本件立地の中央区湊一帯は、東京駅から1駅と利便性の高い都心立地でありながら、低未利用地のままの虫食い状態や人口の流出が課題だった。隅田川沿いの歴史ある狭小密集地での再開発は困難で、小規模開発以外の選択肢は見当たらない。そこで、都市の密集地における狭小集合住宅のあり方を捉え直し、街の風景に動きを与えるデザインを目指した。
狭小密集地という環境で
街との関係性を重視し
プライバシーや開放感も確保。
プライバシーと開放感を
実現したバルコニーと
建物前面に施された緑が
街と繋がり潤いを与える。
集合住宅においてバルコニーは、なくてはならない要素の一つだが、ともすればそれらは凡庸な風景に加担したり、あるいは単なる室外機置き場になりがちだ。しかしここではあえて手すりの外側にルーバー状の深い縦格子を設け、バルコニーに奥行きを与えるとともに、むき出しになりがちなプライバシーを穏やかに守ることに成功している。このデザインによってバルコニーは、まるで室内の延長のような貴重な中間領域となり、生活の場としても大いに活用されそうである。バルコニーという一つの要素を深く掘り下げることがもたらした効果は絶大だ。