ディスカバー北海道

枝幸の毛蟹
-HAIRY CRAB OF ESASHI-

毛蟹といえば、北海道を代表する味覚の一つです。中でも水揚げ量第1位を誇る枝幸産の毛蟹は、流氷で海が閉ざされている期間に栄養を蓄え、弾力のある身、たっぷり詰まった味噌など、味の良さが抜群です。そんな良質な枝幸の毛蟹について、ご紹介していきましょう。

夜中に引き揚げするカニ漁

今では、人気のある毛蟹ですが、その歴史はそれほど古くありません。以前は枝幸でも、漁といえばニシンやタラバガニが中心で、毛蟹はあまり注目される存在ではありませんでした。
そんな毛蟹がにわかに脚光を浴びるようになったのは、第二次大戦後のことです。タラバガニ漁の不振がきっかけで、代替品としての毛蟹を扱っていました。それでも昭和30年代半ばになると毛蟹漁に着業する人が徐々に増え、漁獲量も急成長を遂げます。ただし、当時は缶詰加工の原料だったため価格はかなり安く、貨幣価値が当時と違うとはいえ、キロでおおむね数十円程度だったというから驚きです。

※当時、ラーメン1杯が40円程度

枝幸漁業協同組合毛ガニ籠漁船団長 佐藤さん

昭和38年、毛蟹漁に転機が訪れます。北海道が翌年から3年間、禁漁を命じたのです。年々漁獲量が減少していたオホーツク海の毛蟹に対し、資源保護の観点からの措置でした。昭和42年になってようやく許可が下りてからは、資源状況に照らし合わせ、漁獲許容量に沿った操業体制での漁が始まります。同時に、この頃から従来の缶詰加工からボイルが主流となり、単価も上昇。昭和50年代に入ると飛躍的な上昇を見せ、毛蟹漁は真の柱漁業へと成長したのです。

※現在の相場は6000円から8000円/kg程度

漁に使用するカニ籠

枝幸では、毛蟹籠漁という手法で漁を行っています。籠漁とは一体どんなものなのか、枝幸漁業協同組合毛ガニ籠漁船団長の佐藤英樹さんに教えていただきました。
まず、籠漁とはその名の通り、籠を使って行う漁です。カニ籠を沖合いの水深50~120メートルほどの深さに沈め、一日経ったら引き上げます。カニ籠の中には餌が仕掛けられていて、一度中に入った毛ガニはもう外に出られない仕組みになっています。このカニ籠を1組250籠、全部で6組1500籠仕掛けるというから、引き上げる作業も大変です。夜中の1時に出向して籠を引き揚げ、再度設置して朝7時頃帰港するのを両機の3月中旬から8月下旬まで徐々に深い水深帯に移動しながら漁を続けます。
ちなみに漁獲された毛蟹は船上で選別され、甲長8センチ以上の雄のみ水揚げします。8センチ以下の小さなものと雌は、資源保護のため海へかえすそうです。

赤々とした毛蟹

毛蟹の品質は、味、鮮度、実入りの良さで決まります。
しかし実際、何を確認すれば良いのか分からないものです。
今回は、「たきげん」さんで素人でも判別できる簡単なポイントを教えていただきました。
POINT1 色鮮やかなもの
枝幸の毛蟹は赤みがかっていると言われていますが、特に赤の鮮やかなものがおすすめです。
POINT2 手で持った時にずっしりと重みが感じられる
背中の盛り上がりのあるものを手に取って、重さを確かめてみましょう。
POINT3 裏返してみる
裏側の下の方、フンドシと言われる部分の毛が濃いものがいいとされています。

この3つのポイントをしっかり押さえて、いざ買い物へ。
ただし、はやり難しいと思ったら、プロに聞くのがいちばん。お店の人に素直に教えてもらうのが、買い物上手への近道かもしれません。

プロがやさしく教えてくれます

たきげん

所在地:北海道枝幸郡枝幸町本町156
電話:0163-62-1619
営業時間:9時~18時
Facebook:https://www.facebook.com/takigen.syoten/

毛蟹の刺身

毛蟹は、基本的には獲ったまま売られているわけではないことをご存じですか?
毛蟹は傷みが早いため、真水に入れて弱らせてから塩水でボイルして売られています。しかも、ボイルした状態で売られているのも、3~5月頃だけ。あとの期間は、冷凍した状態で販売されます。そのため、毛蟹を刺し身で食べられるのは、漁獲地ならではのご馳走です。枝幸を訪れた際には、ぜひ刺身を味わうことをおすすめします。

地元の人気店「食事処きたや」。この店で毛蟹の刺身が食べられるのは、3月中旬からゴールデンウィーク前後頃です。ただし年によって異なるので、確認してから訪れることをおすすめします。また、値段も年によって異なります。ちなみに2018年は、一杯4,000円だったということです。
地元でしか食べられない、新鮮で身がプリプリの毛蟹の刺し身。ぜひ味わってみてください。

食事処きたや

所在地:北海道枝幸郡枝幸町栄町469-1
電話:0163-62-1133
営業時間:不定休
定休日:11時~14時、17時~21時

【取材協力】
枝幸漁業協同組合
北海道枝幸郡枝幸町字幸町7888番地

枝幸町観光協会
所在地:北海道枝幸郡枝幸町三笠町301-7
http://www.esashi-kankou.com/