公開日:2024.07.12 / 更新日:2024.07.18
マンションでもリバースモーゲージは利用できる?対象となる不動産や利用時の注意点を解説

リバースモーゲージは、「Reverse(リバース=逆)」と「Mortgage(モーゲージ=抵当・抵当権)」を組み合わせた言葉で、直訳では「逆抵当融資」を意味します。
住み慣れたマンションに住み続けながら生活を支えられるリバースモーゲージは、住み替えやリースバックに並ぶ選択肢といえます。
しかし、リバースモーゲージは一般的に一戸建で利用されるイメージがあるため、マンションでリバースモーゲージが利用できるのかと不安な方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、リバースモーゲージの概要や、マンションでリバースモーゲージを利用する際の注意点、メリット・デメリットについて解説します。
目次
リバースモーゲージはマンションでも利用できる?

リバースモーゲージは一戸建だけでなく、マンションでも利用できます。
ただし、利用時の条件はリバースモーゲージを扱う金融機関によって異なるため、一部のマンションではリバースモーゲージを利用する際に注意が必要です。
まずは、リバースモーゲージの概要と、マンションでリバースモーゲージを利用する際の注意点を見ていきましょう。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関から融資を受けられる高齢者向け(若くても55歳以上)の融資制度のことです。
自宅を担保とすることで、年金のように毎月一定額の融資を受けられることから「住宅担保年金」とも呼ばれ、おもな取り扱い先は民間金融機関や公的金融機関となります。
リバースモーゲージの返済方法としては、毎月利息分のみを返済し、契約者が死亡した際に自宅を売却して元本分の返済に充てる方法か、契約者の死亡時に自宅を売却して元本分・利息分ともに一括返済する方法があります。また、契約内容によっては相続人が返済することもできます。
リバースモーゲージで借り入れた融資は事業・投資資金に充てることはできませんが、生活資金のほか、高齢者向け施設にかかる費用や住宅ローンの返済などに充てることが可能です(金融機関によっては使途の制限は異なります)。
リバースモーゲージを利用すると、住み慣れた自宅を離れることなく生活を維持できるため、老後の選択肢が大きく広がるでしょう。
また、毎月一定額ではなく、まとまった金額で一括融資を受けられる「一括融資型」のリバースモーゲージも存在します。一括融資型なら、住宅ローンの一括返済や自宅のリフォーム、住み替え資金に充てることができ、老後に向けてさらに選択肢を広げられるでしょう。
リバースモーゲージはマンションでも可能!ただし注意点が
リバースモーゲージは、前述のように一戸建だけでなくマンションでも利用できます。
ただし、築年数が経過しても土地の価値が残りやすい一戸建に比べると、土地と一体型のマンションは築年数の経過によって担保価値が下がりやすく、一戸建よりも低い融資額となることが一般的です。
マンションをリバースモーゲージの対象外とする金融機関も多いため、マンションでリバースモーゲージを検討する際は、マンションを融資の対象としている金融機関を探すことから始めなければなりません。
リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージは、不動産を所有している高齢者であれば利用を検討できる融資制度で、以下のようなメリットがあります。
●老後の資金繰りに役立つ
●不動産に住み続けることができる
●相続税対策としても活用できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
老後の資金繰りに役立つ
リバースモーゲージは、自宅をすぐに売却せずとも定期的に融資を受けられたり、まとまった金額で融資を受けられたりするため、公的年金以外の収入源として老後の資金繰りに活用できます。
リバースモーゲージの融資は、契約者が死亡した際に自宅の売却と同時に返済完了となるため、返済計画に悩まされる心配がありません。また、利息分のみを毎月返済するタイプもありますが、元本分・利息分ともに死亡時に一括返済するタイプを選べば、毎月の返済負担も減らせます。
不動産に住み続けることができる
一般的な不動産売却(仲介)や不動産買取と異なり、リバースモーゲージでは担保にする不動産にそのまま住み続けることが可能です。これまでの生活を大きく変えることなく老後の生活を送れるため、高齢者施設への入居や住み替えが難しいと感じる方には特にメリットとなるでしょう。
また、金融機関によっては、契約者が死亡した際に契約を配偶者へ引き継げるような配慮があります。配偶者の住まいに関するリスクを回避したいという場合も、リバースモーゲージはメリットのある選択肢といえます。
相続税対策としても活用できる
相続税の生前対策として、リバースモーゲージを利用して毎年少しずつ生前贈与を行なう方法があります。
不動産は分割ができないことから生前贈与が難しい資産ですが、リバースモーゲージで受けられる融資を相続人へ毎年少しずつ贈与することで、将来相続人にかかる相続税を減らせます。
また、相続人が複数人いる場合は、生前贈与で資産を均等に分配することで、将来の揉めごとを未然に防げるでしょう。リバースモーゲージでは、契約者が死亡した際に不動産が売却されるため、特定の相続人が不公平に不動産を相続してしまうといった心配もありません。
ただし、自宅を残すことで将来相続人にかかる相続税を減らせる制度もあるため、相続税対策としてリバースモーゲージを検討する際は、慎重な判断が必要です。
リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージには、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。
●マンションは対象外なことが多い
●高額な借り入れはできない
●金利は一般的な住宅ローンよりも高い
●推定相続人の同意が必要な場合が多い
リバースモーゲージの利用を検討する際は、自分たちの老後においてデメリット以上のメリットがあるか、デメリットによる弊害がないかを十分に確認することが大切です。
マンションは対象外なことが多い
前述しましたが、不動産は時間が経つほど価値が下がることが一般的で、土地の価値が残りやすい一戸建に比べると、マンションは価値が下がりやすい傾向にあります。そのため、マンションをリバースモーゲージの対象外とする金融機関が多く、指定地域以外のマンションは対象外とされているケースもあります。
住んでいるマンションでリバースモーゲージの利用が難しい場合は、マンションに住んだまま売却が可能な「リースバック」を検討するのがおすすめです。
リースバックは、不動産売買や不動産賃貸の契約をともなうため、一般的には金融機関ではなく不動産会社が主体となるサービスです(リースバックについて詳しくは後述します)。
高額な借り入れはできない
リバースモーゲージの融資額は自宅の評価額に依存し、公的な融資制度では評価額の50%~60%に設定されているため、評価額以上の高額な借り入れはできません。
また、土地や建物の評価は定期的に見直されるため、価値の変動により評価が下がり、すでに借り入れた金額が融資限度額を上回った場合は、当初の計画にはなかった返済が必要となることもあります。
こうしたリスクを避けるには、融資限度額いっぱいまでの借り入れをしない、万が一のケースに備えて退職金や預貯金を残しておくといった対策が有効です。
金利は一般的な住宅ローンよりも高い
住宅ローンの金利相場は、金利タイプにより以下のように異なります。
<変動金利>
0.3%~0.5%
<固定金利期間選択型>
1.0%~1.5%
<全期間固定金利(フラット35)>
1.7%前後
一方、リバースモーゲージの金利相場は3%です。変動金利が多いことから金利上昇リスクが高く、一般的な住宅ローンと比べると金利が高額になりやすいといえます。
また、リバースモーゲージで毎月利息分を返済するタイプの場合は、住宅ローンよりも高い金利、かつ金利上昇によって毎月の返済負担が大きくなる恐れがあるため、利用時は慎重に資金計画を立てる必要があります。
推定相続人の同意が必要な場合が多い
推定相続人とは、資産の持ち主が死亡した際に、その資産の相続人となる可能性が高い人のことを指します。
相続をめぐる紛争に発展することを防ぐため、多くの金融機関が、リバースモーゲージの利用に際し、推定相続人全員の同意が必要という条件を設定しています。
リバースモーゲージの利用において、推定相続人から同意を得なければならないという法律はありませんが、金融機関が定める利用条件を満たせないと、そもそも融資制度を利用できないため注意しましょう。
また、金融機関によっては、推定相続人からの同意を得るほかにも、同居家族の制約や具体的な収入下限が定められている場合もあります。
住宅金融支援機構の【リ・バース60】とは

リバースモーゲージを提供する民間企業は少なく、一般的には住宅金融支援機構が提供する【リ・バース60】という商品を、提携する民間の金融機関が取り扱っています。
【リ・バース60】とは、満60歳以上の方を対象としたリバースモーゲージです。一戸建やマンションに関係なく利用できますが、詳細な利用条件は住宅金融支援機構と提携する金融機関ごとに異なり、金融機関と住宅金融支援機構でそれぞれ審査も行なわれます。
また、【リ・バース60】の融資は基本的に生活資金としての使用が認められず、使途は以下のように定められています。
<【リ・バース60】の使途>
●契約者が住むための住宅の建築資金
●契約者が住むためのマンションや一戸建の購入資金
●契約者が住んでいる住宅のリフォーム資金
●高齢者向け施設への入居一時金
●返済中の住宅ローンの借り換え など
リバースモーゲージが向いている人

ここからは、リバースモーゲージがどのような人に向いているのか解説します。
一戸建(土地)を所有している人
土地は価値が下がりにくく、リバースモーゲージの対象となる不動産です。交通網の発達や地域開発などにより土地の価値が高まると、リバースモーゲージで借り入れできる限度額も上がる可能性があります。
配偶者に自宅を残したい場合は、契約者が死亡した際に配偶者に契約を引き継げるかどうか事前に確認しましょう。ご家族に自宅を残す必要がない方の場合、一戸建でリバースモーゲージを利用することで、悠々自適なシニアライフを満喫できるでしょう。
老後の資金繰りに不安がある人
年金支給額に不安がある、退職金や預貯金が少ないという方でも、リバースモーゲージなら今ある住まいを担保にして融資を受けられます。自宅に住みながら老後の資金繰りができるため、いざというときの心強い備えになるでしょう。
住宅ローンの残債があって老後の支払いに不安がある方も、リバースモーゲージに借り換えすることで、毎月支払う金額をリバースモーゲージの利息分のみ、またはゼロにすることも可能です。
介護費用に困っている人
老後は介護や高齢者施設への入居などで、まとまった資金が必要になることが考えられます。
生命保険文化センターの2021(令和3)年度の調査(※)によると、平均的な介護期間である61.1ヵ月の間にかかる介護費用の総額(自己負担分のみ)は、約580万円といわれています。また、高齢者施設への入居が必要となった場合、入居一時金として平均約100万円が必要です。
このように、介護費用としてまとまった資金が必要な方は、一括融資型のリバースモーゲージを利用することでライフスタイルを変えずに資金調達ができ、一時的な金銭負担を軽減できるでしょう。
※出典:
(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
相続税対策に利用したい人
将来、ご家族に相続税の負担をかけたくない方は、リバースモーゲージで相続税対策を行なえます。具体的には、リバースモーゲージで借り入れた融資を、毎年少しずつご家族に生前贈与することで遺産額を減らし、将来の相続税を減らす方法です。
ただし、リバースモーゲージには、金利上昇や担保価値の低下による残債のリスクがあります。相続人に残債を引き継がせたくない場合は、相続人が残債を返済する必要のない「ノンリコース型」を選びましょう。
利用を検討しているリバースモーゲージが「リコース型」の場合は、相続人に残債が引き継がれるため注意が必要です。
リバースモーゲージのリコース型とノンリコース型のおもな違いは、以下のとおりです。
<リコース型の特徴>
●不動産を売却して残債がある場合、相続人が返済する必要がある
●ノンリコース型と比べて金利が低い
<ノンリコース型の特徴>
●不動産を売却して残債があっても、相続人が返済する必要がない
●リコース型と比べて金利が高い
マンションをリバースモーゲージできない場合はリースバックがおすすめの理由

マンションはリバースモーゲージの対象外になることが多く、以下のようなマンションの場合、リバースモーゲージを利用できない可能性があります。
●築年数が20年以上
●駅からの距離が遠い
●郊外や田舎など、人口が少ないエリアに位置している
●評価額が低い
リバースモーゲージの利用が難しいマンションでは、不動産会社が提供するリースバックのサービスを活用することで、老後に向けた資金調達や備えが可能となります。
リースバックとは、不動産会社に自宅を買い取ってもらい、賃貸契約を結ぶことで売却後も自宅に住むことができる不動産サービスのことです。
リースバックでは自宅を不動産会社へ売却するため、売却金としてまとまった金額を受け取れ、賃貸契約後は家賃を支払いながら自宅に住むことができます。
リバースモーゲージと異なり、リースバックでは金融機関の審査がないため、リバースモーゲージの利用条件を満たせない場合はリースバックを検討するとよいでしょう。
リバースモーゲージが困難なマンションは明和地所へご相談ください
明和地所では、マンションを現金一括で買い取るリースバックサービスを提供しています(一戸建は提携業者への紹介となります)。
明和地所のリースバックには、使途や同居家族の制約、親族の同意などの利用条件がなく、年齢の上限も設けられていません。一般的な賃貸契約で必要となる連帯保証人も不要のため、老後の暮らしにお悩みの方は、ぜひ一度明和地所へご相談ください。
※リースバックを利用する際は最長2年の定期建物賃貸借契約を締結させていただきます。
※契約期間により保証会社に加入していただきます。
まとめ
リバースモーゲージは、所有する不動産を担保にして金融機関から融資を受けられる制度です。マンションもリバースモーゲージの利用が可能ですが、融資内容や利用条件は金融機関により異なり、マンションを対象外とする金融機関も多く存在します。
老後に向けた資金調達や備えのために、自宅マンションのリバースモーゲージを検討している方は、メリットとデメリットを十分に把握し、慎重な資金計画を立てましょう。状況に応じてリースバックを選択肢に加えることで、より柔軟に老後のプランを立てられるでしょう。