不動産売却コラム

公開日:2023.11.29 / 更新日:2023.12.15

不動産売却の3,000万円控除|適用条件・必要書類・申請方法・注意点を解説

マンションやアパート、一戸建住宅など、不動産売却時に気になるのが税金の問題です。支払う金額を可能な限り抑えたいなら、税金に関する知識として知っておくことも大切です。

不動産売却のときに一定の条件を満たすと、「3,000万円控除」の特例が適用されます。この記事では、3,000万円控除の適用条件や必要書類、申請方法など注意すべきポイントについて詳しく解説します。

不動産売却時に利用できる3,000万円控除とは

3,000万円控除」の正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。この特例を利用することで、不動産売却にかかる税金を抑えられます。

住宅や土地を売るときには、譲渡所得税・登録免許税・印紙税がかかります。それぞれの概要は以下のとおりです。

● 譲渡所得税:不動産売却で得た利益に課せられる税金
● 登録免許税:不動産の名義変更に課せられる税金
● 印紙税:売買契約の締結に課せられる税金

3,000万円控除と関係があるのは、この3つのうち「譲渡所得税」です。適用条件を満たす場合、申請すれば最大3,000万円まで譲渡所得から控除されます。

● 売却益が3,000万円以上:譲渡所得のうち3,000万円が控除される
● 売却益が3,000万円未満:譲渡所得が全額控除される

なお、売却の前年・前々年に3,000万円控除の特例を利用している場合は、適用対象外となります。つまり、この特例は3年に1度のサイクルでしか利用できません。なお、3,000万円控除の適用要件について、詳しくは後述します。

譲渡所得税の仕組み

不動産売却で生じた所得のことを「譲渡所得」と呼びます。譲渡所得に所得税・住民税が課税される仕組みです。譲渡所得は、以下の式で計算できます。

● 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
譲渡価額:土地・建物の売却代金
取得費:売却した土地・建物を買い入れた際の購入代金、登記費用など
譲渡費用:土地・建物を売却するために支払った費用、印紙代、仲介手数料など

上記で計算した譲渡所得から特別控除(3,000万円控除など)を引いたものが「課税譲渡所得」です。

● 課税譲渡所得=譲渡所得特別控除

所得税・住民税の金額は、課税譲渡所得の金額に税率をかけて算出します。所得税の税率は、売却した不動産の保有年数によって変わります。

● 保有年数5年超(長期譲渡所得)
所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=20.315%

● 保有年数5年以下(短期譲渡所得)
所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=39.63%

保有年数のカウント方法については、「その不動産を売却した年の11日時点」を基準とします。つまりは購入から売却までの期間が5年超であっても、その年の11日の時点で5年を超えていなければ、短期譲渡所得と判定されるわけです。

不動産売却における3,000万円控除の適用要件

3,000万円控除を利用するための適用要件は、以下のとおりです。

1. 居住用財産であること
特例の対象となるのは、自分が現在住んでいる土地・家屋です。過去に住んでいた場合は、その土地・家屋から離れた日から3年目の1231日までに売却しなくてはなりません。

2. 直近2年間に3,000万円の特別控除、または譲渡損失の特例を受けていないこと
※3,000万円の特別控除については、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によって特例を適用されているケースを除きます。

3. 直近2年間にマイホームの買い替え、交換の特例適用を受けていないこと

4. 売却した不動産について、他の特例適用を受けていないこと

5. 災害による売却の場合、住まなくなってから3年後の1231日までに売却すること

6. 売手と買手が特別な関係でないこと
特別な関係として、親子・夫婦・生計を同一とする親族・売却した家屋で同居する親族、内縁関係の人・特殊な関係の法人などが挙げられます。

なお、自宅を取り壊して土地だけを売却した場合でも、3,000万円控除が適用されます。
ただしこの場合は、以下2つの要件を両方とも満たさなくてはなりません。

● 家屋を取り壊してから1年以内に土地の譲渡契約を締結すること、かつ住まなくなってから3年目の1231日までに土地を売却すること。
● 家屋の取り壊しから譲渡契約の締結までの期間に、他の用途で土地を貸していないこと。

不動産売却における3,000万円控除が適用されないケース

譲渡所得税を抑えられる3,000万円控除ですが、特例が適用されないケースがあるため注意が必要です。不動産売却の予定がある方は、「気付かないうちに適用要件から外れていた……」ということがないように、詳細をよく確認しておきましょう。

居住用財産でない場合

例えば、自宅の建て替えやフルリフォームを行なう場合は、短期間住むための仮住まいを用意することがあります。これは「住むための不動産」ではなく「仮住まいのための不動産」であるため、3,000万円控除の対象外です。

この他に、3,000万円控除の適用を目的として入居した家屋、娯楽用・保養目的の別荘なども適用されません。

相続した不動産の場合

居住用不動産を相続した場合も、適用要件を満たせば3,000万円控除を利用できます。ただし、建て替えをした場合や、別の人が住んでいた場合には特例の適用外となります。

よくあるケースとしては、老人ホームに入所予定の方が、住んでいた持ち家を家族に相続させるケースです。

終身利用を前提として老人ホームに入る場合は、持ち家が空き家となります。その家で生活している実態がなければ、居住用とはいえなくなり、3,000万円控除が適用されなくなるでしょう。一方で、病気などを理由に一時的にマイホームを離れるケースでは、戻ってくることが前提であるため、居住用不動産として判断されます。

今後空き家を相続する可能性があるなら、3,000万円控除の仕組みについて早めに調べておいたほうがよいでしょう。

不動産を誰かと共有している場合

居住用不動産を複数人で共有している場合は、特例の適用可否を共有者ごとに判断します。ただし、「土地を共有しているが家屋は共有していない」というケースの場合、家屋を所有している人だけに特例が適用される点に注意しましょう。

不動産を共有している場合は、全員で最大3,000万円ではなく、共有者のそれぞれに対して3,000万円まで控除が適用されます。例えば、居住用不動産が夫婦の共有名義で、持ち分が2分の1の場合は、夫婦2人分の控除として最大6,000万円(3,000万円×2人分)の特別控除を利用可能です。

なお、共有名義で3,000万円控除の対象となったときには、各自で申請や確定申告を行なう必要があります。

自分が居住していない部分

店舗併用住宅については、自分が居住していた部分だけが特例の対象です。家屋の一部を貸している場合も同様に、居住用の部分のみ特例の対象となります。

「居住しているか」という判断基準であるため、例えば「庭先だけ売却する」というケースは控除の対象外です。しかし「庭先を先に売却して、年内に居住用家屋・土地を売却する」というケースでは、3,000万円控除の対象と認められる可能性があります。

3,000万円控除を利用する予定でいるなら、特例の適用要件から外れないように十分に注意してください。前述した基本の適用要件を確認することはもちろんですが、気になることがあれば不動産会社にも相談してみましょう。

不動産売却における3,000万円控除の必要書類

3,000万円控除を申請する際は、以下の書類が必要です。

● 確定申告書 税務署、国税庁のページ等で取得
● 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) 税務署、国税庁のページ等で取得
● 住民票の写しなど住所の証明書類 役所や郵送等で取得
● 戸籍の附票の写し 役所、郵送等で取得
● 売却時・購入時の書類の写し 本人が作成
● 譲渡した不動産(土地・建物)の全部事項証明書 法務局のページ等で取得

住民票の写し・戸籍の附票の写し(または消除された戸籍の写し)に関しては、住民票記載の住所と、譲渡した不動産の所在地が異なる場合に必要となります。このとき、契約締結日の前日の住所が判定基準です。譲渡した建物に居住していた証明として、公共料金の領収書や郵便物などが必要になるケースもあります。

申請には複数の書類が必要となるため、早めに準備をしておきましょう。状況によって必要書類が異なるため、不動産会社にも事前に確認しておくと安心です。

不動産売却における3,000万円控除の申請方法と申請期間

不動産売却の3,000万円控除は、いつ頃どのような形で申請すれば良いのでしょうか。ここでは、控除の申請期間と申請方法を併せて説明します。

申請方法

3,000万円控除を申請するのは、確定申告のタイミングです。確定申告の手続きは、所轄税務署で行ないます。必要書類をすべてそろえて提出しましょう。

このとき注意したいのが、譲渡所得が3,000万円を下回るケースです。3,000万円以下の場合は譲渡所得から控除されるため、その分の税金の支払いがなくなります。しかし、3,000万円に満たない場合でも、確定申告と特別控除の申請は必要です。申請を忘れてしまうと3,000万円控除が適用されなくなるため、十分に気を付けましょう。

申請期間

3,000万円控除の申請は、不動産売却の翌年の確定申告期間(216日から315日)に行ないます。

例えば、令和4年(2022年)に不動産を売却した場合、令和5年(2023年)の216日から315日が確定申告期間です。ただし感染症対策などの理由で、申請期間が変更される場合もあります。その年の申請期間については、国税庁のWebサイトを確認してください。

3,000万円控除の申請、確定申告の手続きには、それなりの時間がかかります。確定申告の資料をまとめるのに手間取ったり、書類を集めるのに時間がかかったりして、期間内に終わらないのは避けたいものです。

3,000万円控除の適用要件に該当したら、できるだけ早めに申請準備をしていきましょう。

3,000万円控除+「10年超所有軽減税率の特例」の併用も可能

売却する不動産の保有年数が10年を超える場合は、3,000万円控除と併せて「10年超所有軽減税率の特例」も適用可能です。こちらも譲渡所得の税率を軽減する制度で、適用要件が決まっています。

10年を超える不動産を売却したとき、6,000万円を超えるかどうかによって税率が変わります。

● 売却益が6,000万円以下:14.21%
● 売却益が6,000万円超:20.315%

3,000万円控除との併用が可能なだけでなく、3,000万円を控除したうえでの適用となります。併用できれば大幅な節税となるため、申請を忘れないようにしっかりとチェックしておきましょう。

3,000万円控除と「住宅ローン控除」は併用できないので注意!

不動産売却の3,000万円控除、不動産購入の住宅ローン控除は併用できません。不動産売却をしたあと、新たにマイホームを購入する予定の方は十分に気を付けてください。

3,000万円控除を利用した場合、前後2年間は住宅ローン控除が利用できなくなります。
3,000万円控除をいったん利用すると、適用の変更や修正はできません。

3,000万円控除と住宅ローン控除のどちらを選ぶべきなのかは、不動産の状況によって異なります。住宅を買い替える際には、両方のパターンでシミュレーションをしたうえで、より節税になるほうを選ぶとよいでしょう。

なお、適用条件にもあったとおり、マイホームの買い替え・交換の特例、譲渡損失の特例との併用もできません。節税対策を万全にするため、不動産会社のアドバイスを参考にしつつ、どの特例を選択すべきかを慎重に判断することが大事です。

まとめ

不動産売却を考えているなら、3,000万円控除をはじめとした特例についてチェックしておきましょう。適用要件には細かな決まりがあるので、国税庁のページも参考にしながら理解を深めていきたいところです。

条件さえ合えば、最大3,000万円の控除を受けられるだけでなく、10年超所有軽減税率の特例も併用できます。一方で住宅ローン控除のように、3,000万円控除と併用できない特例もあるため注意が必要です。

控除を利用する場合は、適用可能な期間内に不動産売却を行なわなくてはなりません。納得のできる価格でスピーディーに売却するためにも、信頼できる不動産会社を見つけましょう。

明和地所では、不動産のプロがお客様の条件に合った減税方法の提案から、実際の売却のサポートまでご提案させていただきます。

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