不動産売却コラム

公開日:2025.07.11 / 更新日:2025.07.11

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地は売れない?売却時の注意点や対処法を解説

近年、地震や豪雨などの自然災害が頻発するようになり、不動産を購入する際に自らハザードマップを確認する方が増えています。土地を売却する際は、事前にハザードマップを確認しておき、どのような災害リスクがあるのかを把握しておくことが大切です。

この記事では、ハザードマップの浸水想定区域内にある土地を売却する際の注意点や対処法を解説します。「ハザードマップの浸水想定区域内にある土地は売れない?」と心配されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地の売却

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地は、売却しにくいのでしょうか?ここでは、ハザードマップの浸水想定区域内にある土地を売却する際の基本的な考え方を解説します。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地は売れない?

所有する土地がハザードマップで被害が想定されるエリアに含まれていても、売れないというわけではありません。

日本は自然災害が多い国であり、「自然災害が起きても被害は発生しない」と断言できる土地はなく、あらゆる土地は何らかの災害リスクを抱えている可能性があります。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地は災害リスクが高めだといえますが、需要が高い都市部では、それほど売却に影響することは少ないです。

例えば、川崎市の武蔵小杉や東京都世田谷区の二子玉川などは水害リスクがありますが、不動産市場においては人気エリアになっています。

一方で、災害リスクが高めで土地の需要が少ない地域に所在する土地は、売れにくくなる傾向があります。

ハザードマップは土地の値段に影響するの?

売却する土地がハザードマップで被害が想定されるエリアに含まれていても、売却価格に影響する可能性は低いです。

土地の売却価格は、近隣地域の地価公示価格や地価調査価格、実勢価格(時価)などを参考に決まりますが、地価公示価格や地価調査価格は災害リスクを考慮して不動産鑑定士によって算定されます。そのため、ハザードマップの浸水想定区域内に含まれているだけでは、減価要因になりません。

地価公示価格や地価調査価格は既に災害リスクを考慮しているため、そこからさらに価格が下がる可能性は低いでしょう。

ただし、ハザードマップの浸水想定区域内に含まれているだけでは、売却価格に大きな影響を与えることは少ないものの、購入希望者が災害リスクを理由に値引きを要求して応じた場合、価格が下がる可能性はあります。

浸水想定区域内にある土地は売却しにくい?

土地が浸水想定区域にあるだけでは、原則として売却価格が大きく下がることはなく、売却が困難になるわけではありません。しかし、購入希望者が浸水リスクを考慮して慎重になる場合があります。

浸水想定区域にある土地を売却する際は、近隣地域の地価公示価格や地価調査価格、実勢価格を参考に売却価格が決まりますが、先述したように、既に災害リスクを考慮しているため、そこからさらに価格が大きく下がる可能性は低いです。

ただし、過去実際に浸水被害に遭った土地を相場価格で売るのは難しく、浸水被害に遭っていない土地と比べて安くなることがあります。特に、過疎地域に所在する土地は、売却に時間がかかる場合があるでしょう。

ハザードマップの浸水想定区域内にあるマンションの売却

ハザードマップの浸水想定区域内に含まれているだけでは、売却価格が大幅に下がる可能性は低いです。

ハザードマップの浸水想定区域内に含まれていても、人気エリアであれば高い需要があり、売れにくくなる可能性は低いですが、地域性や立地条件が悪いマンションの場合、売却活動に影響を及ぼすことがあります。

なお、マンションの場合、上層階は下層階よりも水害リスクは基本的に低くなります。敷地が浸水した場合、低層階は水没する可能性がありますが、高層階は直接的な浸水被害を受けることは少ないです。

ただし、浸水でエレベーターが使えなくなったり、断水したりすることがあるため、上層階であっても間接的な水害リスクは存在します。

購入希望者がこのような水害リスクの懸念を理由に、値下げを要求する可能性はあるでしょう。

ハザードマップの基礎知識

近年、自然災害のリスクが高まっており、不動産取引においてはハザードマップの重要性が増しています。ここでは、ハザードマップの種類や役割など、ハザードマップの基礎知識を解説します。

ハザードマップとは?

ハザードマップとは、地震や津波などの自然災害が発生した際に、被害が想定される範囲を予測した地図を指します。ハザードマップは国土交通省と各自治体が作成しており、どなたでもインターネットで閲覧が可能です。

ハザードマップは、自然災害が発生したときにどのような被害が想定されるかを色別にわかりやすく表示しており、地域の状況が一目でわかります。

不動産を売却する際にハザードマップを確認しておくと、売却予定地がどのような自然災害のリスクがあるのかを把握できます。

ハザードマップの役割

ハザードマップの役割は、地域の住民に自然災害への備えを促し、被害を少しでも防ぐことにあります。日頃からハザードマップを確認しておくと、津波、高潮、洪水、土砂災害などの自然災害のリスクを把握でき、適切な備えができるようになります。

なお、ハザードマップと似たものに防災マップがあり、防災マップは災害時の緊急避難場所と避難経路を地図上に表示したものです。

防災マップの目的は、災害が起こった際に「どこに避難するか」「どのような経路で避難するか」を示すことにあります。

多くの場合、ハザードマップと防災マップは同時に閲覧できる形で提供されており、災害リスクと避難情報を合わせて確認できます。

ハザードマップの種類

ハザードマップは災害の種類別に以下のようなものがあります。

洪水ハザードマップ 大雨などによる浸水のリスクを可視化する
内水ハザードマップ 雨水が排水困難になったときの浸水のリスクを可視化する
高潮ハザードマップ 大雨や台風などによる高潮のリスクを可視化する
津波ハザードマップ 地震などが原因の津波のリスクを可視化する
土砂災害ハザードマップ 土砂災害のリスクを可視化する
火山ハザードマップ 火山噴火による被害のリスクを可視化する
地震危険度ハザードマップ 地震による被害のリスクを可視化する
ため池ハザードマップ ため池が決壊した場合に起こりうる被害のリスクを可視化する

なお、ハザードマップとは別に、関連した以下のような地図もあり、具体的な内容は作成する自治体によって異なります。

防災マップ 災害発生時の避難場所や避難経路を表示した地図
被害予測図 自然災害による被害が予想されるエリアを表示した地図
被害想定図 被害予測図と同様の地図
アボイド(回避)マップ 自然災害を受けやすいエリアを表示した地図
リスクマップ 地域住民に対して災害リスクを周知させるための地図
地盤サポートマップ 地盤に関する情報を提供する地図

複数のハザードマップや関連地図を併用することで、包括的な防災対策を立てられます。

ハザードマップの入手方法

国土交通省はインターネットで全国のハザードマップを提供しており、以下のサイトでどなたでも無料で閲覧できます。

国土交通省:ハザードマップポータルサイト

上記のサイトを利用すると、「重ねるハザードマップ」「わがまちハザードマップ」の2種類のツールを使って、さまざまな災害リスクを調べられます。

重ねるハザードマップは、洪水と土砂災害など、複数の災害リスクを同時に把握したい場合に便利です。

わがまちハザードマップは、市区町村ごとにハザードマップを確認したいときに役立ちます。

なお、各自治体のホームページや役所の窓口でもハザードマップを確認できます。

ハザードマップの問題点

ハザードマップの問題点として、ハザードマップの浸水想定区域内に含まれない土地は安全であると誤解されることが挙げられます。100%安全な土地はなく、自然災害が起きる可能性はゼロではありません。

特に、ハザードマップで色がついている地域との境界ギリギリの土地は注意が必要です。境界ギリギリだから大丈夫と過信せず、適切な対策を講じておくことで被害を抑えられます。

また、ハザードマップを確認するだけでは、具体的にどのような防災対策を取ればよいのかがわかりにくいことも問題点として挙げられます。ハザードマップを参考に、個別の災害リスクに応じた具体的な対策を講じることが大切です。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地を売却する際の注意点

近年、自然災害に対する防災意識の高まりにより、不動産の購入検討者が事前にハザードマップを確認することが増えています。ここでは、ハザードマップの洪水浸水想定区域内にある土地を売却する際に注意すべきことを解説します。

重要事項説明書で水害リスクを説明する義務がある

売却する土地が洪水浸水想定区域に含まれている場合、重要事項説明書(重説)で水害リスクを買主に説明する義務があります。洪水浸水想定区域に含まれているかは、洪水ハザードマップで確認できます。

重要事項説明書とは、不動産の売買取引をする際の重要事項を記載した書類であり、2020年8月に「宅地建物取引業法施行規則」が改正され、水害リスクについての説明が義務化されました。

重説時に水害リスクについて説明しなかった場合は、宅地建物取引業法違反で罰せられます。

なお、仲介で土地を売却する際は、仲介を依頼した不動産会社の宅地建物取引士が重要事項の説明を行ってくれるため、売主自身が直接説明する必要はありません。ただし、売主は自身の知っている事実(過去に浸水したことがあるなど)について、不動産会社に情報提供することが求められます。

リスクを隠蔽すると契約不適合責任に問われる可能性がある

過去に浸水被害があった場合、売主は不動産会社や買主にその事実を伝える義務があります。売主が浸水リスクを故意に隠蔽したり、誤解を与えるような情報を提供していたりする場合、契約不適合責任に問われる可能性があります。

契約不適合責任は、売買契約の内容に適合しない事実があった場合、売主がその責任を負う制度です。例えば、過去に浸水被害があったことを伝えずに土地を売却し、購入後に買主がその事実を知った場合、損害賠償請求などをされる可能性があります。

なお、リスク情報を事前に開示し、買主がそれを了承したうえで契約を締結している場合、将来的に浸水が発生しても、売主が契約不適合責任に問われる可能性は低いと考えられますが、具体的な状況によって判断が異なる場合もあります。買主に対して十分な説明を行い、売買契約書に免責条項を盛り込んでおくとよいでしょう。

適切に対応できる不動産会社を選ぶ

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地を売却する際は、適切に対応できる不動産会社を選ぶことが大切です。

ハザードマップの浸水想定区域内に含まれているだけでは、原則として売却価格が大きく下がることはありませんが、災害リスクがあることを理由に、買主が値下げを要求する可能性もあります。

災害リスクのある土地でも、購入希望者とスムーズな交渉を行い、最良の条件で取引を進める能力が不動産会社に求められます。

不動産会社を選ぶ際は、仲介の実績が豊富で、不動産に関する法律に精通している会社を選ぶことが大切です。また、土地が所在するエリアに詳しい不動産業者を選ぶと、その地域の災害リスクを熟知しているため、購入希望者と適切な交渉を行える可能性が高いでしょう。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地が売れないときの対処法

不動産に対する需要が少ない地域に所在し、かつハザードマップの浸水想定区域内に含まれる土地は、一般的に売却が難しいとされています。ここでは、ハザードマップの浸水想定区域内にある土地が売れないときの対処法を解説します。

災害対策や物件のほかの魅力をアピールする

土地の購入希望者は、物件の災害リスクに懸念を抱いているため、具体的な防災対策などを説明し、購入希望者の疑問や不安を解消させることが大切です。

自然災害で被災が想定されるエリアに対しては、市区町村は何らかの防災対策を立てていることが多く、具体的な防災対策を説明することで、購入希望者の不安を和らげる可能性があります。

また、生活利便性が優れているなど、ほかの魅力をアピールすることで、ハザードマップに含まれるというデメリットが軽減し、購入意欲を高められます。

不動産会社に土地の売却を相談する際は、交通アクセスが良好であったり、近くに商業施設があったりするなど、物件の魅力的な要素は必ず伝えるようにしましょう。

売り出し価格を下げる

問い合わせ件数が少なく、なかなか買い手が見つからない場合は、売り出し価格を下げてみることも検討しましょう。売り出し価格を下げることで、予算が限られている層にもアプローチできるため、問い合わせが増える可能性があります。

また、早期に売却したい場合、価格を下げることで売却期間を短縮できる可能性があります。ただし、なかなか売れないからといって、一度に大幅に値下げをしたり、短期間で値下げを繰り返したりすると、売れ残りのイメージがついてしまったり、検討者がさらなる値下げを期待したりする可能性があるため避けるべきです。

なお、実際に自然災害の被害にあった土地は、価格を下げないと売れない場合があります。売り出し価格を下げる際は不動産会社とも相談し、ご自身の状況に合わせて適切な判断をしてください。

不動産会社に買い取ってもらう

仲介でなかなか売却が進まない場合、不動産会社に直接買い取ってもらうという選択肢もあります。この場合、不動産会社が買主になるため、販売活動が不要になり、早期売却が可能です。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地を早く売却したい場合、不動産買取は有効な選択肢になります。ただし、買取価格は市場価格よりも低くなるのが一般的であり、市場価格での売却は期待できません。

ハザードマップの浸水想定区域に含まれていても買取は可能ですが、物件の状況によっては、買取を断られるケースもあります。買取を行っている不動産会社は限られているため、不動産会社を選ぶ際は、買取にも対応しているかを確認しておくと安心です。

ハザードマップの浸水想定区域内にある土地の売却は不動産会社選びが大切

売却する土地がハザードマップの浸水想定区域内にあっても、売れないわけではありません。しかし、不動産に対する需要が少ない地域に所在する場合、なかなか売れなかったり、値下げを余儀なくされたりする可能性があります。

ハザードマップに含まれる土地を売却する際は、不動産会社の選び方が重要です。災害リスクのある土地の売却など、実績豊富な不動産会社を選ぶと安心して任せられます。

明和地所はこれまで数多くの不動産を仲介した実績があり、即時買取、買取保証付き仲介にも対応しています。ハザードマップに含まれる土地の売却を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

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