GOOD DESIGN AWARD 2024年度受賞 クリオ鵠沼海岸グランロワ

江ノ島を望む鵠沼海岸に面し日本初の計画的別荘地だった邸宅地を受け継ぐ第一種低層住居専用地域に隣接。
「海を取り込む住まい」の形が表出し「海の風景となる外観」を形成。海を介し内と外を一つに繋ぐ集合住宅をテーマとした。エントランス空間をセキュリティフリーとし海辺特有の生活文化とアクティビティを地元住民と共有できる場とした。

デザインのポイント

  1. 01 海に溶け込む。3m角バルコニーを各戸切り離して跳ね出し海と空を映し出し浮遊するガラスの箱に見立てた。
  2. 02 海を取り込む。約6畳分の独立バルコニーは海へ大きく跳ね出し、海と暮らしを繋ぐ中間領域として半居室化。
  3. 03 地域と繋ぐ。地元住民の活動拠点となるエントランス空間を計画。樹齢が長い黒松を保存し土地の記憶も継承。

背 景

「海に溶け込む」外観と
「海を取り込む」生活空間を
表裏一体に。

背 景

海岸通りに建ち並ぶ多くの商店は毎年入れ替わりが多く、土地に根差した風景を育んで来たとは言い難い。集合住宅の在り方も多くは一様で、海岸に面する立地特性を活かしきれていないものが多く見受けられる。このような地域の現状を課題と捉え、「海に溶け込む」外観と「海を取り込む」生活空間を表裏一体として両立し得るこの地にあるべき集合住宅デザインに取り組んだ。また、人々の共有財産ともいえる海を有したこの街からパブリックスペースが次第に消えていく状況にあるなど、地元社会との繋がりが希薄になりがちという課題もある。中でも現地は、かつて別荘地として栄えた有数の邸宅地であり、多くの著名人も通った有名レストランの跡地でもある。長きにわたり地元の愛着を集めてきたこの地にこそ、地域のハブとしての役割を担う集合住宅が必要と強く感じた。そのため、土地に根差し、立地特性を活かし、より密に地域と繋がる暮らしのデザインを模索した。

経緯と
その成果

交流の場として、
新しいカルチャーが
生まれる可能性を
持たせた。

経緯とその成果

海に溶け込む外観・外構デザイン。海に面する南側の各戸に、海と空を映し出す浮遊感のあるガラス箱に見立てた3m角バルコニーを配置。各戸毎にバルコニーを切り離し大きく跳ね出すことでボリューム感を軽減しつつ特徴あるファサードを形成。また高木のパームツリーやソテツ類などを外構に配置することで、海の街の風景に溶け込ませた。 海を取り込む生活デザイン。海と住まいの中間領域となるバルコニーは全住戸幅・奥行き3m、約6畳分の面積。眺めを遮らない3方ガラス手すりとすることで、居室内からも太陽の光、海の香りと風、波の音等を全身で感じられるデザインとした。 地域と繋ぐデザイン。地元住民に愛された推定樹齢50年の黒松7本を維持保存した。そしてエントランス空間を近隣のサーファーたちも海からあがったまま休める憩いの場となるようセキュリティフリーに。地元住民との交流の場として、新しいカルチャーが生まれる可能性を持たせた。

程よいスケール感と透明感が、海辺の風景を見事に彩っている。

審査委員の評価

海辺の集合住宅では、海との関係をどのように築くかが大きなテーマだが、この作品は、それを実に単純で、しかしこれまであまり実現されてこなかったデザインで創出している。一つ一つのバルコニーが独立し、かつ通常よりもかなり大きな奥行きで張り出すことで、そこが特別な場所であることを鮮明に打ち出している。朝食を取ることも楽しいだろうし、本を読むことも快適だろう。そしてファサードとしても、程よいスケール感と透明感が、海辺の風景を見事に彩っている。

  • 米丸 陽
    プロデューサー
    開発事業本部 米丸 陽
  • 山田 義雄
    ディレクター
    開発事業本部建設部 山田 義雄
  • 三宅 弘晃
    デザイナー
    株式会社SKM設計計画事務所 三宅 弘晃