未来づくり感響
プロジェクト 2021

MIRAIZUKURI KANKYO PROJECT 2021

SPECIAL LECTURE
CLASS1

「未来づくり感響プロジェクト」は日本有数の木製家具産地の一つである旭川地域が持っている、自然、産業、歴史、文化を若い世代に伝えるとともに、現在直面している課題を旭川地域近郊で木に携わる仕事で活躍しているエキスパート達と共に考えていこうという思いのもと2018年に始まりました。2020年には集大成として過去のトライアル授業をまとめた学習テキストを作成。今年度は学習テキストを基に「出前授業」が行われました。

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2021年度の出前授業の目標について

突哨山でのフィールドワークとスマホスタンドの製作を通して、「森と家具の繋がり」を学び、旭川の木材・家具産業への関心を高めることを狙いとした出前授業を実施。
実際に森を歩きながら、動植物と樹木の役割についてと林業・森林保全について学び、山から切り出された木材でスマホスタンドを製作しました。授業の中では材料となる木について学び、デザイン、そして木材の加工から仕上げまでの一連の作業を体験しました。

出前授業スケジュール

日時

授業の内容

講師

場所

第1回

9月24日
(金)
5、6時限

実際に森を歩いて、木の種類や特徴、森の成り立ちについて解説
スマホスタンドの材料となる木に触れて香りや感触を確認する

清水省吾先生
原弘治先生

突硝山

第2回

10月12日
(火)
5、6時限

学習テキストを用いて、木の種類や材料としての性質の違い、デザインについて解説
スマホスタンドの設計

原弘治先生
小助川泰介先生

旭川大学高等学校

第3回

10月29日
(金)
5、6時限

旭川家具メーカーの個性豊かな商品や展示品を解説を交えながら見学
近年の取り組みも解説

松村基子先生

旭川デザインセンター

第4・5回

11月11日
(木)
5、6時限
11月22日
(月)
5、6時限

スマホスタンドの製作・まとめ

原弘治先生
小助川泰介先生

旭川大学高等学校

この出前授業には、旭川大学高等学校 未来創成コースの2年生19名が参加しました。

はじまりの森

第1回目の出前授業は森からスタート。
家具に使用される木がどのような場所から生まれているのか、そして森はどのように成り立っているのかを実際に見て学びます。

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突哨山(とっしょうざん)

旭川市と比布町の境界にある標高243m、総面積225haの丘陵。白樺やミズナラ等の落葉広葉樹林で覆われ、日本国内最大級のカタクリ群落もあります。
2019年のトライアル授業に続き、山の一部の土地を所有している清水先生の森で授業が行われました。

里山部-satoyama-代表 清水省吾先生

里山部-satoyama-代表
清水省吾先生

合同会社フィールドギフト代表 原 弘治先生

合同会社フィールドギフト代表
原 弘治先生

オリエンテーション

01

「森を使って若い人たちと何か面白いことをしたい」といつも考えているという清水先生。「木を伐るだけではなく、その空間や様々な動植物などを含めて山や森には価値があると実感してほしい」と話します。

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焚き火を囲んでのオリエンテーション

焚き火を囲んでのオリエンテーション。

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最初に山の中の道について説明がありました。人が山に入るためには道が必要ですが、道が広いと風の通る量が増えて木の成長に影響が出てしまいます。できる限り森へのダメージを減らすために、道幅は2.5m程で軽トラックが通れるような最小限の道になっています。

木・森を見分ける

02

道の両端にはいたるところに木の葉が落ちています。清水先生のそばにある木と同じ種類の葉っぱを、生徒に探してもらいました。一見同じように見える葉でも木の種類は異なります。

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このフィールドワークでは3つの木材について学んでいきます。 ミズナラは木が大きく育ち、固くて丈夫、磨いた時に艶が出てきれいに仕上がるので、家具の材料として人気があります。薪やウイスキーの樽としても使われるため、さまざまな場所で需要が高まっています。

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山の中を進むと、多くの白樺が群生している場所がありました。山の入口付近とは雰囲気が違います。この場所は近隣地域の田んぼの土壌改良のために、栄養のある腐葉土を取り出す土取り場として使用されていました。そのため、たくさんの木が伐られてしまいましたが、この場所に自然と生えて来たのがこの白樺でした。

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白樺は成長が早く樹木としては寿命が短く、これまで用途としては限定的でした。幹が太くならない木からは材料がたくさん取れません。
近年、清水先生も関わる"白樺プロジェクト"ではその価値を見直し、地域資源や産業・文化として根付かせようとする取り組みを行っています。

木から木材へ

03

家具の材料にするために切られた木の切り株を見ながら、どのようにして板割りされていくのかを、原先生が解説。一本の木から取れる部分は意外と少なく、昔は使用しない部分は廃棄されていましたが、近年はバイオマス燃料やウッドチップなどに利用されています。

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今回の授業では3つの木材について解説がありました。一つ目はミズナラ、二つ目は白樺、最後の一つは色違いの白樺のように見えるエゾヤマザクラについてです。
サクラは上品な木目と独特な香りが特徴で、家具としてはもちろんのこと、燻製作りのためのスモークチップとしても人気があります。病気に弱く、まわりの木の影響できちんと成長できないものも多いため、森の中ではあまり数多く生えていません。

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森での授業はここで終わり。出前授業のメインであるスマホスタンド製作は、今回紹介された3種類の木材から生徒がそれぞれが2種類を選んで使用します。材料は全て清水先生の森からとれた木。清水先生は採算性と環境保全を高い次元で両立させる自伐型林業を行っているため、なんと年間に10本も木を切らないとのことです。今回の授業のために普段は切らない木を切ったので、大切に使ってほしいと話しました。

・様々な種類の木があり、それぞれの材質を活かして活用されていることに驚きました。

・木を切った後に使えない部分があることを初めて知って、興味深いと感じた。

・最初は用意された木材があるからスマホスタンドを作ろうと軽い気持ちでいましたが、山林を歩いて様々な木の価値を知ったので、しっかり丁寧に扱おうと思いました。

NEXT

次回は旭川大学高等学校での授業。
木の種類や材料としての性質の違いをより深く学び、スマホスタンドの設計・デザインを行います。