暮らし方が多様化する中、数十年に渡り集合住宅の間取りには大きな変化がなかった。そこで、ルーフバルコニー付住戸の母屋から出部屋を切り離し、木とガラスの箱に見立てた「離れ家」を作り、多様な暮らしに応えられるプランとした。また、外廊下空間にも着目し、雑多なすべてを整理することでホールと同化させ、一体となるデザインに仕上げた。
様々なニーズが高まる
現代の集合住宅へ
新しいベースプランの提案。
外と内をつなぐ水盤と
整えられた内廊下の意匠が
静かに調和を奏でる。
離れがある住戸が大変ユニークで、新しい住まいの提案として高く評価できる。離れにはトイレが設置されているものもあり、仕事場として、趣味の部屋としてなど、さまざまな活用が想像できる。離れを木とガラスで設えたことにより、 物理的な距離以上に心理的なモードチェンジが可能になっているように見受けられる。従来の集合住宅では得られない、豊かな暮らしを実現する好例である。また配置計画は、五角形の敷地形状に合わせて雁行配置となっており、敷地外周に生じた三角形の空地は隣接する里山の豊かな緑と連続する植栽帯として整備され、敷地中央に生じた空地は吹き抜けとして共用廊下に自然光を導いている。雁行配置によりボリュームが分節され、街並みに対して圧迫感の軽減が図られている点も合わせて評価したい。