ディスカバー北海道

白老三大名所
-SIGHTSEEING SPOT-

アイヌ民族が尊んだ神々との生活は、自然の恵みがもたらしたものでした。山、森、湖と、今でも白老には手つかずの大自然が残されています。白老を代表する名所「インクラの滝」「ポロト湖」「倶多楽湖」にスポットをあて、その魅力を紹介します。

野鳥の声が賑やかに聞こえる

三名所の一つ「インクラの滝」

白老町には大きく分けて5本の川が流れ、上流に多くの滝があります。中でもスケールの大きさから、インクラの滝・白老滝・社台滝が有名です。比較的アクセスしやすい「インクラの滝」を訪れてみました。国道36号線にインクラの滝への道を示す案内板が掲げられています。案内板に従って道なりに進み、JR室蘭線の踏切を超えるとすぐにダート(未舗装道路)が出現。電柱などの人工物が見えなくなると、野生動物の楽園である大自然が広がります。野鳥の声が賑やかに聞こえ、時にはエゾシカが顔を見せてくれます。

二つの滝が並行して流れているため「別々の滝」とも呼ばれる(写真提供:白老観光協会)

「日本の滝百選」の一つ

約9㎞のダートを抜けるとインクラの滝に到着。滝の名称である「インクラ」は、切り出した木材を運ぶインクライン設備(貨物用ケーブルカー)がかつてこの地にあったことに由来しています。また、左右に滝が流れていることから「別々の滝」とも呼ばれています。落差は約44m、滝幅は約10mあり、水量も多く「日本の滝百選」に選定されたインクラの滝の荘厳さに驚くことでしょう。

多くの生き物が生息するポロト湖(写真提供:白老観光協会)

アイヌの伝説が残る「ポロト湖」

ポロト湖は白老の南東部に位置する淡水湖で、西側に隣接するポント湖と対になっています。ポロト湖はアイヌ語で「大きな湖(沼)」。ポロト湖の北側には広大な湿地帯が形成され、ミズバショウの群生地として知られています。ハクチョウ、オジロワシ、カワセミなど約140種類もの野鳥が観察でき、ヤマメ、ワカサギなど約13種類の淡水魚も生息しています。

カヌーを借りて湖上からポロトの自然を感じることも(写真提供:白老観光協会)

その時々で違う表情を見せてくれる

ポロト自然休養林内インフォメーションセンターでは、自転車やカヌーのレンタルが行われており、色々な方法でポロトの自然に触れることができます。同センターの管理人は「駅を背にウポポイから奥はほとんど手つかずの自然。その時々で違う姿を見せてくれるので、毎日眺めていても飽きません。」と言います。
森林はクリ、ミズナラ、イタヤカエデなどの自然林で構成され、約80本もの巨木が確認されるなど、まさに原始の森そのもの。北海道の森林は開拓時代に伐採されたものが多く、これだけの自然林が残されていることは貴重です。まさに白老の宝と呼べるでしょう。

二つの湖にまつわるアイヌの悲しい伝説
ポロト湖には「涙でできた二つの湖」というアイヌの伝説が伝えられています。
昔、白老コタン(集落)に仲睦ましい若夫婦と男の子の三人家族が住んでいました。
ある日、夫は一人で狩りに出かけましたが、夜になっても帰らず、やがてコタン総出の捜索となりました。捜索は何日も続けられたものの、行方がつかめず、とうとう打ち切りに。しかし、母子は諦めることができず、毎日丘の上に登り、夫の帰りを待ち続けました。ある晩、ひときわ高い母子の泣き声がコタンに鳴り響き、途絶えました。人々は闇の中、丘に向かったものの二人の姿はなく、やがて夜が明け、水を湛えた二つの湖を発見しました。大きな湖(ポロト)は妻の涙で、小さな湖(ポント)は子どもの涙でできたものだと伝えられています。

倶多楽湖(写真提供:白老観光協会)

日本で一番丸い湖「倶多楽湖」

倶多楽(くったら)湖は、支笏洞爺(しこつとうや)国立公園特別区域にある周囲約8㎞の日本一丸いカルデラ湖です。国内トップクラスを誇る透明度の高い湖としても知られ、2001年度環境省による公共用水域水質測定結果で湖沼部門全国1位に輝きました。1909年に十和田湖から、1969年に支笏湖からヒメマスを放漁。その後ニジマスも放たれています。山奥にあり近寄りがたいことから、アイヌでは「カムイ・トー(神の湖)」と呼ばれていました。

こんこんと湧き出るカムイ・ワ?ア(神・水)

天然の湧水が溢れ出す

倶多楽湖の伏流水は大地に流れ出し、湧水となります。倶多楽湖を水源にする虎杖浜(こじょうはま)の親水公園から「カムイ・ワッカ(神・水)」と呼ばれる湧水がこんこんと噴き出し、水を汲みに来る人が後を絶ちません。この水は町の水道水として使われており、親水公園の管理や水質検査は役場の水道課が行っています。ミネラルを含んだ冷たい水ですが、天然水のため飲用時は必ず煮沸してからの利用が好ましいとのことです。

釣り堀で釣った魚がその場で食べられる

水質の良さを生かした釣り堀が併設

親水公園付近では、水質の良さを生かした淡水魚の養殖が盛んです。釣り堀を併設しているので、自分で釣った魚をその場で調理してもらうこともできます。澄み切った水で育てられたニジマスやヤマメは身のしまりがよく、塩焼きや天ぷらにしても最高です。豊かな自然の恵みは旅の良き思い出になることでしょう。

白老の三大名所を訪れましたが、少しメインストリートを離れただけで目を見張る光景に出会うことができます。山、森、川、湖。白老には絶景となる要素があちこちに転がっています。ガイドブックに載っていない自分だけの光景を探してみませんか。

【取材協力】
自然休養林インフォメーションセンター、有限会社 山本虹鱒