不動産売却コラム

公開日:2024.08.28 / 更新日:2024.08.30

不動産売却時に売主が知っておくべき契約不適合責任(瑕疵担保責任)をわかりやすく解説

不動産を売却する際は、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を正確に理解することが大切です。2020年4月1日に施行された改正民法で、瑕疵担保責任は契約不適合責任に変更されており、この記事では、契約不適合責任をわかりやすく解説します。

不動産は売ったら終わりではなく、売却後も売主は一定の責任を負わなければなりません。不動産を売却する際、売主は契約不適合責任(瑕疵担保責任)について理解しておくことが大切です。この記事では、不動産を売却する際の契約不適合責任を売主の立場でわかりやすく解説します。2020年に施行された民法改正を踏まえて解説するため、改正前と改正後の違いを知りたい方も参考にしてみてください。

瑕疵担保責任とは?

2020年4月1日に改正民法が施行され、これまでの瑕疵担保責任の規定は「契約不適合責任」に変更されました。改正民法の施行日前(2020年3月31日まで)に締結された売買契約については、契約不適合責任ではなく、瑕疵担保責任(改正前民法570条)が適用されます(民法附則34条1項)。

ここでは、2020年4月1日以前の改正前の民法における瑕疵担保責任について解説します。

瑕疵担保責任の概要

不動産売買における瑕疵担保責任とは、売却した不動産に隠れた瑕疵があった場合、売主はその欠陥について一定の責任を負うことを指します。

瑕疵(かし)とは、「傷」「不具合」「欠陥」などを指し、例えば、売却した家にシロアリ被害が見つかったり、雨漏りが発生したりすることなどが瑕疵に該当します。

改正前の民法では、物件を購入する際に買主が瑕疵の存在を知らず、相当の注意を払っても瑕疵を発見できなかった場合、買主が購入後に「隠れた瑕疵」を発見すると売主は損害賠償や契約解除を求められる責任がありました(無過失責任)。

2020年の民法改正では、「隠れた瑕疵」という要件が削除され、「契約の内容に適合していない(契約不適合)」に改められました。これにより、売買契約書に瑕疵の存在が記載されているかが重要となります。

瑕疵担保責任の具体例

不動産における瑕疵は一般的に「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」の4種類に分類されます。

物理的瑕疵とは、雨漏りやシロアリ被害など、物件自体に物理的な欠陥がある状態を指します。

法律的瑕疵とは、都市計画法による規制や建築基準法違反など、法律上の規制によって、物件の利用が制限されている状態のことです。

心理的瑕疵とは、事故物件や心霊現象が噂される物件など、心理的に不安を感じさせる状態を指します。

環境的瑕疵とは、有害物質を排出する工場など、嫌悪施設の存在を指します。

民法改正前は、これらの瑕疵の存在を知っていたにも関わらず、買主に事実を告げずに売却すると、売主は瑕疵担保責任に問われました。

民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

民法改正の結果、不動産売買における瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に移行しました。この改正により、買主の保護が強化され、売主はより広範な責任を負うことになりました。

契約不適合責任とは、売却した不動産が契約の内容に適合しない場合、買主が売主に対して、修理や代金の減額、契約解除などを求めることができる制度です。従来の「隠れた瑕疵」という概念よりも、より広い範囲の瑕疵が対象となり、買主は善意無過失に関係なく権利を行使できるようになりました。

売主は、建物の物理的な欠陥や法令違反、瑕疵の説明義務違反など、さまざまなケースで責任を問われる可能性があります。そのため、売主は物件の調査を徹底し、契約書の内容を慎重に検討することが必要です。

民法改正(2020年4月施行)のポイント

ここでは、2020年4月1日に施行された民法改正のポイントを解説します。

適合性の判断基準が変更された

改正民法では、旧法の「隠れたる瑕疵」という要件が「契約不適合(契約の内容に適合しない)」に改められました。

契約不適合責任では、売却する物件に「隠れたる瑕疵」があるかどうかよりも、契約内容に適合しているかどうか(その瑕疵が売買契約書に書かれているか)が問題になります。

例えば、買主が雨漏りすることを了承しており、売買契約書に雨漏りが発生していることを明記していれば、売主は契約不適合責任に問われません。しかし、売買契約書に雨漏りが発生していることを明記していなかった場合だと、売主は契約不適合責任に問われます。

売却する物件に瑕疵がある場合、売主は売買契約書に瑕疵の内容を漏れなく記載することが重要です。

買主が瑕疵を知っていても売主に責任を追及できるようになった

旧法では、買主が瑕疵(欠陥)を知らず、そのことについて過失がないことを証明しなければならず、売主に対して責任を追及するのが難しい場合がありました。

改正民法では「契約の内容に適合するか」が重視されるようになったため、買主が契約の内容に適合しない点(契約不適合)を発見した場合、売主がその旨の説明義務を怠っていれば、買主は売主に対して責任を追及できます。

具体的には、売主が雨漏りなどの物件の瑕疵について説明をしなかった場合、買主が瑕疵の存在を知っていたとしても、説明義務違反を理由に売主に対して責任を追及することが可能です。

買主の請求できる権利が増加した

旧法では、買主は売主に対して「損害賠償」と「契約解除」の2つだけを請求できましたが、新法では「追完請求」と「代金減額請求」が加わりました。

追完請求とは、売却した物件が契約の内容に適合していない場合、完全なものの引き渡しを請求することです。例えば、契約時に雨漏りの発生を説明しなかった場合だと、雨漏りの修理を売主に請求できます。

代金減額請求とは、完全なものの引き渡しができない場合、代金の減額を請求することです。例えば、「雨漏りの修理ができないのなら代金を減額してください」と請求することが代金減額請求に該当します。

「追完請求」と「代金減額請求」が加わったことにより、売主の責任は以前よりも重くなったといえるでしょう。

買主の権利行使期間が延長された

旧法では、買主は目的物に瑕疵を発見した場合、1年以内に損害賠償請求などの権利を行使しなければ、その後の権利行使が制限されていました。

しかし、改正民法では、買主は契約不適合を知った時から1年以内に売主に通知し、その後一定期間内に損害賠償請求、契約の解除、追完請求、代金の減額などの権利を行使することで、その権利を確保できるようになりました。

契約不適合の事実を通知後、時効が到来する前に権利を行使すればよく、実質的に買主の権利行使期間が延長されたといえます。

ちなみに、買主が権利を行使できなくなる時効の期間は、引き渡しから10年または買主が事実を知ってから5年のいずれか早いほうです。

なお、契約不適合責任の免責特約で期間を短縮することは可能であり、期間を短縮することで売主の責任は軽減されます。

契約不適合責任の免責

契約不適合責任の免責とは、売却した不動産に瑕疵があった場合に、売主の責任の一部または全部を免除することを指します。免責することにより、売主は不動産売買における瑕疵に関するリスクを軽減できます。

契約不適合責任の免責は可能

契約不適合責任は任意規定であり、売主と買主の双方が同意すれば、契約不適合責任を免除する特約(免責特約)は有効になります。免責事項は売主と買主の双方が合意し、売買契約書に明確に記載する必要があり、口約束だけでは効力は発揮しません。

免責事項の一例として、物件の引き渡し後にシロアリ被害や雨漏りなどが見つかった場合でも、売主は責任を問われないような規定が挙げられます。このような特約は売主にとっては大変有利であり、免責事項を増やすほど物件を引き渡してからの責任は軽減されます。

ただし、免責特約の内容によっては無効になるケースもあり、どのような免責特約をすると無効になるかを知っておくことが大切です。

免責特約が無効になるケース

民法第572条の規定により、売主が瑕疵の存在を知りながら買主に告げなかった場合、その瑕疵についての免責特約は無効となります。

例えば、雨漏りが発生していることを知りながら、その事実を買主に告げなかった場合、引き渡し後に雨漏りが見つかっても売主は責任を問われないとする特約は無効です。

しかし、雨漏りが発生していることを買主に伝え、買主の合意が得られれば、契約書に明記することで免責特約は有効になります。

なお、売主が個人の場合、基本的には民法第572条の規定のみが適用されます。一方、売主が不動産業者や法人の場合、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)、消費者契約法、宅地建物取引業法などの法律によって免責特約が無効になることがあるため、注意が必要です。

契約不適合責任に問われないようにするための対策

契約不適合責任に問われると、買主から損害賠償請求や追完請求などを受ける可能性があります。ここでは、契約不適合責任に問われないようにするための対策を解説します。

不動産会社や買主に瑕疵の存在を伝える

瑕疵の存在を隠して売却すると契約不適合責任に問われる可能性があるため、物件に瑕疵がある場合は、不動産会社や買主に正直に話すことが大切です。契約前に瑕疵の存在を伝えておくことで、引き渡し後のトラブルを未然に防げます。

瑕疵は雨漏りなどの物理的瑕疵だけではなく、環境的瑕疵や心理的瑕疵も報告する必要があります。マンションを売却する際は、同じマンション内で起きた重大事件や事故なども報告すべきです。

不動産会社に仲介を依頼する際は、物件状況等確認書と呼ばれるヒアリングシートに記載を求められます。不動産会社が用意したヒアリングシートに瑕疵の内容や過去の履歴を記載すると、不動産会社は瑕疵の内容を踏まえて買主を探してくれます。

売買契約書に免責事項を明記する

契約不適合責任の免責特約は売主にとってメリットがあるため、不動産会社と相談して、可能な限り売買契約書に免責事項を明記することが望ましいです。

ただし、免責事項が多い契約書は買主から不信感を持たれ、売却が難航する可能性も高まります。また、瑕疵が存在する物件は販売価格が安くなる傾向があり、買主から値下げを要求されることもあるでしょう。

不動産会社は、売主と買主の双方の立場を考慮し、両者が納得できるような契約書を作成する必要があります。免責特約は買主にとってはデメリットであるため、免責特約を契約書に盛り込む際には、その内容について買主に十分な説明を行い合意を得なければなりません。

住宅診断(ホームインスペクション)を行う

売主は契約不適合責任に問われないようにするため、売却前に住宅診断(ホームインスペクション)を行うことが望ましいです。

ホームインスペクションとは、建物の専門家であるホームインスペクターが建物の状態を客観的に調査し報告するサービスであり、専門家の視点で物件の状態を客観的に把握でき、潜在的な瑕疵を事前に発見できます。

物件の引き渡し後に瑕疵が発覚するリスクを抑えられるため、安心して取引ができるようになります。

中古一戸建てホームインスペクションだと料金は6万円程度で、中古マンションホームインスペクションの料金は5万円程度です。費用はかかりますが、契約不適合責任に問われないようにするための有効な対策になります。

契約不適合責任に詳しい不動産会社に仲介を依頼する

契約不適合責任に問われないようにするためには、契約不適合責任など、不動産に関する法律に精通している不動産会社に仲介を依頼することが大切です。

不動産会社によっては、2020年4月に施行された契約不適合責任についての理解が不足しており、的確なアドバイスが受けられない場合があります。このような不動産会社に仲介を依頼すると、誤った内容の契約書を作成され、不利益を被ることもあるでしょう。

これまで、豊富な不動産取引の実績があり、利用者の評判がよい不動産会社だと安心です。相談する際の担当者の対応や専門知識などを確認し、複数の不動産会社を比較して信頼できる不動産会社に仲介を依頼しましょう。

不動産売却を相談してみる

なお、契約不適合責任に問われた場合、売主は大きな負担を負う事になるのではと不安な方は、住宅瑕疵担保責任保険に加入しておくと安心です。住宅瑕疵担保責任保険とは、新築住宅や中古住宅の売買において、住宅に重大な瑕疵が見つかった場合に、補修費用や損害賠償を保険でカバーする制度です。売主と買主の双方にとってメリットがあり、売主は万一の瑕疵発生時に備えられ、買主は住宅の瑕疵に対する補償が確保されるため、安心して住宅を購入できます。

ただし、保険に加入するには一定の基準があり、検査に合格しなければ加入できません。また、検査料や保険料として数万円程度の費用がかかります。住宅瑕疵担保責任保険に加入する際は、どのような瑕疵が補償の対象になるのかを確認することが必要です。

瑕疵のある不動産を売却する方法

瑕疵のある不動産の売却は、通常の不動産と比べると難航する可能性が高いです。しかし、売り方を工夫することで、スムーズに売却できる可能性を高められます。ここでは、瑕疵のある不動産を売却する方法を解説します。

価格を値引きする

瑕疵のある物件は売りにくいため、値引きして売却するのが基本です。瑕疵の内容にもよりますが、売値を相場価格の50~80%程度にすることが一つの目安になります。不動産会社と相談して、適切な売り出し価格を決めましょう。

なお、事故物件(心理的瑕疵物件)の場合、事情によっては相当な値引きが必要になることがあり、通常の不動産と同様の相場価格で売却するのは困難です。

どのような物件が事故物件に該当するかは、国土交通省が公開しているガイドラインで把握できます。ガイドラインには法的拘束力はありませんが、事故物件の判断基準になります。事故物件を売却する際は、不動産会社としっかり相談し、適切な価格設定を行いましょう。

国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(概要)」

建物を解体して更地にしてから売却する

建物に数多くの瑕疵がある場合、解体して更地にすると売りやすくなる可能性があります。更地にすることで、土地は相場価格で売却でき、建物に関する契約不適合責任を回避できるというメリットが得られます。

しかし、建物を解体するには多額の費用がかかるだけでなく、固定資産税が上がる可能性や、解体後の土地の利用制限など、デメリットの考慮も必要です。また、更地にしたとしても、土地の形状や周辺環境によっては、売却に時間がかかる場合もあります。

そのため、解体して更地にするかどうかは、建物の状態や土地の特性、周辺環境、売却の目的などを総合的に検討し、不動産会社と綿密に相談したうえで決めましょう。

不動産会社に買い取ってもらう

仲介で売れない場合は、不動産会社に買い取ってもらうことも検討しましょう。仲介で売却する場合と比べると買取価格は低くなりますが、素早い現金化が可能です。特に、建物に瑕疵が多く、早期の売却を希望する場合には買取は有効な手段といえるでしょう。

また、仲介で売却する場合は、購入希望者の内覧対応が必要ですが、買取だと不動産会社の担当者がの訪問のみで済みます。面倒な内覧対応を避けたい方にも買取は適します。

なお、不動産会社に買い取ってもらう場合、売買契約書に契約不適合責任の免責特約があるかを確認することが大切です。契約不適合責任の免責特約がなければ、買取後に契約不適合責任に問われる可能性があります。

不動産を売却する際は契約不適合責任に問われないよう注意しましょう

従来の瑕疵担保責任は改正民法で契約不適合責任に変更され、売主の責任は以前よりも重くなっています。不動産を売却後に契約不適合責任に問われないようにするためには、物件に瑕疵がある場合、契約書に明記することが大切です。

瑕疵のある物件を売却するには、契約不適合責任に精通している不動産会社に依頼すると、安心して売却できるようになります。明和地所の仲介は、これまで数多くの不動産を売却した実績があり、契約不適合責任などの不動産に関する法律に精通しています。

不動産を安心して売却したい場合は、お気軽にご相談ください。

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