未来づくり感響
プロジェクト 2019

MIRAIZUKURI KANKYO PROJECT 2019

TRIAL
CLASS1

「未来づくり感響プロジェクト」は、日本有数の木製家具産地の一つである旭川地域が持っている、自然、産業、歴史、文化を若い世代に伝えるとともに、現在直面している課題を旭川地域近郊で木に携わる仕事で活躍しているエキスパート達と共に考えていこうという思いのもと、2018年にスタートし、今年で2年目を迎えました。

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2019年度のトライアル授業の目標について

今年度のトライアル授業では、「旭川デザインセンターで売るための家具」についてさまざまな角度から構想していきました。実際に設計図や製品を作ってもらうわけではなく、旭川家具の発信拠点である旭川デザインセンターでどんなコンセプトや考え方を持った家具を売るべきなのか、ということを考えました。
この課題に対して、ものづくりのプロセスにおける以下の3つの視点から取り組みました。

  1. 1.資源・材料の出所である森づくり
  2. 2.木から製品に創り上げる製造
  3. 3.製品を商品として消費者に売る販売
「旭川デザインセンター」で売るための家具

トライアル授業スケジュール

日時

授業の内容

講師

場所

第1回

10月18日
(金)
5、6時限

・オリエンテーション
・旭川デザインセンター見学
・チーム分け

構成員全員

旭川デザインセンター

第2回

10月29日
(火)
5、6時限

各チームの分野を活かして、旭川デザインセンターで売る家具を考える

【森】
動植物や樹木の役割、林業、生物多様性等について解説
木の種類・特徴や森林保全について解説

清水省吾先生
原弘治先生

旭川大学高等学校

【工場】
旭川の家具材や材料的特徴等について解説
木材の特徴や実際に家具ができるまで等について解説

小助川泰介先生
髙橋謙太郎先生

旭川大学高等学校

【販売】
旭川家具の産業、木製品の実情、取組、流通の仕組みについて解説
旭川デザインセンターに行き、展示家具を見ながらメーカーや
家具職人について解説

松村基子先生
室岩成暢先生

旭川デザインセンター

第3回

11月8日
(金)
5、6時限

各チームの分野を活かして、旭川デザインセンターで売る家具を考える

【森】
動植物や樹木の役割、林業、生物多様性等について解説 現地に実際に行き、木の種類・特徴や森林保全について解説

清水省吾先生
原弘治先生

突硝山

【工場】
旭川の家具材や材料的特徴等について解説
木材の特徴や実際に家具ができるまで等について解説

小助川泰介先生
髙橋謙太郎先生

AISUproject

【販売】
旭川家具の産業、木製品の実情、取組、流通の仕組みについて解説
メーカーや家具職人について解説

松村基子先生
室岩成暢先生

旭川大学高等学校

第4回

11月12日
(火)
5、6時限

・ディスカッション
・総評

構成員全員

旭川大学高等学校

地域の誇りを次の世代へ

このトライアル授業には、昨年と同じく旭川大学高等学校 未来創成コースの1年生20名が参加。
第1回目の授業は「旭川デザインセンター」で行われました。

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旭川デザインセンター

旭川地域の家具やクラフトのメーカー約30社が常設ブースを設け、市民向けの体験イベントやセールをはじめ、全国からバイヤーや建築・インテリア関係者が集まる「旭川デザインウィーク」が開催されるなど、年間2万数千人が来場するデザインと暮らしの発信拠点となっています。

オリエンテーション

01

旭川の家具産業は今から100年以上前の明治時代、旭川地域に良質で豊富な森林資源があったことや、上川鉄道の開通、大日本帝国陸軍第7師団の移駐などがきっかけではじまりました。

その後、世界に負けない家具を作るために職人達が海外でデザインを学び、その高い技術力とともに発展してきた歴史があります。

静岡大学人文社会科学部准教授 横田宏樹先生

静岡大学人文社会科学部准教授 横田宏樹先生

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プロジェクト座長の横田宏樹先生はオリエンテーションの中で、時代の流れとともに縮小していく旭川の家具産業や、旭川の人口・企業の減少に触れ、地域の誇りとして家具産業が残っていくためにも若い人にもっと旭川家具のことを知ってほしい、そして将来の担い手・買い手になってほしいと話しました。

講師紹介(左から、横田先生、清水先生、原先生、小助川先生、松村先生)

講師紹介(左から、横田先生、清水先生、原先生、小助川先生、松村先生)

家具産業は森で育った木を材料に、デザインし、製造過程を経て商品化され、その商品を販売することによって成り立っています。そこには各工程を支える専門技術を持った職人や家具産業を支える人々が存在します。
2019年のプロジェクトでは、一連の工程を"森(資源・材料)"、"工場(製造)"、"販売"の3つの立場から「旭川デザインセンターで販売する家具」について学び、最終的に商品化を目指しました。

旭川デザインセンター
見学

02

チーム分けの前に、旭川で実際どのような家具が作られているのか、旭川デザインセンター内を解説とともに巡りました。

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大きな螺旋階段が印象的な「旭川デザインセンター」のエントランス。

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デンマークの言葉で「温かく心地よい時間や空間」を意味する“HYGGE(ヒュッゲ)”をテーマにした企画展示。
ジュンク堂とコラボした「HYGGE LIBRARY」

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ダイニングの照明は、家具職人の原弘治先生【森チーム】が白樺とくるみを使用してデザインしたもので、テーブルの上を照らす照明としてだけではなく、光が消えている状態でも美しい木目の表情を楽しむことができます。

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青年技能者の技能レベル日本一を競う「技能五輪全国大会」で、旭川の技能者が獲得したメダル。
これまでに4名のメダリストを輩出し、金メダルを4つ獲得しています。

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「使い捨てない、長く愛す」をテーマに、シンプルなデザインで長く使える家具作りを目指す、AISUproject(アイスプロジェクト)の家具職人・小助川泰介先生【工場チーム】。
白樺の樹皮を表面に貼っている珍しいスケートボードを紹介。

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これまで家具としてあまり使われてこなかった白樺を活かす「白樺プロジェクト」。
自伐型林業(※)を営む里山部代表・清水省吾先生【森チーム】は、「一本一本の木を大事に。70年生きて寿命を迎えた木を切って、そこからさらに家具として70年使用して140年活かしたい」と語ります。
※自伐型林業とは
採算性と環境保全を高い次元で両立する持続的森林経営のこと

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旭川家具のブランド・カンディハウスのブースでは、旭川家具工業共同組合・松村基子先生【販売チーム】が、北海道産のタモ材を使用した伸長式テーブルや、発売から45年程経った現在でもロングセラーとなっているルントオムチェアーを紹介。

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家具メーカー、クリエイトファニチャー デザイナー・室岩成暢先生【販売チーム】のブースには、100年近く前に流行したいわゆる民芸家具のデザインを、若い人も使えるように現代風にアレンジした家具が並びます。

いよいよ
チーム分け

03

生徒たちは【森】、【工場】、【販売】の3つから自分が勉強したいチームを選び、2回目以降の授業内容について直接講師の先生からレクチャーを受けました。

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森(資源・材料)チーム

講師:当麻町地域おこし協力隊 原弘治先生、里山部代表 清水省吾先生
参加生徒:9名

講師の先生から

自分が生まれる前から生きている木の命をいただくということの意味を考え、切った木のストーリーをしっかり伝えて家具に付加価値をつけてほしい。
他の仕事と比べ死傷率が非常に高いので、体力的につらいと思ったら無理せずに休むこと。

森で切られた木がどうやって家具になるのか、どういった樹種が家具に向いているのかを学び、実際に山に入り林業の現場も見学します。

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工場(製造)チーム

講師:アイスプロジェクト代表 小助川泰介先生、昭和木材株式会社常務取締役 髙橋謙太郎先生
参加生徒:7名

講師の先生から

いい家具を長く大事に使って人生を豊かにしてもらうためには、外見の良さだけではなく、木材を有効活用して使いやすさや耐久性など様々なことを考えてデザインすることが大切。

実際に家具を作る際にどんな材料を選び、どのような加工が必要かを学んでいきます。

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販売チーム

講師:株式会社クリエイトファニチャー・チーフデザイナー 室岩成暢先生、旭川家具工業協同組合 松村基子先生
参加生徒:4名

講師の先生から

スペシャルな販売員になるために、普段から身の回りの家具をチェックしたり市内の家具工房を巡ったりして、自分が欲しい、お客さんが欲しい家具を考える癖をつけてもらいたい。

接客方法を身に付け、家具の値段を決めるために旭川の家具産業、木製品の実情、取組、流通の仕組みなどの知識を学びます。

NEXT

次回、森チームと工場チームは旭川大学高等学校に、販売チームは旭川デザインセンターにそれぞれ分かれ授業をおこないます。
旭川には森、木、家具のことを学ぶ環境が揃っているので、ネットの情報なども合わせて次回に向けて準備をしてほしいと横田先生は話しました。
次代を担う高校生たちと家具産業を支えるプロフェッショナルとの共創がいよいよスタートしました。