2019-2020 東京大学・明和地所株式会社 共同研究

マンション居住者の住意識と
その経年変化等に関する調査研究

明和地所株式会社と東京大学工学系研究科建築学専攻松田研究室は、昨年度・一昨年度に引き続き、マンションに住んでいる人の暮らし方や地域とのつながりについて調べ、これからの「住まい」を考えるヒントを探りました。実際にマンションに長く住まわれている居住者へのインタビューから住民同士の交流や長期居住によって生じる住まいの課題、地域への愛着を深めていく要素などが見えてきました。

マンション
内の交流と
地域内の
交流の実態
マンション内の交流と地域内の交流の実態
同じマンション内の住民と、その付近の地域住民との日常的な交流の実態について伺い、その有無により、A~Dの4つにグループ分けを行った。
交流が発生する要因
マンション内の交流は、何らかの生活上の共通点がある場合がほとんどだが、同じフロアや隣同士という物理的な接触によって起こる交流も存在することが示された。
地域内の交流は、友人・知人や親戚との交流の他に、マンション内で構築した交流を要因として生じる場合があることがわかった。また、マンションの理事会が町内会と連携しているか否かにより、地域へのイベント参加率の大きな差がみられた。
マンション内交流と地域内交流の関係
マンション内・地域内の交流がどちらもある方(Aグループ)について、両者の発生した関係について調べると、ともに同一の要因によって成立した事例(A1)、また無関係に成立した事例(A2,A5)、また一方がもう一方の交流の成立の要因となった事例(A3,A4,A6)など多様な状況が見られた。
交流が疎遠になる理由
マンション内・地域内の交流についてそれぞれ疎遠になった理由を聞いたところ、特にマンション内については、周りとの生活環境の違いや些細なトラブルによって交流が疎遠になってしまうことがわかった。
永住への意識と
地域への愛着
永住への意識と地域への愛着の概要
調査協力者は、全員が地域への愛着について「非常にある」と回答し、また永住意識についてもほぼ全員が「転居の予定はない」もしくは「可能な限り住み続けたい」と回答した。
地域に特別な感情を持つようになったきっかけ
地域に対して特別な感情を感じるようになった要因を大別すると、交友関係の存在、単独で行う趣味などの活動、複数人で行う趣味などの活動、特別に思う場所の存在、ライフステージのある期間を過ごしたことなどが挙げられた。
長期居住と
居室利用
について
子供がいる世帯では、子供の成長の過程で訪れる「一人一部屋」期に部屋数の需要が最大値となる場合が多く、一方で子供がいない世帯では、多くの場合複数の居室を必要としていないことが明らかとなった。居住者像に併せて柔軟に住まい方を検討できる平面計画の重要性が示唆された。
居室利用変化の例1
本事例では、子供が6歳ごろまでは親と同じ居室だが、6-12歳ごろから子供だけの部屋で過ごし、13歳ごろ以降は一人ずつの居室を必要としている。
子供の成長によって、一時的に居室の要求数が増大する事例として特徴的である。
居室利用変化の例2
本事例は、家族構成の変化はないが、高齢親の身体的な事情により居室の利用が変化した事例である。マンションの通路・居室が車いすの転回に十分でなかったことが問題としてあり、それを解決するため居室利用が変化した。
住まいと
「子ども」
について
一昨年より続く一連の調査結果として、交流に対する意欲や満足度の高さは、子供の有無が大きく関わることが示唆されてきた。本調査でも、子供がいる居住者は満足度の高い交流を構築しやすく、交流をきっかけとして地域への愛着も醸成しやすいことが明らかになった。
一方で、子供がいない居住者について、必ずしも交流をきっかけとしない地域愛着醸成について知見を得た。他の居住者との交流がなくても、散歩・ジョギングなど単独で行う行動を通じて、自然環境や街並みに対する特別な感情を醸成し、地域への愛着と永住意識を抱く事例の存在も見られた。

明和地所と東京大学松田研究室は、引き続き、マンションに住んでいる人の暮らし方や地域とのつながりについて調べていくことで、ライフスタイルの変化など様々な要因がある中でも、人と地域をつなぎ、より長く住み続けられるマンションづくりのヒントを探っていきます。

調査の概要

第一回調査(アンケート調査)
  • ・調査期間:

    2017年10月1日~31日

  • ・調査対象:

    東京都・神奈川県に位置する集合住宅15棟

  • ・調査方法:

    全世帯(549世帯)に対し質問紙を配布し、169票(30.8%)の回答を得た。

第二回調査(アンケート調査)
  • ・調査期間:

    2018年10月12日~11月15日

  • ・調査対象:

    東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の集合住宅19棟

  • ・調査方法:

    無作為に選んだ各棟40世帯(計760世帯)に質問紙を配布し、236票(31.1%)の回答を得た。

第三回調査(インタビュー調査)
  • ・調査期間:

    2019年11月11日~12月11日

  • ・調査対象:

    第一回・第二回の調査対象のうち同一のマンションに長期間住まわれている方15名(最短13年・最長24年・平均17.9年)

  • ・調査方法:

    「マンション内および地域の住民との交流」「地域への愛着」「永住に対する意識」入居以来の生活の変化、特に家族構成・居室の利用実態」について、インタビュー調査を実施。

【本件に関するお問い合わせ窓口】 明和地所株式会社 経営企画部電話:03-5489-2620