公開日:2023.12.14 / 更新日:2023.12.20
不動産売却の確定申告が必要・不要になる人とは?流れや必要書類を解説
不動産売却後は、確定申告をして税金を納める流れが一般的です。しかし、不動産を売却したからといって確定申告が必須になるわけではありません。
ここでは、不動産売却後に確定申告が必要なケースや不要なケースを解説します。確定申告の方法や必要書類、確定申告しない場合の罰則にも触れているため、不動産売却後の手続きについて知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
不動産売却後の確定申告は必須ではない
不動産売却後の確定申告は必須ではなく、必要になるケースと不要なケースがあります。不動産を売却して確定申告が必要かどうか悩んでいる場合、次のどちらに当てはまるか確認しましょう。
不動産売却後に確定申告が必要な人とそうでない人の条件は、それぞれ以下のとおりです。
不動産売却で確定申告が必要な人とは?
不動産売却で利益が発生した場合は、確定申告をして税金を納める必要があります。不動産売却後の利益にかかる税金は、所得税と住民税です。
税金に関する特例を利用して最終的な手取り金額を多くしたい場合も、特例の適用を受けるために確定申告をしましょう。
不動産売却後に確定申告が必要となる人について、それぞれ解説します。
不動産売却により譲渡所得がある人
不動産売却で得た利益を、譲渡所得と呼びます。
譲渡所得は、不動産の売却価格からその不動産の取得にかかった費用や、売却時にかかった譲渡費用などを差し引いて計算します。
【譲渡所得の計算方法】
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費+譲渡費用)
例えば、2,500万円で購入したマンションを3,000万円で売却し、売却時の手数料などに200万円がかかっている場合、譲渡所得は以下のように計算できます。
3,000万円 -(2,500万円+200万円)=300万円
上記の場合、譲渡所得300万円に対する税金が発生するため、不動産売却後は確定申告をして所定の税額を納付する必要があります。
ただし、次で解説する特別控除などの適用状況によっては、確定申告後に納税の必要がなくなる場合もあります。
「3,000万円の特別控除の特例」を受ける人
3,000万円の特別控除の特例とは、自宅を売却した際に利用できる特例の一つです。適用を受けることで譲渡所得金額から最大3,000万円まで控除できるため、不動産売却後にかかる税金を大きく抑えられます。
この特例を受けるためには確定申告が必要です。特別控除の適用により譲渡所得税額が0円となり、納税の必要がなくなる場合でも、確定申告自体は必要となる点に注意しましょう。
本特例の適用条件は、以下のとおりです。
●自分が住んでいる不動産を売却すること
●以前住んでいた不動産の場合は、住まなくなった日から3年が経つ年の12月31日までに売却すること
●不動産を売却した年の前年と前々年に本特例や「マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例」の適用を受けていないこと
●不動産を売却した年と、その前年、前々年にマイホームの買い換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
●売却した不動産について、他の特例などの適用を受けていないこと
●売り主と買い主が、親子や夫婦、生計を同一にする親族などの特別な関係でないこと
●売却理由が災害による家屋滅失の場合は、住まなくなった日から3年が経つ年の12月31日までに売却すること
「軽減税率の特例」を受ける人
軽減税率の特例とは、10年を超える期間所有した自宅を売却した際に利用できる特例のことです。本特例の適用を受けると以下の軽減税率が適用されます。
本特例は3,000万円の特別控除とも併用が可能なため、譲渡所得額が3,000万円以上ある場合は2つの特例を利用することで不動産売却後の税額を大きく抑えられるでしょう。
本特例の適用を受けるには、確定申告が必要となります。
本特例の適用条件を以下で確認しておきましょう。
●自分が住んでいる不動産を売却すること
●以前住んでいた不動産の場合は、住まなくなった日から3年が経つ年の12月31日までに売却すること
●不動産を売却した年の1月1日時点で、土地と建物のいずれも所有期間が10年を超えていること
●不動産を売却した年の前年と前々年に本特例の適用を受けていないこと
●マイホームの買い換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
●売り主と買い主が、親子や夫婦、生計を同一にする親族などの特別な関係でないこと
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を受ける人
不動産(自宅)の売却により利益が発生せず、譲渡所得額がマイナスとなった場合、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用できます。
この特例を利用すると、マイナス分の金額をほかの所得から控除でき、その年の税金を抑えられます。マイナスが大きく、マイナス分を全額控除できない場合は、控除しきれなかった部分を翌年以降3年間繰り越すことも可能です。
なお、本特例を適用できるのは売却した年の1月1日時点で不動産の所有期間が5年を超えており、譲渡所得額がマイナスとなった場合です。
不動産売却後の住宅ローン残債の有無、新たに自宅を購入したかどうかといった条件の違いにより、確定申告時に申請する特例の種類が変わる点に注意しましょう。
●売却代金で住宅ローンが完済できず、住宅ローン残債がある人
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を申請する
●住宅ローンを組んで新たにマイホームを購入し、譲渡損失が生じた人
「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を申請する
不動産売却で確定申告が不要な人とは?
不動産売却により利益が発生しなかった場合や、上記の特例を利用する予定がなければ、確定申告の必要はありません。
注意したいのは、譲渡所得が3,000万円以下だからという理由で確定申告をしないケースや、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用し損ねてしまうケースです。
上述のとおり、3,000万円の特別控除の特例を受けるには確定申告が必要なため、不動産売却により利益があった場合は必ず確定申告を行ないましょう。
また、不動産売却で発生した損失を利用してその年の納税額を抑える際も、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けるために確定申告が必要となります。
不動産売却時は、仲介手数料や印紙税、登記費用や測量費など、多くの諸経費がかかっているため、譲渡所得額を正しく計算できているかよく確認しましょう。
不動産売却後の確定申告の流れは5ステップ
不動産売却後に確定申告をする場合、不動産を引き渡した翌年の2月16日から3月15日までが申告期間となります。期間内に確定申告を終えられるよう、余裕をもって準備を進めましょう。
不動産を売却したあとの、確定申告手続きの流れを解説します。
1.譲渡所得税を計算する
不動産売却で得た利益に対しどのくらいの税金を納める必要があるのか、譲渡所得税額を計算してみましょう。
譲渡所得税額は、課税譲渡所得に所定の税率をかけて計算します。課税譲渡所得は、譲渡所得から特別控除額を差し引いて求めます。
税額 = 課税譲渡所得 × 税率
税率は不動産を所有していた期間が5年以下か5年を超えていたかにより、以下のように異なります。
例1:
3年所有した不動産の課税譲渡所得額が500万円の場合……
所得税額 = 500万円 × 30.63% =153万1,500円
住民税額 = 500万円 × 9% =45万円
確定申告後の納税額は、上記を合わせた198万1,500円となります。
例2:
6年所有した不動産の課税譲渡所得額が500万円の場合……
所得税額 = 500万円 × 15.315% =76万5,750円
住民税額 = 500万円 × 5% =25万円
確定申告後の納税額は、上記を合わせた101万5,750円となります。
2.必要書類を準備する
不動産売却後の確定申告で必要となる基本の書類には、以下のようなものがあります。
特例の適用を受ける場合、基本の必要書類に加え、以下の書類が必要になります。
3.確定申告書を作成する
確定申告書の作成は、e-Taxを利用するか、確定申告用紙に自分で記入して作成します。
e-Taxとは、国税庁のホームページ上で書類作成から提出までを行なえる国税電子申告・納税システムのことです。「自分で記入するのが大変」「平日に申告書を提出しに行くのが困難」といった場合、e-Taxを利用しましょう。
確定申告用紙に自分で記入する場合、以下の書類に必要事項を記入していきます。
4.申告期間内に書類一式を税務署へ提出する
作成した確定申告書は、申告期間内(引渡し日翌年の2月16日から3月15日まで)に以下のいずれかの方法で提出します。
・税務署で直接提出
引き渡した物件が属する管轄の税務署へ行き、直接提出する方法です。書類に不備がないか税務署員に確認できます。
・税務署へ郵送で提出
引き渡した物件が属する管轄の税務署へ、郵送により提出することも可能です。書類に不備などがあると手続きが遅れてしまう点に注意しましょう。
・e-Taxで提出
自宅から、インターネット上で提出する方法です。作成した書類をプリントアウトし、e-Tax以外の方法(持ち込みや郵送)で提出することも可能です。
5.納税する
確定申告により納税金額が決定したら、以下いずれかの方法で納税し、不動産売却後の確定申告は完了です。
●現金で納付する
●口座振替で納付する
●e-Taxから納付する
●クレジットカードで納付する
不動産売却で確定申告をしないとどうなる?
不動産売却により利益が発生し、納税義務のある人が確定申告を行なわなかった場合、本来の納税額に加えて「無申告加算税」と「延滞税」が発生します。
無申告加算税は、申告期限内に確定申告をしなかった場合の罰則です。納税額50万円までの部分に15%、50万円を超える部分に20%の税率で税金が上乗せされるため、申告漏れなどで税負担が大きくならないよう注意しましょう。
延滞税は申告期限を過ぎた日数に応じて、以下の税率で税金が上乗せされる罰則です。
確定申告を行なう必要がある場合、上記の税金が加算されてしまうことを防ぐためにも、申告期間内に確定申告を済ませましょう。
まとめ
不動産売却後は特例を利用するケースが多く、ほとんどの人が確定申告を行なう必要があります。ただし、不動産売却による利益がなく特例を利用する予定もない場合、確定申告は不要です。不動産売却後の確定申告では多くの書類を用意しなければならないため、確定申告する場合には余裕をもって準備を進め、申告期間に提出しましょう。