公開日:2025.09.17 / 更新日:2025.09.17
抵当権とは?仕組みと注意点をわかりやすく解説【不動産売買・投資にも】
不動産の売買や投資で避けて通れないのが「抵当権」の知識です。特に住宅ローンを利用する場合、一般的に抵当権が設定されますが、抵当権について詳しく理解している方は意外と多くありません。
本記事では、「抵当権とは何か」「設定や抹消の手続き」「根抵当権との違い」まで、不動産取引の初心者にもわかりやすく解説します。
目次
抵当権とは?まずは基本をわかりやすく解説

抵当権とは、住宅ローンを借り入れる際などに、金融機関が債務者(不動産の所有者)の不動産に設定する担保権のことです。ここでは、抵当権の基本的な意味や、担保や差し押さえとの違いをわかりやすく解説します。
抵当権とは何か
民法では、抵当権について「債務者が不動産を手放すことなく担保に提供した場合、他の債権者よりも優先して弁済を受けられる権利」と定義されています。簡単にいうと抵当権とは、お金を貸す側(金融機関など)が、土地や家を担保にとる権利を指します。そのため、お金を貸す側が抵当権者です。
たとえば、マイホームを購入する場合、住宅ローンを利用するのが一般的ですが、その物件には融資の条件として抵当権設定登記が行われます。これにより、金融機関はローンの返済が滞った際にその家を強制的に売却(競売)し、貸したお金を回収できるようになるわけです。
ローンを組むと抵当権が設定される理由
住宅ローンを組むと、ほぼ確実に抵当権が設定されます。これは、金融機関が安心して高額な融資を行うために欠かせない措置であり、主に次の3つの理由があります。
・返済不能リスクに備えるため
万が一ローンが返済できなくなった場合でも、担保である不動産を売却して貸した資金を回収できます。
・返済の確実性を高めるため
「返済できなければ家を失う」という意識が借主に働くことで、支払いが滞りにくくなります。
・他の債権者より優先して回収するため
抵当権には「優先弁済権」があり、他の債権者よりも先に返済を受けられます。
このように、抵当権は金融機関を守るとともに、不動産取引の信頼性を支えているといえるでしょう。
抵当権と「担保」や「差し押さえ」との違い
抵当権を理解するうえで、混同しやすい「担保」や「差し押さえ」との違いを整理しましょう。
まず、担保とは、借金の返済を確実にするために提供される財産や権利の総称です。抵当権はこの担保の一種であり、特に不動産に設定されるものを指します。抵当権の大きな特徴は、担保に入れた不動産に住み続けたり、貸して家賃収入を得たりと、通常どおり利用できる点です。
一方、差し押さえは、借金の返済が滞った際に、債権者が裁判所に申し立てて債務者の財産を保全し、売却などで債権回収を図る手続きの一段階です。
つまり、抵当権は「もしものときに備え、事前に設定される権利」であるのに対し、差し押さえは「実際に返済が滞った後に行われる強制的な手続き」という明確な違いがあります。
抵当権設定登記の流れ

抵当権はローン契約とともに設定され、法務局で登記されます。ここでは、抵当権設定登記のタイミングや手続きの流れを簡潔に紹介します。
抵当権設定登記が必要なタイミング
抵当権設定登記は、不動産を担保に資金を借り入れる際に必要となる手続きであり、具体的な場面は以下のとおりです。
・住宅ローンを使ってマイホームを購入するとき
住宅ローンを組む際には、購入する物件に抵当権が設定されます。
・投資用物件を金融機関からの融資で購入するとき
投資用不動産の場合も、融資の担保として抵当権を設定します。
・既存の不動産を担保にして追加の借り入れをするとき
すでに所有している不動産を担保に、事業資金などを借り入れる際も同様です。
このように、不動産を担保にして資金を借りる際には、抵当権を設定して登記する必要があります。
抵当権設定登記の手続きの流れ
抵当権設定登記は、一般的に以下の流れで進められます。
1.ローン契約の締結
借主と金融機関の間で、住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)と抵当権設定契約を同時に締結します。
2.書類準備と登記申請
契約に必要な書類(登記原因証明情報、委任状など)を司法書士が準備し、法務局に抵当権設定登記を申請します。
3.登記完了
登記申請後、通常1〜2週間で手続きが完了します。
この手続きは不動産登記に関する専門知識を要するため、金融機関が紹介する司法書士が代行するのが一般的です。借主が自ら申請するケースは稀だと覚えておきましょう。
不動産売買で避けて通れない抵当権抹消手続き

ここまで、抵当権の基本知識や抵当権設定登記の流れを解説しました。抵当権は、ローンを返済すれば自動的に消えるのだろうか、と疑問に思う方もいるでしょう。
住宅ローンを完済しても、抵当権は自動で消えるわけではありません。不動産を売却・譲渡する前には「抹消登記」が必要です。ここではその必要性と流れを解説します。
抵当権抹消登記が必要なケース
抵当権の抹消は、主に以下のような場面で必要となります。
住宅ローンの完済時
ローンをすべて返済しても、抵当権は自動では消滅しません。抹消登記が必要です。
不動産を売却するとき
売却時には、買主へ「抵当権のない状態」で引き渡すのが一般的です。そのため、不動産の売買と同時に抵当権を抹消します。
不動産を担保に新たな融資を受けるとき
抵当権は先に登記を備えた債権者が優先して弁済を受けられるため、先に設定されている抵当権が残ったままでは新たな融資を受けられない可能性があります。
このように、抵当権の抹消は、不動産の権利関係を明確にし、安心して売買や融資を行うために不可欠な手続きです。
抵当権抹消手続きの具体的な流れ
抵当権抹消手続きは、一般的に以下の流れで進められます。
1.必要書類の受領
ローンを完済すると、金融機関から抵当権を解除するための「解除証書」や「登記識別情報通知書」などの書類が発行されます。
2.司法書士への依頼
自分で申請することも可能ですが、専門知識を要するため、発行された書類を揃えて司法書士に抹消登記を依頼するのが一般的です。
3.抹消登記完了
司法書士が書類を法務局へ提出し、通常1週間から10日程度で手続きが完了します。
登記が完了すると、不動産の登記簿から抵当権の記録が消去され、売却や新たな担保設定がスムーズに行える状態になります。
抵当権を抹消しないとどうなる?
抵当権を抹消しないまま放置すると、以下のような大きな不利益が生じます。
・不動産が売却できない
不動産売買では「抵当権なし」の状態での引き渡しが原則です。抹消されていないと所有権移転に支障をきたし、買い手がつかなくなります。
・新たな融資が受けられない
抵当権が残っていると、すでに担保が設定されていると見なされ、金融機関からの新たな借り入れが難しくなる可能性があります。
・相続時にトラブルの原因となる
相続した不動産に抵当権が残っていると、権利関係が複雑になり、手続きに手間取ったり、親族間で思わぬトラブルに発展したりするリスクがあります。
このように、抵当権の放置は将来の不動産活用を大きく妨げる原因となります。
抵当権に関する注意点とよくある誤解

抵当権は強力な権利である一方で、誤解されやすい側面もあります。
ここでは、不動産売却・投資時の注意点や、初心者が抱きやすい誤解を整理します。
抵当権付き不動産を売却する際の注意点
抵当権が残ったままの不動産は、原則として売却できません。買主は「所有権の完全な取得」、つまり抵当権のない状態での引き渡しを求めることが一般的です。これは、抵当権が残ったままで前所有者が支払いを滞納した場合、自分の所有する不動産が競売にかけられるリスクがあるためです。そのため、売却時にはローンを完済し、決済と同時に抵当権抹消登記を行う必要があります。
特に住宅ローンを利用している場合、金融機関の承諾なしに所有権移転登記を行うことは契約違反となる可能性があります。売却を検討する際は、まず金融機関に相談しておくと安心です。
不動産投資における抵当権の注意点
投資用マンションに抵当権が設定されている場合、返済が滞ると金融機関が差し押さえ、競売にかける可能性があります。所有者が変わると、入居者が立ち退きを求められるリスクもあり、賃貸経営に大きな悪影響を及ぼしかねません。
また、抵当権の存在は将来の売却や新たな融資の妨げにもなり得ます。投資物件の売買では、抵当権が賃貸事業に与えるリスクを十分に理解し、必要に応じて専門家と連携することが重要です。
抵当権に関するよくある誤解
抵当権について、多くの人が抱きがちな誤解を解消しましょう。
・「ローンを完済すれば抵当権も自動的に消える」
ローンをすべて返済しても、抵当権は自動では消えません。法務局での抹消登記手続きが別途必要です。
・「抵当権がついているとつくと勝手に家を売られる」
抵当権が設定されていても、不動産の所有権が金融機関などに移転するわけではありません。
返済を滞納しない限り、金融機関が無断で物件を処分することはできません。抵当権を実行するには、裁判所に競売の申し立てを行う手続きが必要です。
根抵当権とは?通常の抵当権との違い

通常の抵当権と混同されやすいのが「根抵当権(ねていとうけん)」です。
ここでは、両者の違いや根抵当権の特徴・注意点についてわかりやすく解説します。
根抵当権の基本と活用シーン
根抵当権とは、継続的な融資取引に備えて設定される、抵当権の一種です。通常の抵当権と異なり、「極度額」という上限金額の範囲内であれば、借り入れと返済を何度も繰り返し行えます。根抵当権は、その柔軟性から以下のようなケースで活用されます。
・法人向け事業融資
・当座貸越
・運転資金の短期借入
このように、根抵当権は、都度抵当権を設定する手間やコストを省くために利用されています。
抵当権と根抵当権の決定的な違い
通常の抵当権と根抵当権には、以下の違いがあります。

両者の決定的な違いは、「担保する債権の範囲」と「債権額が確定しているか否か」です。
不動産取引における根抵当権の注意点
根抵当権は、通常の抵当権と同様に、完済後も自動的には消滅しません。抹消登記が必須です。
また、根抵当権が付いたままの不動産は、新たな借り入れや売却が難しくなります。なぜなら、極度額の範囲内であれば将来的に再び債務が発生する可能性があるため、買い手や別の金融機関が敬遠するからです。
不動産を売却する際は、根抵当権が設定されていないか登記簿で確認し、必要に応じて金融機関と交渉して抹消手続きを行いましょう。
抵当権に関する不安は専門家へ相談するのが安心

抵当権や根抵当権は、不動産の売買や投資に欠かせない知識です。基本的な仕組みを知っておくことで、安心して取引に臨めます。
とはいえ、登記や契約の実務では専門的な知識や正確な手続きが求められ、初めての方や複雑なケースでは思わぬトラブルにつながることも少なくありません。
不動産取引をスムーズに進めるためには、知識と経験、実績が豊富な専門家への相談が最も安心です。不動産売買やマンション経営のことなら、実績豊富な「明和地所」へぜひご相談ください。
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