期間で何度も取引をしたり売買のタイミングを見極めたりすることが必要です。時間だけでなく労力や知識も必要になるため、投資初心者や日中忙しい人などを中心に「ハードルが高い」と感じる人も多いかもしれません。

一方で長期投資は、利益が確定するまで時間がかかるものの「取引は最初の1回だけ」「値動きの確認は年に1度」「数十年後に老後を迎えたら換金する」といったやり方も可能です。このように長期投資は、比較的取り組みやすく初心者でも失敗しにくいため「投資の基本」とされています。金融庁や全国銀行協会などのWebサイトでも、短期投資ではなく長期投資が推奨されています。

(参考:金融庁「NISA早わかりガイドブック別ウィンドウで開きます」、全国銀行協会「投資のリスクを減らすポイントは『分散投資』と『長期投資』別ウィンドウで開きます」、金融広報中央委員会「金融商品の選び方・組合せ方別ウィンドウで開きます」)

 

以降では、長期投資にどのようなメリットがあるのかについて詳しく見ていきましょう。

長期で株式投資をするメリット

長期で株式投資をするメリットは、主に以下の2つです。
●複利効果が得られやすい
●常に値動きを気にせずに済む

複利効果が得られやすい

長期投資の大きなメリットは「複利効果が得られやすい」という点です。投資で得た利益を再度投資に回せば、その利益がまた新たな利益を生んでくれることが期待できます。複利効果とは、利益が利益を生む状態が続き、どんどんお金が増えやすくなっていく状態のこと。複利のお金の増え方は「雪だるま式」や「二次関数的」ともいわれます。もちろん、これは上昇トレンドに乗って順調に利益を重ねられた場合で、複利効果によって必ず増えていくわけではありません。

運用期間が長くなればなるほど複利効果が大きくなり、利益も大きくなりやすい傾向です。
「早く投資を始める→運用期間を長く取れる→複利効果が大きくなる→運用成果を上げやすくなる」という関係があるため、投資ではよく「時間を味方につける」という表現が使われる傾向です。

常に値動きを気にせずに済む

長期投資なら、常に値動きをチェックしておく必要はありません。短期投資の場合は、一瞬のタイミングを逃さないよう常に相場をチェックしている人も珍しくありません。大きな変動があった場合、即座に売買の手続きをするのは投資に専念している人でない限り、なかなか難しいでしょう。投資初心者や日中働いている人の場合はなおさらです。

 

長期投資の場合は、一朝一夕の変動にはこだわらず数十年先を見据えています。相場が上がっていても下がっていても、焦ることなく淡々と継続していくことが大切です。値動きのチェックは半年に1回、年に1回などでも問題ありません。「普段は忘れている」という状態でちょうどよいくらいです。

長期で株式投資をするデメリット

長期での株式投資は、一般的に「初心者にもおすすめ」といわれ推奨されていますが、デメリットもあります。主なデメリットは、以下の3つです。
●資産形成に時間がかかる
●リターンを取り逃す可能性がある
●失敗すると挽回するのが大変

資産形成に時間がかかる

長期投資は「長期」で取り組む性質上、結果が出るまで時間がかかります。そのため「できるだけ早く稼ぎたい」「来年使う予定のお金を運用する」など、時間的な余裕がない人には合わないでしょう。なかには「じっくりコツコツと待つのがもどかしい」「ずっとほったらかしでは退屈」「すぐにサクっとお金を稼げるほうが魅力的」と感じる人もいるかもしれません。

 

ただ前述の「複利効果」は、長期で取り組むからこそのメリットとなるため、それを活かすにはどうしても時間が必要です。

リターンを取り逃す可能性がある

投資の世界では、リスクとリターンは比例するのが原則です。一般的に短期投資は「ハイリスク=ハイリターン」、長期投資は比較的「ローリスク=ローリターン」の投資手法といわれます。つまり長期投資の「リスクを抑えやすい」というメリットは、一方で「リターンが小さくなりやすい」というデメリットにもつながるのです。

 

短期投資の場合、大きく相場が動いたタイミングでうまく売買できれば、わずかな時間で大きな利益を上げることも期待できます。しかし長期投資は、日々の変動にかかわらず保有し続けるだけです。一時的に大きく値上がりしているタイミングがあっても、自分がお金を必要とするタイミングとずれていれば、そのリターンを取り逃してしまうかもしれません。

失敗すると挽回するのが大変

「長期投資は失敗しにくい」というのが通説ですが、100%失敗しないとは言い切れません。短期投資の場合、短期間で何度も繰り返す取引のうち1回を失敗してしまったとしても、まだまだやり直す時間も挽回できるチャンスもあるでしょう。しかし長期投資は数十年単位で行っているため、「失敗したから最初からやり直し」ということがしにくい傾向です。

 

仮に「老後のために20~60歳まで運用した」という人が失敗した場合、理想の老後に間に合うように挽回しようと思っても、残された時間が少なすぎて難しいかもしれません。できる限り失敗を避けたい場合は、長期投資だけでなくリスクを抑える別の投資手法(積立投資や分散投資)を併用したり、投資先を厳選したりするといった行動も必要です。

長期での株式投資に向いている人

長期での株式投資には、上述のとおりメリット・デメリットがあります。長期での株式投資に向いているのは、そのメリットを活かせる人、例えば以下のような条件に該当する人です。
●投資初心者
●多忙で投資に時間を割けない人
●じっくりコツコツ堅実に取り組みたい人

 

長期投資は「投資に対して時間や労力を割きにくい」「知識に自信がない」という人でも取り組みやすい特徴があります。また「ゆっくりでもいいからリスクを抑えて安定的に運用したい」という人にもぴったりです。逆に「すぐにハイリターンを狙いたい」という人には合わないでしょう。

長期での株式投資を成功させるポイント

最後に長期での株式投資を成功させるポイントについて見ていきましょう。

短期的な値動きに一喜一憂しない

上述しているように長期投資と短期投資では、投資に対する取り組み方が大きく異なります。長期投資を行う場合は、値動きを毎日チェックして一喜一憂する必要はありません。むしろ頻繁にチェックすることで「下がったから売ったほうがいいのかな」「上がっているからもっと買っておくべきだろうか」などと狼狽して失敗につながってしまう可能性もあります。投資初心者は、特に要注意です。

 

投資を実行したあとは、長い目で見てじっくりと成長を待つことを意識しましょう。

積立投資と分散投資も併用しよう

長期投資と並んで初心者にも向いている投資手法として有名なのが「積立投資」と「分散投資」です。どちらも投資のリスクを抑える効果が高いのが特徴です。

●積立投資
毎回定期的に同じ金額ずつ同じ銘柄を購入し続ける投資手法のことでドルコスト平均法ともいわれます。最初に一度設定しておけば、あとは自動的に「価格が安いときには多く買い、高いときには少し買う」といった行動を繰り返すことになるため、平均取得単価を抑えやすくなります。

●分散投資
投資先の銘柄や資産、地域、投資するタイミングなどを1つに限定せず、複数に分散させることを指します。1つに集中して投資していた場合、それが下落したときに大きなダメージを被りかねません。なるべく複数に分散させておくことで、万が一の際のダメージを抑える効果が期待できます。

 

どちらも長期投資と組み合わせて実践できるので、ぜひ「長期・積立・分散投資」を心がけてみましょう。

NISA制度を活用する

国も「長期・積立・分散投資」の実践を促しています。より投資しやすい環境を作るために導入されたのがNISAです。NISAを利用すれば、通常は利益に対して約20%かかる税金が非課税になります。NISAは、2023年末までは「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類です。しかし2024年1月1日からは制度が一新され、より拡充された「新NISA」として始動することが決まっています。

 

つみたてNISA(新NISAでは「つみたて投資枠」)の投資対象は「長期・積立・分散投資に適している」と金融庁が認めた投資信託のみです。株式投資をしたい場合は、一般NISA(新NISAでは「成長投資枠」)を利用できます。

まとめ

株式投資を長期で行うことで、複利効果を得ながらリスクとコストを抑えた運用が可能になります。長期投資は、利益確定まで時間がかかる点はデメリットですが、短期投資のようにずっと値動きを気にし続けたり一瞬の売買タイミングを見計らったりする必要がありません。そのため投資初心者や多忙な人にも実践しやすくおすすめです。
積立投資や分散投資と組み合わせて、じっくりコツコツと資産形成を図ってみてはいかがでしょうか。
 

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