GOOD DESIGN AWARD 2024年度受賞 クリオ世田谷松原
ザ・クラシック

世田谷区松原・赤堤エリア。第一種低層住居専用地域で周辺は狭小な戸建が並び狭隘な路地も多い。纏まった緑が少なく車の交通量も多い。そこで沿道に厚みと高さのある樹木帯を豊富に設え、この地域にあるべき自然の風景を創出。
また、積極的な自転車利用を促す生活施設を備えた集合住宅により、地域交通及び環境の改善に寄与することを目指した。

デザインのポイント

  1. 01 樹木の圧倒的な緑量により世田谷区松原・赤堤地域の沿道にあるべき風景を創り、建物の存在感を消失させる。
  2. 02 スマートな動線と自転車生活の交流の場を備えた新しい形のサイクルポートを計画。交通環境の改善を図った。
  3. 03 メゾネットで切り離した約6.5畳の玄関土間空間のある住戸を計画。自転車とともに暮らせる住まいを実現。

背 景

「自然」と「安全」の
両面から地域環境に
貢献できる集合住宅

背 景

世田谷区の松原・赤堤エリアは京王線・小田急線開通後、急速に宅地化が進んだ住宅エリア。本件は、世田谷線を始め京王・小田急・京王井の頭線など4路線6駅が徒歩・自転車圏となる立地にある。視野を広げれば赤松公園、松原公園、羽根木公園が佇み、近隣では赤松ぼっくり庭園緑地なども点在。しかし身近な沿道にはまとまった緑景が少なく、世田谷区が推進する「みどり率33%実現を目指す基本計画・世田谷みどり33」には貢献できていない。また、地元住民が日常生活の抜け道として利用する路地に多くの車が侵入する交通事情に懸念がある。そこで、樹木の圧倒的な緑量により地域にあるべき風景を創り出すこと。地域交通の改善と脱炭素社会への貢献のため車から自転車生活にシフトすること。この二つを課題として捉えることにした。住環境改善のために自然の創出と交通安全性を確保し、「自然」と「安全」の両面から地域環境に貢献できる集合住宅を目指した。

経緯と
その成果

ストレスフリーで
自転車とともに
帰れる住戸とした。

経緯とその成果

沿道には高さ10m超の高木を密に植樹し、建物の存在をかき消す程の圧倒的な緑量を創出した。また緑の中にベンチを配置し地域住民にも休憩の場を提供。自然の中で光や風・香りを身近に感じる場とした。地下1階のサブエントランスへは周辺のレベル差を利用しスロープのみでアクセス可能。そのままサイクルポートに自転車を停められるよう計画。一家庭複数台平置きで自転車のメンテナンス空間にもなる。サイクルポート壁面には距離表示を備え、地域理解を促す大きなロードマップを配置。遊び心を刺激し「今日はどこに行こうか」と親子の交流を円滑にする装置としても機能する。隣接するコミュニティラウンジは、自転車生活の情報交換の場として活用できる。駐輪場が停めるだけの「置場」から「居場所」となる。サイクルポートのある地下階からエレベーターで直結する形で、自転車とともに暮らせる住戸も用意。ストレスフリーで自転車とともに帰れる住戸とした。

交流の可能性を視野に入れた秀逸な場づくりである。

審査委員の評価

東京都世田谷区、松原駅から徒歩6分程の場所、2,3階建ての住宅が建ち並ぶ通り沿いの敷地である。建物を地下1階・地上3階に抑えながら45戸の住戸を配し、沿道には高さ10m超の高木を密に植樹することで、周辺に対する圧迫感を軽減し、ベンチを設えたことで地域住民の休憩スペースを提供した優れた計画である。周辺の高低差を活かした地下空間には、自然光の入るコミュニティラウンジ、コワーキングブースをつくり、隣にサイクルポートを計画。このサイクルポートは一般的な駐輪場ではなく、自転車のメンテナンスやそこでの交流の可能性を視野に入れた秀逸な場づくりである。

  • 米丸 陽
    プロデューサー
    開発事業本部 米丸 陽
  • 古沢 研
    ディレクター
    開発事業本部建設部 古沢 研
  • 三宅 弘晃
    デザイナー
    株式会社SKM設計計画事務所 三宅 弘晃