公開日:2024.11.08 / 更新日:2024.11.08
ペアローン物件は離婚後に売却できる?問題点やトラブルを避けるための対策を解説
住宅購入をする際、すべての人が「もし将来離婚したら…」と考えてペアローンを組むとは限りません。ペアローンを組むと不動産が共有名義になり、離婚後の売却などに支障をきたすことがあります。この記事では、ペアローンの基礎知識や離婚時のトラブルを避けるための対策を解説します。
ペアローンを利用すると借入額を増やせる可能性があり、より高額な住宅を購入できるチャンスが広がります。一方で、ペアローンを組んだ夫婦が離婚すると、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。
ペアローンを利用する際は、万が一、離婚したときの対処法を知っておくことが大切です。この記事では、離婚時のペアローンの問題点やトラブルを避けるための対策を解説します。ペアローンで購入した不動産の売却などでお悩みの方は、参考にしてみてください。
ペアローン物件は離婚後に売却できる?
ペアローンを利用して購入した不動産は夫婦の共有名義になっていますが、双方の同意が得られれば、離婚後でも売却することは可能です。
物件の売却価格に対して住宅ローンの残債が下回るアンダーローンであれば、一般的な不動産売却と同様の方法で、比較的スムーズに売却できるでしょう。
ただし、住宅ローンの残債が物件の売却価格を上回るオーバーローンの場合や、夫婦間で売却に対する意見の不一致がある場合、売却活動が難航することがあります。
オーバーローンになる場合、ローンの残債を自己資金で補填できたり、金融機関から任意売却が認められたりすると、離婚後でも売却することは可能です。
このように、ペアローンで購入した物件を売却することはできますが、一般的な不動産と比べると難易度は高くなります。
ペアローンの基礎知識
ペアローンを利用する際は、仕組みを理解しておくことが大切です。ここでは、ペアローンの仕組みやメリットなど、利用する前に知っておきたい基礎知識を解説します。
ペアローンの仕組み
ペアローンとは、マイホームを購入する際に夫婦や親子などがそれぞれ住宅ローンを組み、2本のローンで1つの住宅を購入する方法です。
例えば、4,000万円の住宅を購入する際に、夫が2,700万円、妻が1,300万円のローンを組み、夫婦双方が主たる債務者になって、それぞれの債務に対して返済義務を負います。
夫婦で2本のローン契約を交わすため、抵当権も2つ設定されるのが特徴です。夫がローンを完済すると夫側の抵当権は抹消されますが、妻がローンを完済しなければ妻側の抵当権は残ります。
なお、夫婦双方がそれぞれの債務に対して連帯保証人になるのが一般的で、どちらかがローンの返済を滞納すると、連帯保証人にも責任が及びます。
ペアローンの利点
ペアローンを利用すると借入額を増やすことができ、単独でローンを組むよりも購入できる物件の幅が広がることがメリットです。
例えば、夫の収入だけでは2,500万円しか借りられない場合でも、妻の収入で1,500万円借りられると、ペアローンを組むことで4,000万円の住宅を購入できます。より高額の住宅を購入したい場合、共働き世帯ではペアローンは魅力的な選択肢になるでしょう。
また、ペアローンを利用して住宅を購入すると、夫婦が別々に住宅ローンを契約することになるため、それぞれが住宅ローン控除を受けられ、節税効果が期待できることもメリットです。
さらに、夫婦それぞれが異なる金利タイプのローン(固定金利と変動金利など)を選択すると、金利変動リスクを分散できることもメリットになるでしょう。
離婚時のペアローンの問題点
ペアローンを利用するとさまざまなメリットが得られる一方、権利関係が複雑であるため、万が一、離婚するとさまざまな問題が発生する可能性があります。ここでは、離婚時におけるペアローンの問題点を解説します。
売却が困難になる場合がある
ペアローンを組んで夫婦の共有名義になっている住宅を売却するには、夫婦双方の合意が必要であり、合意が得られないと売却は困難になります。離婚時は夫婦仲が良好とは言えないことも多く、合意が得られないケースもあるでしょう。
自分は売却したくても、相手がそのまま住み続けたいと主張した場合は売却できません。共有者の合意が得られない場合、自分の共有持分だけ売却するのは非常に難しく、相手の主張を受け入れるか、別の方法を模索するしかありません。
夫婦双方の合意が得られた場合でも、売却する際はローンを完済して抵当権を抹消しなければなりません。ペアローンでは抵当権は2つ設定されているため、手続きがやや複雑になります。
アンダーローンの状態であれば、不動産仲介業者や金融機関のサポートを得ることで、売却はスムーズに進むケースも多いですが、オーバーローンになる場合の売却は、リスクが大きくなり困難になるため注意が必要です。
オーバーローンの問題
物件の市場価値をローンの残債が上回るオーバーローンの状態では、夫婦双方の合意が得られた場合でも売却は困難になります。ローンの残債を自己資金で補填できると売却できますが、補填できないと通常の方法での売却は難しいです。
住宅ローンの残債があり、残債を自己資金などで補填できない場合、金融機関の許可が得られると任意売却できる可能性があります。
任意売却とは、住宅ローンの残債がある場合でも、金融機関の許可を得て不動産を売却する方法です。任意売却は住宅ローンの返済が滞ったときに利用できる売却方法ですが、金融機関の許可が得られると滞納がなくても利用できる場合があります。
ただし、任意売却ができた場合でも住宅ローンは残ってしまうため、売却後も返済を続けなければなりません。ローンの支払いが残ると、離婚後の生活が困窮することがあるため、任意売却の利用は慎重に検討する必要があります。
離婚後も関係が続く
共有名義のままだと、離婚後も元配偶者との関係が続きます。ペアローンの場合、夫婦双方がそれぞれのローンの連帯保証人になっているため、夫婦のどちらかがローンの返済を滞納した場合は、代わりに返済しなければなりません。
自分のローンの返済もしなくてはならず、2人分の返済を続けるのは大きな負担となるでしょう。2人分の返済ができなくなると、最終的に住宅は競売にかけられてしまい、相場価格よりも低い金額での売却を余儀なくされます。
なお、共有名義になっている住宅は、どちらかがローンの返済を滞納すると、滞納をした人の共有持分だけでなく、不動産全体が競売にかけられるため注意が必要です。
また、共有名義のままにしておくと、どちらかが亡くなったときには、共有持分は遺族に相続されます。亡くなった方が再婚していた場合、共有持分は再婚相手に相続される可能性があり、トラブルに発展しかねません。
離婚後に住宅を共有名義のままにしておくことはリスクが大きいため、共有関係は離婚時に解消しておくのが望ましいです。
離婚時のペアローンの対応策
ペアローンを組んで住宅を購入した場合、離婚するとさまざまな問題が発生する可能性があるため、適切な対処が必要です。ここでは、離婚時のペアローンの対応策を解説します。
住宅ローンを一本化する
離婚時のペアローンの対応策として、住宅ローンを一本化するという方法があります。ペアローンを解消して住宅ローンを一本化するには、現在の金融機関で一方がもう一方の債務を引き受ける「免責的債務引受」をすることが有効です。
例えば、夫の住宅ローンの残債が1,500万円、妻の住宅ローンの残債が1,000万円の場合だと、夫が妻の残債の1,000万円を引き受けてローンを一本化し、合計2,500万円のローンの返済を行います。
ただし、債務を引き受ける側に十分な返済能力が必要であり、住宅ローンの一本化に金融機関が応じてくれるとは限りません。
免責的債務引受ができなかった場合、「住宅ローンの借り換え」という方法もあります。
夫の住宅ローンの残債が1,500万円、妻の住宅ローンの残債が1,000万円の場合だと、夫が他の金融機関で2,500万円の住宅ローンを組み、現在の金融機関に一括返済すると、ペアローンを一本化できます。
この場合、他の金融機関で審査に通過しなければならず、希望する金融機関がペアローンの借り換えに対応しているとは限りません。ペアローンの一本化は金融機関の審査のハードルが高いですが、成功すると離婚時のペアローンの問題は解決しやすくなります。
どちらかが住み続ける
離婚後に夫婦のどちらかが家に住み続けるには、ローンを完済してペアローンを解消するか、家に住み続ける方が免責的債務引受や住宅ローンの借り換えをして、ペアローンを一本化するなどの選択肢があります。
夫婦のどちらかが住み続ける場合の最善の方法は、ローンを完済してペアローンを解消することです。夫婦それぞれがお金を出し合ってローンを完済すると、離婚時のペアローンの問題は解決します。
ローンの完済やペアローンの一本化ができず、共有名義を解消できなかった場合、共有名義のまま、夫婦のどちらかが住み続けるという選択肢もあります。
共有名義のままで夫婦のどちらかが住み続ける場合、夫婦の片方は他の場所で住居を確保して生活を送りながら、住宅ローンの返済を続けなければなりません。
住宅ローンの返済を養育費代わりにすることも可能ですが、その際は協議の内容を公正証書にしておくことをおすすめします。
ただし、ペアローンを組む際には、夫婦2人が一緒に住むことを条件にしている場合が多く、離婚して別居している事実が発覚すると契約違反を問われます。残債の一括返済を求められることもあり、契約内容を確認しておくことが大切です。
売却する
これまで説明してきた通り、家を売却することは、離婚時のペアローン問題を解決するための有効な手段の一つです。
アンダーローンの状態であれば、ローンを完済できるため経済的な負担もなくなります。ただし、売却には夫婦双方の同意が必要で、同意が遅れ築年数が経ってしまうと価格が下落する可能性があり、結果的に売却価格が残債を下回るリスクがあるため注意が必要です。
オーバーローンかつ自己資金での補填ができない場合、任意売却も検討しなければならないでしょう。
離婚時のペアローンの問題を解決するための最善策は、金融機関や不動産会社に早めに相談することです。専門家に相談することで、最善の方法で離婚時のペアローンの解消が期待できます。
ペアローン物件の売却方法
ペアローン物件の売却方法は、アンダーローンとオーバーローンでは異なります。ここでは、アンダーローンの場合の売却方法とオーバーローンの場合の売却方法を解説します。
アンダーローンの場合の売却方法
家の売却価格よりも住宅ローンの残債が下回るアンダーローンの場合だと、比較的スムーズに売却できます。売却で得た資金で住宅ローンを完済し、余った資金は分与割合に応じて分配します。
売却の進め方は、一般的な不動産売却と同じです。不動産会社に物件の査定を依頼し、売却価格で住宅ローンを完済できる見込みがあれば、不動産会社と媒介契約を締結し、販売活動を開始します。
ペアローンの場合、夫婦双方のローンに設定された抵当権の抹消手続きが必要となるため、手数料が通常より多くかかることに注意が必要です。また、仲介手数料や税金などの諸費用も発生するため、どの程度の金額になるかを事前に確認しておくと、安心して売却できます。
オーバーローンの場合の売却方法
住宅ローンの残債が物件の売却価格を上回るオーバーローンの場合、売却価格だけではローンを完済できないため、金融機関の理解と協力、不動産会社のサポートが不可欠です。適切なサポートを得ることで、スムーズに売却手続きが進む可能性が高まります。
ペアローンの物件も任意売却できますが、交渉して金融機関に任意売却を認めてもらうことが必要です。金融機関との交渉が難しい場合は、任意売却に精通している不動産会社に相談すると、交渉をサポートしてもらえる可能性があります。
また、オーバーローンの負担を減らすには、少しでも高値で売却することが必要です。より高値で売却するためにも、不動産会社としっかりと相談しておきましょう。
売却は離婚時のペアローンの問題を解決する有効な手段
ペアローンを組んだ物件は夫婦の共有名義となり、それぞれのローンに対して1つずつ抵当権が設定されるため、権利関係が複雑になります。
離婚時のペアローンの最も望ましい対応策は、ローンを完済してペアローンを解消することです。これにより、離婚時のペアローンの諸問題は解決します。
そのため家を売却することは、離婚時のペアローンの問題を解決する有効な手段です。
明和地所の仲介では、ペアローンを組んだ物件の売却の実績があり、任意売却のサポートも行っています。ペアローンを組んだ物件の売却を検討されている方はお気軽にご相談ください。