ディスカバー北海道

馬具
-SADDLE-

国内唯一の馬具メーカー

日本には馬具メーカーは、たった1社しかありません。それが、砂川にある革製品の総合メーカーでもある『ソメスサドル』です。国内シェア70%、皇室にも馬具を献上しています。

ソメスサドルは、砂川市の隣町で、かつて炭鉱で栄えた歌志内市(うたしないし)で創業しました。1960年代、国のエネルギー政策の変更によって炭鉱が閉山に追い込まれていくなか、当時、原皮輸入実績NO.1であった商社主導の下で炭鉱離職者の再雇用の受け皿として、前身のオリエントレザーが創業しました。北海道内に点在していた農耕馬の馬具職人を募り、馬具の輸出を目的にスタートしました。出来上がった馬具は、主にアメリカに輸出していたそうです。
その後、オイルショックや円高などの影響を受けたことをきっかけに、馬具づくりで培った技術を生かして、バッグや小物などの革製品の開発・製造に注力していくことになるのです。

1985年にはフランス語の「sommet」(頂点)と英語の「saddle」(鞍)からネーミングしたソメスサドルに社名を変更しました。現在では、企画・製造・販売・リペアまで手掛け、革製品の総合メーカーとして、その品質と信頼性に高い評価を得ています。

騎手の命を預かる馬具づくり

馬具は写真などで見たことはあっても、実際に触れたことがある人は少ないかもしれません、馬具づくりにはどのような技術が必要とされ、どのような革が使われるのでしょうか。
『ソメスサドル』の染谷昇代表取締役にお話を伺いました。

「馬具は、騎手の命を預かる重要な道具です。主材料の革は、固くて丈夫な革が求められます。革の種類は主に成牛を使い、タンニンでなめされた厚さ4 ミリ以上の革を厳選して使用しています。国内、イギリス、ドイツ、フランスなどからグレードの高い革を輸入し、革繊維の方向性まで熟知した熟練者が裁断しております。また縫製においても、手縫いなどの技法を生かした安全性第一の道具づくりに徹しています。」

名ジョッキーも信頼

ソメスサドルの馬具は、武 豊騎手をはじめとして、日本の競馬界はもちろん海外の一流騎手も愛用しています。
「武騎手には、デビューした時から愛用していただいています。鞍に必要な機能はもちろんですが、当社のいつも変わらない品質の馬具を提供していることが、安心感を持って使っていただいている理由と受け止めています。過去に武騎手が騎乗されたレースでは、オグリキャップの有馬記念やディープインパクトのG1レースが思い出されます。また、最近ではクリストフ・ルメール騎手がサトノダイヤモンドに騎乗して凱旋門賞に出走された時も当社の鞍を使っていただきました。」

落馬防止用の鞍も開発

一般の人は、鞍にまたがる機会は無いかと思います。乗馬体験で実際に鞍に乗ってみると、かなり高さがあるので、その恐怖感から重心の位置が定まらず落馬してしまうことがあるそうです。
ソメスサドルでは、特許を取得している落馬防止用の鞍の開発もしています。
「落馬防止用鞍は膝を前後からブロックし、固定することで、安定した重心の位置を身体で覚えることができ、補助なしでも騎乗できるようになります。一年かけて開発しましたが、納めた乗馬クラブさんから落馬率がほぼゼロになったと喜ばれました。」

革製品の総合メーカーへ

「革の吟味や縫製技術は当社のものづくりの原点である馬具づくりから学ぶことが数多くあります。同じ工場内で馬具を制作している環境が、バッグづくりに活かされることに繋がっていると思います。また、エルメスが現在も馬具づくりをされていますが、創業の精神を継承するために続けられていると解釈しております。
製造小売りをする目的で、22年前に砂川ファクトリーを開設しました。現在、5店舗の直営店を中心に、2017年4月には「GINZA SIX」に出店しました。本場ヨーロッパでソメスサドルの革製品が認められるか、チャンスがあれば挑戦したい思いがあり、銀座は海外進出する登竜門と位置づけております。」
世界的ブランドになるのも遠い日ではないかもしれません。


【協力・資料提供】ソメスサドル株式会社